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そこには何もなかった。
道も山も人工物も何もない。見渡す限りはるか地平線まで岩だけの景色。
火星探査機から送られてきたかのような素気ない、ただただ広い景色しかなかった。
そして俺たちは切り立った高い高い崖の上。
下を覗くと知らずに進んだのか煙を上げる車らしき物が何十台か豆粒ほどの大きさだけど確認できた。
「これってマジで現実?」
一切の希望を許さない禍々しい空気の漂う景色に息を呑んだ。
「現れたのは魔物じゃなかったんだな」
田中さんがへたり込み「僕たちが街ごとこっちの世界へ来ちゃったんだ」と力無く続けた。
こっちの世界?
それはどんな世界だ?
「……戻ろう。この景色は気が滅入る」
すっかり憔悴しきった様子で宇崎さんは引き返した。
俺と三上も無言で引き返した。
田中さんだけはそこから動かなかった。
群衆からの何とかしろ! との理不尽な責任のなすりつけに宇崎さんは心が折れたらしく制服シャツを脱ぎ捨て拳銃を腰に携帯するだけの姿になった。
俺はそれで良いと思う。この事態は誰の責任でもない。
いうなれば天災だ。
あえて誰かに責任を押し付けるなら神様。
「小野寺君のご両親はどこに住んでいるんだっけ?」
トンネルの脇でやることも行くところもなく座っていると宇崎さんが訊いてきた。




