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相変わらず暴走する車たちを避けるように道の端を走り交番へ着いた。
ところが交番はコンビニのようにひっそりとしている。入口にはパトロール中の立札があった。
考えてみれば当然だよな。街中これだけ慌ただしいんだからそりゃ呼び出されるよ。
「ここで待ってればお巡りさんが来るだろうからさ」
まだ泣きじゃくる女の子を交番の中へ誘い入れて近くにあった椅子に座らせた。
しかしこうやって改めてその姿を見てみると女の子の格好は相当異様だった。
おそらく寝間着と思われる長袖のトレーナーにハーフパンツ、そして裸足。
「傷、大丈夫? 簡単にでも手当しといた方がいいかも」
「わ、私は、大丈夫、です」
女の子は途切れ途切れの言葉で答えた。
「でも、その血」
「これは、これは」
女の子はまた大粒の涙をぽろぽろこぼして「お父さんとお母さんのです!」と叫んでまた泣き伏した。
「犯人は見たのか?」
女の子は泣きながら首を縦に振る。
「そっか」
なんだか悪いことを訊いたな。悪いことを思い出させちまった。ここはとりあえずお茶でも飲ませて落ち着かせよう。
客ってことでここにあるお茶ぐらい勝手に飲んでもいいよな。
ん?
このポット電源が落ちてる。ということは。
ふたを開けてみると中の水はただの水だ。お茶は飲めそうにない。