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Project Billion ―運命を書き換えるカード―  作者: mr.iwasi


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4/6

栞の違和感(第四話)

<これまでのあらすじ>


普通の中学生・玉木隼人は、ある日「あなたは運命に逆らえる?」と問いかける謎の少女から、不思議なカードを渡される。


街に現れた正体不明の怪物に襲われた隼人は、カードの力によってドラゴンを召喚し、命を救われる。




やがて彼は知ることになる。


世界はあと三年で滅びること。


人を怪物へと変える謎のウイルス〈覚醒病〉、それを巡って暗躍する極秘防衛機関〈Cicada〉、そして人類を救うために進められる〈プロジェクト・ビリオン〉の存在を。




転校生として現れた少女・小瀬栞は、かつて隼人にカードを渡した存在と瓜二つだった。


さらに、親友・後藤孝太朗もまた、この計画に深く関わっていく――。




選ばれたカード、操られる運命、そして避けられない滅びの未来。


少年は世界を救う存在となるのか、それとも――。




これは、運命に抗う少年たちの近未来SF×異能バトルストーリー。

(昼休み・校舎裏)


 昼休みの校舎裏は、人が少なくて静かだった。

 コンクリートの壁に寄りかかりながら、浅倉ひよりは紙パックのジュースを振る。


「ねえ栞、もう学校慣れた?」


「……うん。たぶん」


 小瀬栞は、少し考えてから答えた。

 “慣れた”という言葉が、どこか曖昧に響く。


「“たぶん”ってなにそれ」


 ひよりは笑って、栞の顔を覗き込む。


「でもさ、栞って落ち着いてるよね。

 最初から、ここにいたみたい」


「そう、かな」


 栞はそう言いながら、視線を逸らした。


 ここにいた気がする。

 ――そんな感覚が、一瞬だけ胸をよぎる。


 もちろん、理由はない。


「玉木と後藤とも、もう話した?」


 その名前に、栞の指がわずかに止まる。


「……話した、と思う」


「思う?」


「うん。普通に」


 普通。

 本当に普通だったはずだ。


 なのに、

 玉木隼人の名前を聞くと、

 胸の奥が少しだけ、きゅっとする。


「玉木さー」


 ひよりは空を見上げる。


「放っとけないタイプだよね。

 自分で抱え込むっていうか」


「……そう、なの?」


「うん。

 だから私、ああいう人、嫌いじゃない」


 ひよりは、屈託なく笑った。


 その笑顔を見て、

 栞はなぜか、目を逸らしたくなった。


「ひよりは……」


 言いかけて、言葉を探す。


「怖くないの?」


「なにが?」


「……色々」


 ひよりは一瞬きょとんとして、

 それから肩をすくめた。


「そりゃ怖いよ。

 でもさ」


 ジュースを一口飲んで、続ける。


「怖いからって、

 何もしないのは嫌じゃん」


 その言葉に、

 栞の胸が、少しだけざわついた。


 ――知っている。

 そんな気が、してしまった。


「栞?」


「……ううん。なんでもない」


 栞は小さく首を振る。


 本当に、なんでもない。

 理由も、意味もない。


 ただ。


「ひよりは……」


 栞は、ひよりを見つめる。


「……強いね」


「え?」


 ひよりは一瞬驚いて、

 すぐに笑った。


「なにそれ。急に」


「ごめん」


「いいけどさ」


 ひよりは栞の肩を軽く叩く。


「栞もさ、

 もっと適当でいいんだよ」


「適当?」


「そ。

 深く考えすぎ」


 その言葉を聞いて、

 栞は小さく笑った。


 ――そうかもしれない。


 まだ、何も知らないのだから。


「ありがとう」


「どういたしまして!」


 ひよりは手を振って、校舎の方へ走っていく。


 その背中を見送りながら、

 栞は胸に手を当てた。


 理由の分からない不安。

 理由の分からない大切さ。


 それが、

 今はただの“気のせい”であってほしいと、

 

心から思った


四章 終

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