接敵
「一一時方向、眼下に敵機発見!」
見張り員の草野次郎二飛曹が叫ぶ。
「ついに来たか・・・。」
吾郎はそう呟き、指示を出した。
「上昇限度いっぱいまで高度を上げろ!
可能な限り、接敵を遅らせるんだ!」
「了解であります!」
小野田がそれに勢いよく答える。
現在高度は一二〇〇〇メートル。エンジンを換装してから、
本格的に試験をしていないので詳細は分からないが、
おそらく、あと一〇〇〇メートル程が限界だろう。
「水メタノール噴射装置を稼働させますか。」小野田がそう尋ねてくる。
水メタノール噴射装置とは、史実において日本軍が、
あまりにも低いガソリンのオクタン価を
どうにかするため開発した、給油パイプ内にメタノール水溶液を噴射し、
擬似的に高オクタン価ガソリンのようにする装置である。
欠点としては、メタノールの腐食性により、
パイプの耐用性が落ちる、という点であった。
それゆえ、長時間の使用は禁物である。
「まだだ、まだ使用する時ではない。」
吾郎のその指示に小野田は、了解、と答えた。
願わくは、まだ敵がこちらに気づいてない事を祈るか・・・。
こればっかりは、運を天に任せる他ない。
そう思って吾郎は心の中で密かに祈った。
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