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それとほぼ同時にそこら中から一斉に電子音が鳴り響いた。
「ケータイ?」
宇崎さんがパンツのポケットをまさぐり取り出すと「嫁からだ!」と声を上げた。
その言葉を理解するのには少しの時間がかかった。
でも、理解するやいなや俺もスマホを取り出す。
ひび割れた画面に表示されているアンテナは三本!
そして突然表示される母さんの名前。
「もしもし、修二? あんたどこにいるの? 無事なの? 何回も電話したのになんででなかったの? ニュースを見て心配で心配で寿命が縮んだわよ」
母さんは焦ったような、怒ったような、安堵したような、もの凄い勢いで息をつぐ間もなくしゃべり続けた。
俺は曖昧な返事をしながら状況を整理する。
母さんが言うには朝起きるとどのチャンネルでも緊急報道番組が放送されていて、俺たちの街が無くなっていたらしい。
ヘリコプターから撮られた直径が数十キロに及ぶ大きな穴が開いていた映像が繰り返し流れていたのだそうだ。
そして今、突然に変わり果てた様子の街とキラキラと光を発する奇妙な動く物体が映り、テレビの向こうは相当に慌ただしいらしい。
憶測でしかないけど俺たちは田中さんたちの言っていたようにあっちの世界へ行って、そしてこっちの世界に戻ってきたんじゃないだろうか。
あのキラキラと光る不気味な化け物も一緒に。
いったいなんでこんな事態になったのかは皆目見当がつかないけど、そう思うより他に理解できそうにない。
母さんの通話を切って崩壊した街を見下ろす。
横で宇崎さんは警察関係者と思われる人に電話していて、いまだ街を徘徊していると思われる化け物の対処法などを伝えていた。
隣を見ると三上は空を眺めていた。
俺もつられて見上げる。
薄いピンク色の化け物を連れ去った紫色の雲は一片も無かった。
その先が宇宙だとは信じられない爽やかな青がどこまでも広がっている。
目に強く染みて涙が出た。
たくさんの命が奪われて、残された物も命だけ。
「私は強く生きる」
三上の呟いた言葉に心臓がドクドクと音を立てた。
<ショゴスの影 完>




