ったく、クソ猿野郎が!
マリアナ諸島に配備されている戦略爆撃機、B29。
それを指揮する米空軍の管制本部は、
かつてない程の苛立ちに包まれていた。
理由は単純、B29の損害が予想をはるかに上回る勢いで
増加しているからである。
生き残った搭乗員に話を聞くと、
「目の前に巨大な火球が現れて隊長機が墜ちていった」・
「目の前の空間が鉄片で裂かれた」
「原因不明のエンジン不調が起きて・・・。」
といった様な事ばかりつぶやいている。
調査員の分析では
「鉄片云々は榴散弾で間違いないでしょうけど、
巨大な火球や強烈な爆風についてはなんとも・・・。」
とのことだ。
全く、役立たずにも程がある。
誰一人まともな意見を出しやしない。
対日本本土戦略的爆撃の総指揮を任されている
ルメイは苦々しい表情を隠さない。
触らぬ神に祟りなしという事で、
管制本部にいる参謀達は誰も声を発しない。
その事が余計に彼を苛立たせているという事に気が付かずに。
ルメイは思う。
こんな調子では爆撃戦略の見直しも必要になってくる。
一体どんな理由を考えて、
出撃を渋る搭乗員達を説得すればいいというのか。
搭乗員の証言も訳がわからん。大体火球とは何だ。
普通の砲弾の炸裂を見間違えているだけじゃねえのか。
あの臆病者どもめ。ったく、クソ忌々しい猿どもめ!
結局、散々考えた挙句出た結論は、
「日本軍の改良型炸薬による爆発・爆風を
過大評価しているだけ」というものだった。
参謀達は更迭を恐れて、
ルメイにろくに意見が出せないでいた。
「俺の立案に間違いはねぇ」
ルメイのこの傲慢さは、当分治りそうもない。
だが、少なくともルメイは傲慢ではあるが、
馬鹿ではない。むしろその頭脳は明晰だ。
情報によると、日本軍の対空砲火は空域指定型らしい。
だったら隊形を工夫して、
航過空域を分散させればいいだけのことだ。
ルメイはそう考えた。
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