覚醒病のパンデミック(第六話)
<これまでのあらすじ>
普通の中学生・玉木隼人は、ある日「あなたは運命に逆らえる?」と問いかける謎の少女から、不思議なカードを渡される。
街に現れた正体不明の怪物に襲われた隼人は、カードの力によってドラゴンを召喚し、命を救われる。
やがて彼は知ることになる。
世界はあと三年で滅びること。
人を怪物へと変える謎のウイルス〈覚醒病〉、それを巡って暗躍する極秘防衛機関〈Cicada〉、そして人類を救うために進められる〈プロジェクト・ビリオン〉の存在を。
転校生として現れた少女・小瀬栞は、かつて隼人にカードを渡した存在と瓜二つだった。
さらに、親友・後藤孝太朗もまた、この計画に深く関わっていく――。
選ばれたカード、操られる運命、そして避けられない滅びの未来。
少年は世界を救う存在となるのか、それとも――。
これは、運命に抗う少年たちの近未来SF×異能バトルストーリー。
朝のニュースは、いつもより声が低かった。
『――原因不明の新型ウイルスによる体調不良者が、
各地で確認されています』
画面のテロップには、
**「新型ウイルス」「詳細不明」**という文字。
『現在、感染経路・潜伏期間ともに調査中で――』
玉木隼人は、テレビを消した。
「……またか」
最初は、
海外の話だった。
次は、
国内のどこか。
そして今は、
同じ街のニュースになっている。
通学路。
駅前は、妙に静かだった。
人はいる。
だが、会話が少ない。
マスク。
距離。
視線を合わせない空気。
「ねえ……」
前を歩く学生の声。
「昨日、救急車すごくなかった?」
「うちの近所も」
誰も、
“大丈夫”とは言わなかった。
教室に入ると、
違和感はすぐに分かった。
空席が、増えている。
「体調不良で欠席、だって」
ひよりが、声を落として言う。
「こんなに?」
「先生も、詳しいこと知らないみたい」
チャイムが鳴っても、
授業は始まらなかった。
代わりに、
担任と、白衣姿の大人が入ってくる。
「本日より、
学校としても感染対策を強化します」
「原因は不明ですが、
発熱、意識障害、
強い倦怠感が見られた場合――」
教室が、ざわつく。
“分からない”
それ自体が、不安だった。
休み時間。
玉木は、窓際に立っていた。
外から聞こえる、
サイレンの音。
一台じゃない。
続いて、また一台。
「……増えてるね」
隣で、小瀬栞が呟いた。
「え?」
玉木が振り返ると、
栞はしまった、という顔をした。
「ううん。
ニュースの話」
だが、その目は、
ただの噂話をしている人のものじゃなかった。
「……怖い?」
玉木が聞く。
栞は、一瞬だけ考えてから答える。
「怖い、というより……」
言葉を探して、やめた。
「早く、収まるといいね」
放課後。
街の大型モニターが、
緊急速報を映し出す。
『新型ウイルス感染拡大の可能性を受け――』
人々が、立ち止まる。
恐怖が、
静かに共有されていく。
その夜。
玉木は、
机の上に置かれたカードを見つめていた。
ニュースでは、
ただの“新型ウイルス”。
だが、
この力が必要になる理由を、
玉木はもう知っている。
(……始まった)
窓の外。
遠くで、
赤色灯が回っている。
世界はまだ、
平然を装っている。
だが――
壊れる準備は、もう終わっていた。




