堕ちた魔法少女の雑な解決方法
「創作における曇らせにもいろいろな種類があります。私は曇らせが好きです。ですが、どんな曇らせでもいいわけではないのです。好きではない曇らせもあるのです。たとえば、悪役に悲しい過去があり、それを聞いた主人公が曇る。そんな曇らせは、私は好きではないですね。ああっ、もちろん、これは私の好みの問題で、それらの作品を否定しているわけではありません」
と、そのやってきた少女は、聞かれもしていない持論を語り始めた。
「ええっと、つまりどういうこと?」
「簡単に言うと、あなたに曇り顔されても私は面白くないので、これから起こる曇りイベントをキャンセルさせます」
小泉花子は魔法少女である。
平和を愛し正義のために日夜戦っていた。
その花子の前に、ひとりの少女がやってくる。
その少女は、自分は魔法少女だったと名乗る。
過去形の言い方に花子がひっかかっていると、少女は説明する。
「私はもう魔法少女ではないのです。魔法少女のなれのはて。堕ちた魔法少女とでも思ってください」
その少女が語るのは、この世界は時間を戻された世界だと。
みんなが記憶を失っている中、自分だけその記憶があるので、これから何が起こるかわかるのだと。
突拍子もない話だったが、花子はその少女の言葉を信じた。
その少女は信頼できると、花子の中の何かが告げていた。
「これから花子さんは、悪の組織のボスと戦うことになります。ラスボスってやつですね。花子さんはそのラスボスに勝ちます。負けたラスボスは、唐突に自分の悲しい過去を語りだします。その話を聞いて、花子さんは曇ります。花子さんは優しいからです。ラスボスが悪に染まった理由も同情できる。この世界は守るだけの価値があるのか?そのラスボスの問いかけに答えられず、花子さんは曇ります。でも、そんな話を聞く必要はないのです。あなたは曇り顔なんて似合わない。信頼できる仲間と笑い合っていればいいのです。ラスボスの悩みは、こっちが完璧に解決しますので」
「あなたには解決方法があるのですか?」
「私はあんなのにかかわるつもりはないです。かかわる必要もない。あなたはなまじ魔法が優れているので、世間の文明がどれだけ進んでいるかわかっていないのです」
小泉花子は魔法少女である。
いま、花子は悪のラスボスに勝った。
敗れたラスボスは、自分の悲しい過去を語り、悪に染まった理由を喋る。
他にどうしたらよかったんだ!
敗れたラスボスは、花子に向かって叫ぶ。
悪の道に進む以外の方法があったと言うのか?そんな方法があるなら、教えてくれよ!
花子にはそのラスボスの話が聞こえなかった。堕ちた魔法少女のアドバイスで耳栓をしていたからだ。
花子はスマホを、ラスボスに向けていた。
いい質問ですね
スマホのAIが、ラスボスの質問に答え始めた。
おわり




