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You are the Dead  作者: KoK18
You are the Dead
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始まりの瞬間

第一話 


俺は死んでいる。

そう、死んだのだ。

なのに、、、。


窓から入ってくる朝日で目覚めた俺は、はっと目覚まし時計を手にする。

大きなベルの付いた古めかしい時計を握って俺は目を丸くした。

「アラーム着け忘れたーっ!」

「あぁーあ。どんまーい、おにいちゃーんっ。」

下の階から大声が返ってくる。妹である。遠足の日に朝寝坊するような兄とは相対して、今日も朝早くから二人分の朝食を作り終えた当たりだろうか。

高校三年生の秋の遠足。有名な日本三大遊園地へ行くのだが、、、。

見ての通り俺は、寝坊による遅刻で置いて行かれそうな雰囲気である。

「朝メシはー?」

「できてるよぉー!」

住宅密集地で、近所迷惑にもなりかねない大声の応酬を終え、俺は急いで準備を始める。掛けてある制服を着て、いつもとは違うリュックサックにカメラやしおりを詰め込む。

「よし。」

バタンと大きな音を立てて扉を荒々しく閉ざし、階段を駆け降りリビングに入る。弁当をリュックに入れたら、

「いただきます!」

パンにジャムをつけ、皿に盛られた目玉焼きと一緒に頬張る。

「やっぱうまいなお前。」

「でしょー?」

セーラー服にエプロンという姿でキッチンに立つ妹に賛辞を送って、視界の隅に映った壁掛け時計を凝視する。

「遅刻だぁーっ!」

自分が危機に頻しているということに改めて気づいた俺は、ごちそうさまと口早に言い放ち玄関で急いで靴を履く。

「行ってきまーす。」

「行ってらっしゃーい。」

家を後にしながら、俺は考える。

家を出た時見た時計が八時十三分を指していて、学校に集合が十五分。間に合わない、、、。俺の直感が足を駅へと向かわせた。しおりには三十分に最寄り駅の柳ヶ丘駅で点呼と書かれている。

「駅に先回りだな。」

一人でそう呟いて、俺は駅へと足を早めた。

道の反対側を何人かの生徒が走っていく。茶色のポニーテールの子、綺麗な瑠璃色の髪の子。どちらも焦った顔で学校へと向かっていた。が、そんなこと俺には関係ない。俺は先回りするのだから、、、。


駅に着いて五分が経った頃、後ろから声を掛けられた。

「奥死路君? なんで君はここにいるのかな?」

「あっ。」

後ろに突如現れたのは、担任の反崎先生だ。

いつも踵の高いヒールを履き、長身のお姉様のような雰囲気を醸し出すその先生は、俺が遅刻すると毎回同じやり取りをする。今日だって、、、。

「奥死路君。今日は欠席ということですね。ご家族と学校サボって遊園地ですか?」

「いえ。学校の遠足です。」

「欠席の方なので、自主参加ということで自腹ですね?」

「えーっと。すみませんっ! 遅刻しました! 許してください。」

こうして毎回俺が折れるのだが、、、。

「土下座したら許してあげてもいいが、、、。」

「先生、それよろしければ教育委員会の方へ、、、。」

「、、、。そ、それじゃぁ仕方ないな。今日のところはひとまず許してやる。」

教育委員会を出すと急に弱くなり、今日のところはと言いながら毎回同じことを繰り返す。しばしば病気かと思われるほどのそんな先生なのだ。

「列の最後尾で待っていろ。」

「はーい。」

先生に言われた通り最後尾に並ぶ。と、その時、駅の反対側のホームから不良女子の大声が聞こえてきた。

「今日さぁ。私金忘れちゃったんだよねぇ。貸してくんない? まぁ返せないけど。あんたは行かなくたっていいよねぇー。私達が楽しめれば満足だもんねぇー。」

振り向いて俺ははっとした。

「茶色のポニーテール、、、。」

三人の不良女子に脅され、線路側のホームの縁に押されていく少女。それは紛れもなくここに来るまでに見かけたあの女の子だった。

どこにでもあるイジメ。そう言ってしまえば一つのくくりとなってしまうが、軽いもの、重いもの様々ある。この学校では、その重い方が多々起きている。下手をすれば命の危険さえも感じるようなことも、、、起きてかけているのである。先生さえも手を付けられないのだ。

「まもなく、一番線に四二島方面行き電車が参ります。白線の内側でお待ちください。」

アナウンスが流れた刹那。悲劇は起きた。

「あっ、、、。」

俺は息を呑んだ。脅されていたあの女子が、不良女子に肩を押され、線路に落ちたのだ。叫び声やらなんやらで騒然とする駅。線路に落ちた少女は気絶してしまっている。、、、なのに、誰も動こうとしなかった。怖いのか、動けないのか。人それぞれ理由はあるだろうが、俺にはその理由のすべてが理解できなかった。

「なんで動かねぇーんだよっ!」

考える? そんな芸当、学校ビリを争う俺にはできっこない。ただ目の前で、人の命が危険にさらされている。俺が足を動かす理由は、それだけで十分だった。

「間に合えよ、、、。」

視界の右端にかすかに電車が見える。線路を横切り、どこから出てきたのかもわからない火事場の馬鹿力で、俺は女の子を抱え上げホームに上げる。そして自分もとホームに手をついて力を入れる。が、すぐに眩しいライトと耳をつんざくような警笛が俺を襲ってきた。

「きゃぁーっ!」

誰かの叫び声を最後に、俺は宙を舞った。

俺は五十メートルほど飛ばされて死体になった。

全身骨折、内臓破裂、即死だったらしい。

『一人の少年が、自分の命と引き換えに少女を救った』

そんな新聞記事が出たときには、もう葬式が始まっていた。


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