表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

命の歯車

作者: 腹黒アイス

 

  僕には忘れられないお婆ちゃんの言葉がある。それは小さい頃僕が何度も言い聞かされた言葉だ。お婆ちゃんが死んでしまった今でもよく覚えている。「いいかい?あんたは目が良いから大きくなったら人のどこかに歯車が見える日が来るだろう。でもそれを人には言っちゃいけないよ。あともう一つ、大事な人の歯車が止まりそうだったら助けてあげな」

  そう言っていたお婆ちゃんが死んでから三年が経って来月で二十歳になるがそんなもの見える兆しもない。「いったいどういう事だったんだろあの言葉は」

 。。。。。

  「ひろき誕生日おめでとう」「ありがとうサキでも誕生日明日だぞ」「いーのだって明日土曜日じゃない直接言いたかったもん」「家に来れば良いじゃん」「えっでも家族で誕生日会とかあるんじゃない?それを邪魔するのは駄目だよ」「あぁ家族なんて俺の誕生日を覚えてすらないだろうな。あ、そうだどっか遊びに行くか?」「え、行きたい」「決まりー明日時計台の下に集合な」「うん、分かったそれじゃまた明日ね」「おう」あいつの名前はサキ。二年前から付き合っている彼女だ。お婆ちゃんが言う事が本当だったなら大事な人にはサキが当てはまるだろう。

 。。。。。

「やべえ寝過ごしたか」サキとの待ち合わせは十時にしていた。時計の針は八時を刻んでいた。「あ、まだ八時か良かった早めに出るか」「おはよーまぁ誰も居ないか」誰もいないリビングに向けて挨拶をしてやはりと落胆する。朝ごはんを食べ誰もいない家に行ってきますと告げ家を出た。

  しかしそこでヒロキは異変に気がついた。人の頭の上になにか浮いている。よく目を凝らしてみると二つの歯車がカラカラと回り続けているではないか。「アレって婆ちゃんが言ってた俺が大きくなったら見える歯車か。ほんとに見えちまった」「あ、やべゆっくりしすぎて電車乗り遅れる」そう言ってヒロキは駅へと走った。

 。。。

「フゥ危なかったー」「よぉヒロキじゃねぇか」(げっ!こいつの横に座っちまったのか)「お前どこ行くんだ?俺は大事な用事があるからなお前はどうせ遊びにとかだろ」「用事って?」「お前なんかに教えてやるわけないだろう」「あーそうですか」(やっぱりめんどくせぇー)「おいヒロキ俺今から寝るから田山駅来たら起こせよな」そう言って寝てしまった。「まじで寝やがった...」「そういやこいつにも歯車あるな。これ触れるのかな?」そう言ってヒロキは横で寝ている慶次の歯車を恐る恐る指でつついてみた。「あ、触れる」

 ツンツンツンツン「ハクション」指でつついているとくしゃみが出てしまった。「ガコン」歯車が鈍い音を立てた。どうやらヒロキ以外には聞こえてない様だ。「あっ、やべ」くしゃみの衝撃で思いっきり指で歯車を押し込んでしまい。歯車がズレてしまった。ズレた歯車はカクカク動くようになり今にも止まりそうだ。

「終点田山ー田山ー」「おい、慶次起きろー着いたぞー」「ん?あぁよくやった」慶次の後ろを歩き改札に向かっていると階段で慶次の歯車が完全に止まってしまった。すると慶次が足を滑らせ階段から転げ落ちた。慶次は即死だった。階段から転げ落ちた際頭を強打してしまったらしい。「歯車が止まった瞬間に慶次が死んだ。婆ちゃんが言っていた大事な人の歯車が止まりそうだったら助けてあげろというのはこういう事だったのか」僕は逃げるように慶次が死んだ場所を離れた。

 。。。。。

  「サキお待たせー早めに家出たんだけど色々あってさ遅れちゃった」「遅いよー色々って?」「ちょっとそれは言えないかなー」「えー隠し事しないでよ」「ごめんこれだけは言えないサキを巻き込みたくないから」「そこまで言うなら聞かないけどさ」「ありがとうじゃあ行こっか」そしてその日のデートは何事もなく終わった。「じゃあまたねー」「おうまたな」

 。。。。。。

  「今日やることないなー」朝からこんな感じでダラダラと過ごしてもう昼である。昨日起こったことを思い出していた。慶次の事はニュースで事故として報道されていた。「慶次が死んだ原因はやはり俺が歯車をずらしてしまった事だろうな」「死ぬ前はカクカクするのかな?」ふと何かを思いついたのか鏡の前に立った。「やっぱりか」何かを確認したヒロキはベットに座り今日何しようか考えた。「そういや病気の人はどうなるんだろ。そうだ、病院行ってみるか」

 。。。。

  「確かここが一番大きな病院だよなー」

 そう言って病院に入っていった。

 入って驚いた。みんなアタマの歯車の動きがどこかぎこちない。「病気だとぎこちなくなるのか」「重症なところ覗いてみるか」そう言ってヒロキは病院の奥へと入っていった。「うわぁすげぇカクカクしてる」「君何してるんだい?家族の方かい?」「あっ、いえお邪魔しました」病院の人に声をかけられ急いでヒロキは病院を出た。「そういや死に際の人は歯車錆びてた様に見えてたな。錆びると死が近いのかなるほど、あっ、やべこんな時間か帰らなきゃ」

 。。。。

「ヒロキおはよぉー土曜日ぶりー」「分かった分かったから席座れ」そう言って走り寄ってくるサキをいつもの事のようにあしらい席についた。

 キーンコーンカーンコーン

 チャイムと同時に先生が暗い顔をして入ってきた。「皆さんに大事なおしらせがあります。土曜日慶次君が階段から転落して亡くなりました。皆さんショックでしょうが後日先生がお墓参りに行きます。一緒に行きたいという人は後で先生に声をかけて下さい。それでは朝の会を始めます」「ヒロキー土曜日ってデートの日だよね」「うん、そうだけどどうした?」「色々あったって言ってたからこの事なのかと思って」「そんな訳ないだろ」「やっぱりそうだよねごめんねー」「気にすんなよ」

  誰かの話だとお墓参りについて行くと名乗りあげたやつはいなかったらしい。

 。。。。

 アレから三週間が過ぎた頃、異変は突然やってきた。その日はデートの日だった。「ヒロキお待たせー」「おうすごく待ったよ」「何よそれーそこは今来たよ。でしょ分かってないなー」「うるせーなーほら行くぞ」「はいはい」そう冗談を交わし歩きだそうとした、その時ふと、サキの頭を見ると歯車が少し錆びてカクカクしていた。「なっ.....何でだ」「サキ体調悪くないか?なんか変なとこは?」「ん?特にないけどどうしたの?」(おかしいこの状態に歯車がなってるってことは病気のはず、しかもカクカクしてるってことはかなりやばい状態のはず)「サキ!体調悪そうだ。病院行くぞ。詳しく検査してもらうぞ」「えっ! ちょっとなんで元気だよ?」「頼む良いから俺を信じて精密検査を受けてみてくれないか?」そう言ってヒロキはサキの顔をじっと見つめた。「....」「.....」「分かったヒロキは意味の無いこと言わないもんね」「ありがとう」

 。。。。

  「サキさん申し上げにくいのですが...末期の癌です。しかも自覚症状が全くないという珍しいタイプです。今日精密検査を受けたのは運がいいとしか言えません。まだ治療が可能なギリギリのラインです。本日中に入院をオススメします」「サキは治るんですか?」「それはなんとも言えません。何せかなり進行してしまっていますので。ただゼロではありません。我々も最大限治せるように励みますので。詳しい話は親御さんを呼んでからの方が良いでしょう」

 。。。。

「お母さん、お父さん、中でお医者さんが待ってる」「あぁ今行く」「ヒロキ君ありがとうね。ごめんなさい今日は帰っててくれる? ホントにごめんなさいね」

 。。。。

 後日、サキの状態では一ヶ月持たないらしいとサキのお母さんから聞かされた。

「おばあちゃん、今なのかな?大事な人を守る時は」そう言ってサキの病室に入っていった。

 。。。

 数日後、サキは奇跡の回復を見せた。両親は驚いた。しかし一番驚いたのは医者だった。あの状態から回復するのはありえないほどだったらしい。「そういやヒロキの奴ここ何日かお見舞いも来やしない何してるのかしら。そうだ、電話してやれ」

 プルルルルプルルルルプルルルルピッただ今この電話番号は使われておりません。もう一度お電話番号をお確認のうえかけ直してください。「え?何で?間違ってないのに。あ、そうだラオンなら、アレ? ヒロキがいない何で? あ、そうだヒロキのお母さんに聞こう」

 プルルルル「もしもしヒロキのお母さんですか?」「サキちゃん? もう病気は大丈夫なの?」「はい、その事をヒロキに伝えたかったんですけど、ヒロキに繋がらなくて」「....実はヒロキ数日前事故で....」「そんなヒロキなんでー」「サキちゃんの病室に夜行ったあと帰りに事故にあったらしいのよ」「そんな...」

 何故か分からないけど私はヒロキに生かされたんだと思った。だからこの命を大事にする。ヒロキのためにも。

 完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ