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You are the Dead  作者: KoK18
You are the Dead
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未来への選択肢

第二話


「お前は死んだ、、、。」

「誰だっ!」

どこからか声が聞こえてくる。

「お前に二つの選択肢を与える。一つは、あの悲劇をあの少女一人の死に留め、平凡な生活に戻る。もう一つは、我の力を使い、自分の寿命一年分と引き換えに、一分間時を止め誰かの不幸な運命を変えて生きる。どっちにするか。自分未来は自分で決めろ。」

「、、、。おいっ! 待てよっ!」

暗闇の中に消えていくぼんやりとした後ろ姿。そしてその先から差し込む光。

「うわっ。眩しい、、、。」

太陽の光がカーテンの隙間から照り付ける。その眩しさで俺は目を覚ました。

「夢、、、。」

カチ、カチ、と針を動かすアナログの目覚まし時計を見つめる。そして俺は思い出した。

「俺は、、、死んだはずなのに、、、。」

下から聞こえてくる包丁の音。窓から入ってくる朝日。何もかもが記憶と同じだった。

「、、、遅刻、、、。そうだ。やばいっ!」

つい叫んでしまって、記憶と同じように階下から妹が返事をしてくる。

布団を跳ね退けて急いで準備に取り掛かる。服を着て、荷物をかばんに詰めて、弁当も詰め込んで、朝食をかきこんで家を出る。

「行ってきまーす。」

「行ってらっしゃーい。」

俺は迷わず駅へと向かった。また同じ景色を見ながら、、、。


「今日さぁ。私、金忘れちゃったんだよねぇー。」

向かいのホームから聞こえてくる不良女子の声。

「一緒だ、、、。全部、、、。」

鮮明に甦るこの後起きる悲劇。二つの選択肢って、、、。ふと夢のことが思い出される。悲劇を避けるチャンスがもしあるのならば、、、。

「まもなく。一番線に四二島行き電車が参ります。白線の内側でお待ちください。」

アナウンスが流れ、悲劇は起こった。


「きゃぁーっ!」

騒然とする構内。右手側から刻一刻と迫ってくる電車。俺は選択を迫られる。平凡な人生か、他人の不幸な運命を変える人生か。俺も頭に考える余地はなかった。

「一人なの、、、。見て見ぬ振りなんか、、、。出来るわけねぇだろぉーがっ!」

足を線路に踏み出そうとした刹那。耳元で囁き声が聞こえた。そう、あの夢の中で聞いたあの声が、、、。

「よく決めた。しかと承った。左手の甲の星型。なぞってみろ。」

「えっ、、、。」

とっさに左手の甲に視線を落とす。すると、さっきまではなかった星型の青白く光る模様が浮かび上がっているではないか。

「よし、、、。止まれーっ!」

指でなぞる。刹那。全てが止まった。人の動き、電車の動き。あらゆるものの動きが停止した。視界の左上には、一秒ごとに減っていく数字が見える。

「これが、、、。」

驚きながらも俺は、線路を渡り少女を抱え上げ、ホームに上げて自分は元の場所へ戻る。

「カウント、ゼロ。」

機械音のような音声と共に、また全てが動き出す。

「これで、よかったんだよな、、、。」

向かいのホームでは、助かった少女の周りに人だかりができていた。周りからは、瞬間移動のように見えているのだろう。ふと左手の甲を見ると、あの模様はもう跡形も無く消えていた。しかし、耳元で囁き声がまた聞こえてきた。

「ようこそ。歓迎いたします。我らがアランドよ、、、。紹介が遅れました。私の名は、第六対神妖精フェアリー。あなたの、、、秘書のようなものです。早速、今の状況を簡単にご説明いたしましょう。遡ること一世紀程前、我らが最高神ウ゛ァーウ゛ェル様は、地球を統治する重荷を、下位神七人に等しく分担なさいました。しかし、うまくいっていたのもつかの間、半世紀程経って、下位神同士が互いに干渉をしはじめました。自分が全てを手に入れる、と争いが始まったのです。地球は滅びる寸前まで来ています。ある下位神は、人の命に手を出しました。運命を司る力を使って、自分の遊び道具のように人の命を操ることに、喜びを感じているのです。それを見かねたウ゛ァーウ゛ェル様が、我々妖精族に力を与え、対抗するよう組織したのが、あなたの属するアランド部隊なのです。ちなみにあなたは、第六アランドです。」

変な声が聞こえている間に、俺はもう遊園地に到着していた。

「長い長い長い。長ぇーよおいっ! で、肝心の俺はどうすればいいんだ?」

「えーと。非常な死にかたをする方を助けてください。それだけです。」

「それだけです。ってなぁ、、、。それにお前、姿現せよっ!」

声のする方に振り向く。遊園地を前にして、ガヤガヤする真ん中で、この後俺は叫ぶことになる。視界いっぱいに映る茶色の毛。肩に乗ったそれは、礼儀正しく一礼して口を開いた。

「初めまして。フェアリーです。」

それはリスだった。

「うわぁーっ!」

手で肩を叩き、リスを払い落とす。俺は驚きで腰を抜かしてしまった。初めて見るリスという動物が、肩に乗って、一礼して、しかも自己紹介までしてくるのだ。腰を抜かすのも無理ないだろう。

「言い忘れておりました。我々妖精は、何かの動物に化け動きます。森でかわいいものを見つけたので、、、。」

照れたような顔で、リスのフェアリーは頭を掻いた。みんなの視線が集中する中、リスとこのまま会話するのもはばかられ、学校一のバカ頭をフル回転させて、この空気から抜け出す方法を考える。そして立ち上がって口を開いた。

「いやぁ。お騒がせしました。これ、今話題のしゃべるリス人形なんですよー。」

顔から冷や汗が流れるのを感じながら、俺は急いでリュックの中にリスを詰め込む。状況を察したのかフェアリーも静かになった。しかし、まわりか視線は解れない。ざわざわする中から時々聞こえる声。

「ねぇ。そんなリス人形あったっけ?」

「あのリス、超リアルじゃねぇ?」

「あいつ、人形持ち歩くとかキモすぎぃ。」

冷たい視線が突き刺さる。もう立っていられない。と精神が悲鳴を上げそうになった瞬間、先生から助けの手が差しのべられた。

「人形好きか。いい趣味じゃないか。ゲームじゃないなら別に校則違反でもないしな。まぁ、本物でもいっこうに構わないが、、、。よし、みんな。ゲートが開くぞ! 並んで入っていけぇっ!」

はぁ。と安堵の息をつく。先生も意外とやってくれるな、とある意味感心して先生に目をやる。生徒を引いて歩き始めていた先生だが、視線を感じたのか振り返って叫んできた。

「遅れるんじゃぁないぞぉ、奥死路!」

「は、はいっ!」

立ち上がってリュックを背負い直し、俺は列の最後尾に並ぶ。

なにもかもが変わった一日。これからどんな戦いが待っているのかなど、知るよしもなかった、、、。


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