第3話 黙示録の季節
翌朝、ここは国防省なのに、
「あれっ?」
何故か、人気俳優の森村拓海が、廊下を歩いているのを僕は見かけた。彼は、そのまま足早に姿を消したのだが、
そういえば、以前、テレビドラマの番宣で絵葉リリスが、森村の大ファンで、彼に会いたくて芸能界を目指したと、語っていたことを思い出す。
「そういう事か。まあ、そういう事も、あるかもしれないけど」
と、僕は、そのことに関しては、アレコレ詮索しないことにする。明日、死ぬかもしれないのは、僕もリリスも同じなのだから。
国防省は僕たち二人に、生きているうちには、良い思いをさせてくれる。それは、せめてもの善意だ。
そして、朝食が終わった頃の時間帯に、テレビでは総理大臣の緊急記者会見の様子が映し出され、
「巨大怪獣の撃退のために政府は、ありとあらゆる手段を講じます」
と、総理が国民へ向け宣言した直後、
国防軍は戦闘機を飛ばし、巨大怪獣をミサイルで攻撃したが、まったく刃が立たなかった。
この状況を見て、三石美聖は、
「やはり、あの巨大怪獣に対抗できるのは、巨人型戦車セイビアしかないわ。あたなたち、覚悟はできている?」
「はい、勿論」
と、リリスは即答したが、やはり僕には恐怖心があった。それでも、弱音なんて吐いている場合ではない。
「僕も、覚悟はできています」
その日の昼食の後に、ブルーツゥースに干渉しない、超薄型のパイロットスーツが支給され、僕とリリスはセイビアに乗り込んだ。
巨大怪獣は、地方都市を破壊しながら、首都に迫っているという。いよいよ、出撃の瞬間が近づいている。
これは、あまり関係ないかもしれないが、Q州の遺跡で発見された古代文明の石板に、記されていた神話の記述によれば、
『神を失った東の島には、大地震が頻発するだろう。北の集落では津波により多くの人が死んで、火を失い。さらには南の集落の英雄の城が倒壊する。また海沿いの集落では、新年も祝えず。最期は海から魔物が現れ、その口から吐く炎で滅ぼされる』と、ある。
そんな事を考えていると、
「発進よ、準備はいい?」
と、通信機から美聖の声。
「はい、了解しました」
リリスが即座に答える。
グオオオォォォォーン。
地下の格納庫から、全長四十メートルの巨人型戦車が、巨大なリフトで地上へと垂直に引き上げられる。
ガッコーンッ。
最後に大きく揺れて、対怪獣超兵器・巨人型戦車セイビアは地上へと到着した。
僕は四十メートルの頭部の砲座から、首都の街を見る。
この高さはビルの十階くらいの高さで、首都には三十階を超える超高層ビルが乱立しているため、セイビアはその超高層ビルの間を通って、北へと向かった。
そして、ちょうど郊外に出た頃、巨大怪獣と遭遇する。
その怪獣は全長、約四十メートル。セイビアと同じくらいの大きさだ。直立二足歩行の、巨大なトカゲのような怪物だった。
ギャアオオォォォン!
巨大怪獣が吠える。僕は、例の神話の最後に記された、
「最期は海から魔物が現れ、その口から吐く炎で滅ぼされる」
と、いう記述を思い出した瞬間、
本当に、目の前の怪獣が口から火を吐き、セイビアは、その炎に包まれた。