表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/62

第37話




 どうにも落ち着かない一日を過ごし、ようやく訪れた放課後にほっと息を吐いて図書室に行こうとしたハリィメルの前に、朝と同じ暗い目つきのロージスが立ちはだかった。


「話がある」


 ロージスの怒りの表情は見たことがあるが、ハリィメルに無視されて屈辱にぷるぷる震えていた時とはまったく違う、腹の底から湧き上がる不快さを必死に押さえつけて平静を保っているかのような表情に、ハリィメルは思わずごくっと息をのんだ。


 教室にはまだ他の生徒達がいる。何人かはロージスがハリィメルに話しかけたことに気づいてこちらを見ている。

 いつもなら「人前なので」と無視するところだが、さすがに今この場でそんなことをする勇気はハリィメルにはなかった。


 ロージスの態度を見る限りあまりいい話ではなさそうだし、とりあえず教室からは出た方がいいだろう。


「あの、場所を変えませんか?」

「ああ。なら街のカフェにでも行こうぜ」


 思わぬ言葉を返されて、ハリィメルは困惑に眉を曇らせた。


「え? いえ、中庭とか空き教室でよいかと……」


 ハリィメルがそう言うと、ロージスは目をすがめて「はっ」と笑った。

 ひどくやけっぱちな笑い方だった。

 いつもとまったく違う態度を見せるロージスに、ハリィメルはなんだか恐ろしい感じがして手にした荷物をぎゅっと握った。


 なんだろう。休み中になにかあったのだろうか。

 でも、ロージスは明らかにハリィメルに対して腹を立てている。

その理由がわからずまごまごするハリィメルに、ロージスは冷たい声音で言った。


「俺の誘いは断るくせに、他の男とはカフェに行くわけか」

「え?」


 ハリィメルはロージスと向き合いながらも、彼の様子のおかしさに気づいた周囲がざわめいているので気が気じゃなかった。


「あの、なんの話をしていらっしゃるのかわかりませんが、まずは教室の外に――」

「なんの話かわからない、だ? 勉強が忙しくて遊びに行く暇もないはずの誰かさんが、カフェで男と会ってのんびりお茶を飲んでいたって話だ!」


 ロージスに強い口調でそう言われて、ハリィメルは唖然として目を白黒させた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やだ!一丁前に嫉妬してますよ!? ダメだぁーニヤニヤしてしまう♪
[一言] あぁもうめんどくさい! ハリィメル、嘘告のことバラしちゃえ!
[一言]  またまた何様発言。  おまえ大概にせえよ、位は言って良いよね。  嘘告だと知っているハリィメルからすれば「演技派だなあ」程度の認識しかされてないと思うが。  こっから絆されたらそれはそれで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ