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ケモノ学園の脇役事情  作者: 黒崎 架那
Play1 fate can't escaped
2/8

01 「始まりの入学式」

初めまして。黒崎です。

色々書いては消すの繰り返しですが、暖かく見守ってくれるとありがたいです。

誤字・脱字を見つけたら言ってくれると嬉しいです。よろしくおねがいします


あと、私ちびちびこうやって書いてますけど、どうやったら一日でここに書けるのか不思議です。執筆中っていうのもよくわかりません。教えてくれるとありがたいです。

 心地よい振動を乗せてバスが走る。

 白いワンピースに可愛いリボン。髪を二つ結びにしてピンク色の靴を履いた私は流れる景色を眺めていた。


「Are you going to Scarborough Fair…

Parsley sage rosemary and thyme…」

「あら、また歌っているのね」


 声を掛けてきたのはいつもよりオシャレしたお母さん。私は振り向くと静かに頷く。


「名前は、思い出した?」

「……しらない」

「そう……」


 私はまた景色を眺める。今まで何度も歌の名前を聞かれたけど、私は答えることが出来なかった。

 だって本当に知らないから。

 知らないものを訊かれても、答えることは出来ない。

 私はまた、意味も名前も分からない歌を歌う。


「次は~獣隸学園前~……」


 車内のアナウンスが流れた。


「さぁ、着いたわ。荷物は忘れないでね」

「うん」


 お母さんに手を引かれながら私はバスを降りて、学園を見た時、私は目を見開いた。


「ここがあなたの通う学園よ」


 お母さんはしゃがんで私の肩を掴みながら言った。

 『獣黎学園初等部』

 その名前を見た瞬間、頭が割れるような……そう、雷に撃たれたような衝撃が私の身体を駆け巡った。


「ぃっ……!」


 激痛で声が出せない。


「恋音?どうかしたの?」


 お母さんが心配そうな顔で私の顔を覗きこんでくると、激痛は収まった。


「……なんでもないよ」


 そう言って私は精一杯の笑顔を見せる。


「そう?平気ならいいのだけれど」

「ほんとにだいじょうぶだよ」

「なら、いきましょうか」

「うん」


 私はお母さんと手を繋いで学園に向かった。



 講堂に着くと、私は先輩に名前を聞かれた。答えると白い紙の束をペラペラめくったあと私を席に案内してくれた。


「ここで待っていてね」


 と、太陽みたいにキラキラした笑顔で言われて流されるように頷くと先輩はすぐに去っていった。


 綺麗だったなぁ。


 ピンクを帯びたベージュの髪がふわふわしてて。まるで王子様みたいだった。

 ……って、いかんいかん。状況を確認しなければ。

 私の名前は深月恋音(みつきれんね)。今日で小学一年生になる。

 うん。そこまでは平気だ。

 ここは獣黎学園。前世の私がやっていた乙女ゲームの舞台……。

 私、頭おかしくなったのか?

 いやいやいや。ない。それはない!

 いやでも……自分で自分を信じらんない……。

 それに、この記憶……私の……。


(……ま、今は考えなくてもいっか)


 早々に考えるのを放棄した私は入学式が始まるのを静かに待った。



 ようやく始まって何十分が経過したような……してないような、そんな時。

 なんとか長い話を寝ずに聞いていたがそろそろ限界になった。

 私は何とか瞼を閉じたり開けたり、欠伸を殺したりしてなんとか起きているがやっぱり眠い。

 そんな時、隣の少年がそわそわしだした。

 ほんの少し心配になって小声で声をかける。


「ねぇ、どうしたの?」

「別に……」


 素っ気なく返されたので放って置こうと思ったけれど、少年のそわそわした感じが目障りになってきたのでもう一度聞くことにした。


「……鬱陶しいから言って。どうしたの?」

「っ……」


 少年は顔を真っ赤にして答える。


「……っこ」

「は?」

「……漏れる」

「!?」


 私は直ぐに近くにいる先生を手招きでこっちに近寄らせると事情を説明する。すると先生は急いで少年を連れてトイレに行った。

 間一髪。セーフ。

 安堵すると、眠気が吹っ飛んでいたことに気づいた。

 少年のおかげで寝ずに済みそうだ。少年よ、ありがとう。



 入学式が終わって今度は撮影会が行われる。


(こういうのは、何処も変わらないんだね……)


 私は微笑してから列に並んだ。

 先程の少年はというと、席に戻ってすぐに小声で「助かった」と言ってくれた。

 まぁ、すぐ行っちゃったけど素直なことはいいことだ。うん。

 

(それにしても、綺麗だったなぁ)


 ピンクを帯びたローズレッドの髪に髪と同じ色の大きな瞳。整った顔立ちはまるで人形みたいだった。

 そして、似ていた。


(やっぱ、夢の延長とかじゃないんだよね……)


 少年はとある乙女ゲームの攻略対象にすごく似ていた。

 “彼”を幼くしたような、そんな容姿だ。

 そして彼の名前は……。


兎崎(とざき) (ゆう)……」


 私が名前を呟くと少年に一瞬振り向かれた。

 慌てて口を塞ぐと、視線を彼から外すと彼は首をかしげて前を向いた。


(……はぁ、マジかぁ)


 私はため息を()くと、もう一度兎崎優を見る。

 その時、私はふとあることを思い出した。

 それは、“彼の性格”だ。

 確か兎崎優はあんなぶっきらぼうではなかったはずだ。

 私の知る彼は素直で、言葉使いも丁寧で、女の子が好きだったはずだけど……。

 今の彼はその真逆だ。女好きはまだ開花してないのかもしれないけど、あれは全然素直じゃない。


「はいはーい。皆さん、こっち向いてくださいね」


 カメラマンに言われ、私は兎崎優を視線から外してカメラに向き直った。



「つっかれたぁ~……」


 入学式が終わって家に帰ると、私は真っ先に自分の部屋に向かった。

 そしてベッドにダイブすると仰向けになる。

 今日は色々なことがあった。

 でも、何でこの世界のことしか思い出せないんだろう……。

 ここは獣黎学園が舞台の世界だと思う。

 入学早々に攻略対象に会ったんだし。


(確か翡翠も隠れキャラみたいな感じだった気がする。

 猫塚の廃嫡されて悪役令嬢に渡された悲劇の黒猫。

 って、悪役令嬢は私か。

 ……まぁ、今はどうでもいいや)


 主人公は二人いて、攻略対象は6:6。

 犬系一族と猫系一族。その他もいたっけ。

 犬系はいやだなぁ……。死亡フラグバンバン立ってくるし。

 その他もヤンデレという最強の死亡フラグがあるからなぁ……。

 声は危険な人ほど好みなんだけど……。

 私はベッドから降りて近くにあった椅子に座る。


「はぁ……。転生も楽じゃないね」

「何が楽ではないんですか?」


 いきなり現れた黒髪の少年に私は小さな悲鳴を上げるが、彼は気にせず紅茶の入ったティーカップを机の上に置いた。


「……驚くから止めなさいって何度言ったらわかるの。翡翠」

「すみません。それで、何が楽ではないんですか?」


 翡翠は小さく微笑みながら謝る。


(あーもう、可愛すぎ!)


 今すぐ抱きしめたくなるくらい可愛く首を傾けてきた翡翠はシュガーやミルクの入った入れ物を机に置くと、プレートを左手で持ち、目をキラキラ輝かせて私に訊いてきた。


「……そ、それは」


 私が目を泳がせながらはぐらかせないか苦笑いしていると、翡翠は燕尾服の胸ポケットから一枚の紙を取り出す。


「恋音様。隠し事は、よくないですよ?」

「!まさか……それ……」


 翡翠は笑顔でヒラヒラと紙を見せびらかしてくる。

 顔が整っているせいで、何故か怖さが増していく。


「これを奥様に見せられたくなければ、話してください。あ、因みにこれはコピーですからね」


 翡翠が不敵な笑みを浮かべるのとは反対に、私は顔を引きつらせ絶句する。

 彼は今コピーと言った。ということは、確実に十個以上のデータファイルに同じものが入っていると言うことだ……。


(最悪だ……。まさか翡翠に見つかるなんて)


 翡翠が私に見せてきたものは、写真だ。

 そこには、母のお気に入りだったカップを落として割ってしまった小さい私。

 バレたら……殺られる。


「……言えない」


 私はそう答えた。

 翡翠を見れば、目を丸くして驚いているみたいだった。否、驚いていた。


「……言えない、ですか。それは、恋音様が言いたくないのですか?それとも、誰かに強要されたのですか?」

「……前者です」


 畏まって敬語で答えると、ため息が返ってきた。

「なら、言ってください。誰にも話しませんから」


 そういう問題じゃない、と心の中で呟く。

 私が心配しているのは、翡翠が離れていかないかということただ一つ。

 記憶を思い出した私にとって翡翠は言わば命綱なのだ。言えるわけがない。

 嫌われたら、私は死亡へ即まっしぐら。

 どうやって翡翠に伝えて嫌われずに一緒にいられるか。人の気持ちなんか知らない私に分かるわけがない。

 それに、彼にも死亡フラグが立っているのだ。私はそれを止めなければならない。

 怖いのだ。翡翠に運命を告げて、嫌われて離れられるのは。

 命綱なんかじゃなくて、家族として嫌われたくないのだ。

 泣きそうになってうつむくと、翡翠は心配そうな顔をして覗きこんでくる。


「……すみません。貴女にそんな顔をさせたいわけではないんです。俺は従者ですが、同時に貴女の兄でもあります。お願いです。話してください」


 ーードクン、と心臓が大きく跳ねた気がした。

 まだ馴れてない言葉を使って私に言ってくれた彼の言葉に、泣きそうになる。

翡翠は私を裏切ったりしない。そんなの分かり切ったことだ。

でも、話せない。まだ私は迷っている。壊したくない。崩したくない。

翡翠も分かっているはずだ。私が変わっていることを。

それでも、言わないのは翡翠なりの優しさなのだろう。

そんな翡翠にわたしは答えたくなった。意を決した私は翡翠の目をみる。


「……私はーー」

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