Episode5 Pocket Watch
王都の中央広場は、昼下がりの陽光に照らされて賑やかだ。商人たちの声や子供たちの笑い声が響き、何もかもが活気に満ちている。そんな中、セリナ・ベルナデットは静かに歩いていた。
今日もまた、家族のために何かを買おうという思いが心にあった。特に、ライオに何か特別なものを贈りたいと思っていたのだ。彼のことを考えると、つい笑顔がこぼれる。あの軽薄そうに見えて、実は家族思いで、時折見せる真剣な顔がたまらなく愛おしい。
「ライオはいつも、何も言わないけど……家族のために頑張ってる。少しでも、いいものを買ってあげたい。」
クラウスが隣で黙ってついてきている。彼は相変わらず真面目で、冷静にセリナの周りを見守っていた。
「セリナ様、無理をなさらぬように。ライオ様には、もともと何でもあるではないですか」
「いいのよ、クラウス。少しでも彼を喜ばせたいの。」
セリナは微笑んで、店先を覗き込んだ。手に取ったのは、精緻に作られた小さな懐中時計だった。
「これなら、ライオも気に入ってくれると思うわ。」
懐中時計を手に取ると、金の縁取りが光り、刻まれた文字が美しく映えていた。そのまま、セリナは思いを馳せる。
「ライオは、いつも家族のために一生懸命よね。でも、時々無理しすぎて、疲れちゃってることがある。だから、今日は少しだけでも、彼に喜んでもらいたいの。」
クラウスはその言葉に何も言わなかったが、彼の目にはわずかな優しさが宿っていた。
「セリナ様がそう思うのなら、ライオ様も喜ばれることでしょう。」
その後、セリナは懐中時計を包んでもらい、帰路についた。
パーティハウスに戻ると、ライオが少しだけ遅れて帰宅した。足音が玄関に響き、彼が部屋に入ってくる。
「おかえり、ライオ。」
セリナは優しく微笑んで、彼を迎え入れる。
「おう、ただいま。」
ライオは少し疲れた顔をしているものの、いつものように軽口を叩く。
セリナはすぐに手に持っていた小さな包みを差し出した。
「これ、ライオへのプレゼントよ。あなたが頑張ってるの、私はちゃんと見てるから。」
ライオは、少し照れくさそうに包みを開けると、懐中時計が現れた。その美しい輝きに目を奪われ、言葉を失った。
「これ、すごいな……。ありがとな、セリナ。」
その言葉にライオはほんの少しだけ顔を赤らめたが、心の中では深く感謝していた。
「……お前ら、ほんとに俺に甘いな。でも、ありがたいよ。」
ライオは懐中時計を胸に押し当て、少し照れくさそうに口を開いた。
「家族がいるから、俺はどんなことだって頑張れるんだ。」
その言葉に、セリナとクラウスは互いに静かに微笑み、ライオの決意を感じ取った。




