LUCKY=SMITH
酒場の喧騒の中、ライオはカウンター席で妙齢の女性とグラスを傾けていた。笑顔で冗談を飛ばし、まるで自分が世界一幸せな男であるかのように振る舞っている。
その光景に、奥の席から冷たい声が飛ぶ。
「ライオ様?私がいるのに、そのようなお方と楽しんでいらっしゃるのですか?」
声の主はセリナ・フォン=エルトハルト。上流階級の血を引く魔術の天才で、どこか不器用な愛情をライオに向け続けている。
(セリナ:貴族の魔術天才お嬢様。家族想いで、ライオの真っ直ぐさに惹かれているが、不器用でツン寄り。)
ライオはグラスを置き、ニコッと笑いながら言い訳を始める。
「いやいやセリナさん、誤解誤解。これはあれ、情報収集。冒険者としての、ね?」
(ライオ:貧農出身の超運だけで生き残る冒険者。口八丁、心根は家族想い。自覚ゼロの幸運体質。)
その横から低く重たい声が響く。
「まったく、なぜこのような男にお嬢様は……」
現れたのはクラウス。セリナに付き従う重騎士であり執事。ライオの軽薄さに眉をひそめるが、そのたびにお嬢様の笑顔を見て溜め息をつく。
(クラウス:元騎士の重装備護衛執事。セリナの忠臣であり保護者。ライオには苦言を呈しがち。)
すると酒場の一角から、ヒラヒラと手を振る人物が近づいてきた。
「ちょっとォ~、アタシもいるのにぃ? まーた可愛い女の子に鼻の下のばしてぇ♥」
その妖艶な声と派手な身振りの正体は、アルメス。神に見放された元神官にして、いまや神を超えて愛を語るオカマの癒し手。
(アルメス:男。神に見放された元神官。オネエ口調で誰にでも絡むが、実は深い慈愛を持つ。ライオの運を「天啓」だと信じている。)
「ちょっ…アルメスさん、これはその、信仰的な…意味での交わりで…!」
必死にごまかすライオに、さらに追い打ちをかけるように、落ち着いた声が酒の香りと共に響いた。
「くくっ。ほんとに飽きないね、君は。」
グラスを片手に現れたのは、メイベル。軽やかに物語を紡ぐ吟遊詩人。ライオの無自覚なドタバタを曲にして売るのが最近のマイブームらしい。
(メイベル:女。吟遊詩人でありバイセク。物事を俯瞰で見るクールさと、好奇心旺盛な遊び心を併せ持つ。)
ライオは全方向からの視線にタジタジになりながらも、グラスをくるりと回し、少し照れくさそうに言った。
「ま、俺ってば運が良すぎるんだよ。モテるってつらいなぁ~、はははっ!」
全員:「……」
沈黙のあと、メイベルが笑い、アルメスがニヤリとウィンクし、セリナがふてくされたように視線を逸らす。そしてクラウスは、天井を見上げて深く深く息を吐いた。
そして——
これがDランク冒険者パーティ『ラッキースミス』だ。
トラブル率:高め。
成功率:謎に高め。
好感度:なぜか上がる。
英雄になる気ゼロ。
だが運命だけは、彼らを放っておかない。