By Chance, a Hero
王宮の執務室。厚い扉が開き、ライオ・クレメンスは少し背を伸ばして王様の前に立った。
農家の息子に過ぎなかった彼は、知らぬ間に国中で「英雄」と呼ばれる存在になっていた。
今日も相変わらず、少し狡賢く、しかし飄々とした雰囲気を漂わせている。
王様はライオを見据え、静かに口を開いた。
「ライオ、頼みがある。」
ライオは軽く会釈をし、応える。
「はい、何でしょうか?」
王様は机の上の書類を一瞥しながら言った。
「山奥にある古い神殿の調査に行ってほしい。」
ライオは眉を一瞬上げたが、すぐに肩をすくめる。
「神殿ですか…。まあ、運が良ければ何とかなるでしょう。」
王様は目を細め、慎重に言葉を選ぶように続けた。
「君なら大丈夫だと思っている。無事に戻れば、少しばかりの報奨も用意しておく。」
ライオはにやりと笑った。
「報奨もですか…。それなら家族も喜びますね。」
王様は深く息をつき、書類に目を落としたまま告げる。
「だが油断するな。山の奥はただならぬ気配があるという噂だ。」
ライオは軽く顎に手をやり、肩を揺らす。
「ただならぬ気配…。ふむ、そこは運に任せます。」
王様は思わず笑い、顔を上げた。
「ははは、君のその能天気さが、逆に頼もしい。では頼んだぞ。」
ライオは胸を張り、にこやかに答えた。
「はい、任せてください。たぶん何とかなると思います。」
そのままライオは軽やかに一礼し、執務室を後にする。扉が静かに閉まると、王様は机に戻り、独りごちた。
「あの少年の運の強さ…次は何が起きるか、見届けねばな。」
執務室を出たライオは、長い廊下を軽やかに駆け抜けた。胸を張り、声を張り上げる。
「行ってくるぜ!期待して待ってな!」
だが、その瞬間――足元の敷物につまずき、派手に転んでしまった。
「うおっ!」
顔を上げると、転んだ先には、思わず息を呑むほどの美しいメイドが立っていた。
豊かな胸元に目がいき、ライオは心の中で咄嗟に呟いた。
「ラッキー…!」
ライオの運の強さは、やはり今日も健在だった。何が起きるか分からない山への冒険が、ここから始まる




