早とちりが多すぎるラブコメ
二段階認証に阻まれてログインできませんでした。
そうやって阻まれるほど燃え上がる、書きたい欲……!
そんな結果がこれです。
お楽しみいただけましたら幸いです。
「じゃ、じゃあ越智先輩、この手紙、千里先輩にちゃんと渡してくださいね!」
「あぁ、わかった」
「お願いしますよ!」
俺が書くよう促した、ハートマークで封をされた便箋。
念を押したマネージャーの伊地山は、耳まで真っ赤にして走り去っていった。
全く、隼人の奴め……。
その俊足でうちの野球部の柱の一人だというのに、ネガティブな性格で周囲の評価や好意を否定する。
……まぁ中学のあのパワハラ監督のせいだから、隼人を責める気にはなれないけど……。
だが手紙なら、何度も読み返せる。
最初はテンパっても、落ち着いて読めば伊地山の好意にも向き合えるだろう。
俺は隼人を待たせている校門へ急いだ。
「お、通啓」
「悪いな隼人。待っててもらって」
「いいって。で、何だ話って」
「あぁ、これなんだが……」
伊地山から預かった手紙を見せると、隼人の顔が真っ青になった。
「そ、それは、ら、ラブレター、か……?」
「あぁそうだ。お前に」
「い、嫌だ……!」
え。
「相談があると言いつつ実質自慢という相談風自慢ってやつだろ!? 知ってるぞ!」
「え、いや違」
「お前は優しいし野球部のエースだしいつかこんな風に道が分かれる事があるんじゃないかと思っていたけど!」
「いや待て隼人これは」
「それでも生まれた日は違えども彼女ができる日は一緒だとそう信じていたのに!」
「それどこの桃園の誓」
「俺はお前とは違う! 違うんだ! お前はお前の幸せを見つけてくれえええぇぇぇ!」
「ちょ」
……行ってしまった……。
あの俊足には追いつけない……。
仕方ない、明日教室で渡そう。
流石に授業から逃げ出す度胸はないだろう。
「んふふ、見ちゃいました! 聞いちゃいました!」
「んおっ!?」
声に驚いて振り返ると、スマホのカメラをこちらに向ける女子生徒の姿!
「新聞部切込隊長、栃林早矢! 野球部内の禁断の恋を大スクープです!」
「え? あ! 違う! この手紙は俺のじゃ」
「いいんですいいんです! 恋の形は千差万別! 私は越智さんの味方ですよ!」
「違う違う! そうじゃ、そうじゃな」
「こういうのは外堀から埋めるべしと決まっています! 大阪城もそう言ってます!」
「大阪城はそんな事言わな」
「善は急げ! 今日は徹夜だー! では明日の学校新聞をおっ楽しみにー!」
「あ、ちょ」
……やばい事になった……!
栃林は、前に教育実習生の女子を見る目が怪しい、という記事を書いた事があった。
証拠はあやふやな内容だったが、念のためと調べたら実習生の荷物から盗撮グッズが出てきて、結果お手柄となった。
そんな流れがあった以上、『この記事ももしかしたら……』とか思われたら、隼人と伊地山の恋が今以上にややこしくなる!
何とかしないと……!
「あれ、通啓。どうしたの? あ、今日野球部の部活ないから今帰りなんだ」
「! 智里!」
これは天の助けか!?
幼馴染の早渡智里!
真面目で明るく、男女問わず顔も広い!
智里に頼めば……!
「? どうしたの?」
「……いや……」
そういえばこいつも結構な早とちり暴走タイプだった……。
小学校の時から、ちょっと可愛い女の子と話してただけで『二人って付き合ってるのー!?』とか騒いで気まずくさせられた……。
……でもここで明日当事者の俺が栃林の記事に文句を言うよりは、はるかに信憑性があるからなぁ……。
簡潔に!
かつ丁寧に!
誤解の余地がないように説明すればいい!
「……なぁ智里。落ち着いて話を聞いてくれるか……?」
「? いいけど、何よ? 深刻そうな顔して……」
「野球部の千里隼人、知ってるな?」
「え、そりゃ中学から一緒だし……。え、急に何の話?」
「で、マネージャーの伊地山が、あいつの事を好きなんだ」
「え、マジ!? 隼人君にもついに春が!」
「だが隼人のあの性格だ。好きと言われてまともには受けない」
「あー……。あのクソ監督のせいで、メンタルボロボロだもんね……」
「だから伊地山に手紙を書かせたんだ」
「成程、手紙なら落ち着いて読み返せるもんね」
「だが隼人は俺がラブレターをもらった自慢をするんだと勘違いして、走って逃げた」
「隼人君らしすぎる……」
「それを新聞部の栃林に見られてな……」
「あ! 通啓が隼人君にラブレターを渡そうとしたって勘違いしたの!?」
「そう! そうなんだよ!」
良かった! 伝わった!
「あの人思い込んだら突っ走る系だもんね。『野球部レギュラーの禁断の愛!』とか書きそう……」
「そうなんだよ! そんな事されたら隼人と伊地山の関係もおかしくなるだろ?」
「そうよね。下手したら通啓が伊地山さんから訴えられるかも……」
怖い……!
「だからお前の力を借りたいんだ!」
「え、わ、私に!?」
「あぁ! お前にしか頼めない!」
お前の人脈をフルに使って、新聞がガセだと広めてくれ!
そう言う前に、智里は頷いた。
「……わかったわ」
「え、ほ、本当か?」
さすが智里!
俺の言いたい事を平然と察してくれる!
そこにシビれるあこが
「……通啓の彼女のフリしろって事よね!」
れえええぇぇぇ!?
「そうすれば男同士の恋とかいう噂も払拭できるし隼人君の後押しにもなるもんね!」
「え、いやでも」
「他の女の子なら野球一筋だった通啓と接点ないけど私なら幼馴染って繋がりがあるし!」
「いやそうだけどお前」
「そうと決まれば善は急げ! 明日の朝から手を繋いで学校に行くわよ!」
「いや待てときに落ち着」
「明日は私ちょっとメイクに気合い入れるから学校近くで褒めるのよ! じゃ!」
何でみんな話を聞かずに走り去るんだ!
流行ってんのそれ!?
どいつもこいつも早とちりしやがって……!
「……」
いや、俺まで早とちりしちゃいけない。
智里は『フリ』って言ったんだから。
……それなのに。
明らかにめんどくさい状況なのに。
俺の顔はなかなか元に戻らなかった。
読了ありがとうございます。
ちょっとだけカ◯ヨムさんに浮気したのは秘密。
またいくつか短編を書いてますので、少しずつ投稿できたらと思います。
ほぼ恋愛ものです(迫真)。
よろしくお願いいたします。




