訳ありな新しい日常
「死ぬ…」
黒川との勝負に負けて二週間が経つ。休んでやろうと思った日に限って黒川からメールが来る。あいつ本当にエスパーだろ。
「勇大丈夫か?」
僕の前の席に座っている金城誠が話しかけてくる。
「これを大丈夫に見えるならお前の目は節穴だ」
人の心配をできる優しいやつに皮肉を混ぜて言葉を返す。
二週間が経ってこれぐらいは話せるようになったのは黒川との勝負に負けた次の日。
「勇が試験の日以外で来るなんて珍しいな」
「ハ、ハロー アイムジャパニーズ オーケー」
YOUって誰だよ。僕が引きこもってるうちにどんだけ欧米化してんだよ。フレンドリー過ぎんだろ。つい英語で答えちゃったよ。
「オーケー。それでどうしたんだ勇が登校するなんて」
「二匹の鬼から脅されてる」
隣の人が睨みつけてきた気がしたけど、きっと気のせい。そう信じたい。
「そうか。それじゃあこれからは、ちゃんと登校するんだな」
「そうなるな。そうなりたくないけど」
自分の意思を強く確認する。うん。大丈夫諦めてない。
「それじゃあ、仲良くやろう。俺の事は、誠でいいから」
右手が差し出される。なにこれアメリカ?ニューヨーク?
みたいなことがあって今では多少話すようにはなっている。乙女ゲームでいうなら好感度が、0.5上がったぐらいだ。
「そういえば、そろそろ南柏祭だな。勇は、なんか係とかや…」
「休む」
食い気味に答えられたため、誠は言葉に詰まった。
「揺らぎないな勇わ。そろそろHR始まるし、また後で話そうぜ」
『揺らぎない信念を持つものは、引きこもりと化す』と、どこかの偉い人も言ってただろう。言ってないなら今ここで白沢語録に記しておこう。
ちなみに、『南柏祭』とはいわゆる文化祭、学園祭と言ったような、クラスごとにお店を出したり劇をやったりなどのかなりフリーダムな行事である。
川崎先生のピンヒールの音が、教室に近づいてきて扉を開け教卓の前へと行く。
HRが始まりいろいろと話始める。そして話題はやはり、南柏祭へと移っていく。
「南柏祭の実行委員を決めたいんだが、やりたい人はいるか?」
シーン…
へー高校でも静かになって誰かがやるのを待ってるんだ。高校通学してなかったから知らなかった。
「いないなら他薦にするぞ」
手が上がった。おっやるのか?と思ったら上げたのは、目の前の誠だった。
「金城お前がやってくれるのか?」
「いえ。俺は白沢君を推薦します」
ほへ?
「待ってください!僕は当日休むんですよ!?それに加えて実行委員なんてやったら明日から体調崩しますよ!」
「何堂々とサボリ宣言してるんだ。まぁ異論がなければ男子は白沢にするがいいか?」
ため息混じりに、川崎先生が確認をとる。
まぁちょっと前まで不登校だった僕を周りが認める訳が無い。それも、一大イベントの南柏祭だ。そんな簡単に決まるわけが無い。
パチパチパチパチパチ
拍手が起きる。
なにその議会みたいな感じ。なんでみんなそんなに嬉しそうにしてるんだよ…
机に突っ伏せる。
もう不登校になってやる。
もともとでした。
「それなら女子は、私がやります」
クラス中の視線が僕の隣に注がれる。
つまり、黒川嶺華に注がれた。
「そうか。白沢だと不安だったが黒川もやってるれるなら安心だな」
なんか馬鹿にされた気がするけど、それ以上に意味不明の行動をとった黒川に驚いていてそんな余裕はない。
「じゃあ決まったからHRは、終わりだ。二人は後で私のところに来るように」
なんてこった。無難に過ごそうとしたのに。
「条件は、しっかり同じにしないとね」
黒川が僕に微笑みかける。美しさは感じるが喜びが全く感じないのは、なぜだろうか。
A.思考回路ストップしている。または、相手が黒川嶺華だから。
はろーまいねーむいずくー
遅れてすいません!でも、話はどんどん進んでいくよ!!
これからも読んでくれると嬉しいです。感想とかご指摘をもらえるとさらに嬉しいです!!!!