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9話


 アズール様は午前中は訓練をしていることが多いとのことで、私はローリーに誘われて訓練している姿を見学しに行くことにした。


 訓練場は城の裏手側にあるとのことで私は庭を進んでいくのだけれど、庭とはいっても植物が植えられているわけではなく石造りの庭であった。


 ごつごつとした巨大な岩が並ぶそれはある意味見応えがあって、私は訓練場へ行くまでの間、ローリーに尋ねた。


「このキラキラと光っている石はなんなのですか?」


「これはシュルトンではどこにでもある石なのですが、これほど大きい物はめったにないので、おそらく庭が味気ないからと置いたのではないかと思います」


「すごいわねぇ」


「もっと、可愛らしいシャルロッテ様に似合うような花を植えられたらいいのですが……」


「え? そんなことないわ。ローリー気遣ってくれてありがとう。でも、私シュルトンとリベラでは違うことが多くあって、楽しいのよ?」


「そう、ですか?」


 首をかしげるローリーに、私はうなずくと言った。


「自分が普通だと思っていた物が、案外普通ではないということに気付けて、私楽しいの」


 そう言うと、ローリーは微笑むと私に言った。


「もし何かわからないことがあればいつでも聞いてください。あ、訓練場はもうすぐです」


「楽しみだわ」


 訓練場に近づくと、声が聞こえ始めたのだけれど、想像よりも十倍くらい大きな声が聞こえることに私は内心ドキドキとした。


「おりゃぁぁぁ!」


「くらえぇぇえ!」


「まだまだぁぁあっ!」


 リベラ王国でも騎士達の訓練場は見に行ったことがある。


 ただ、その時にはこのような声は聞こえず、騎士達が素振りをしたり試合をしたりする様子であった。


 けれどシュルトンの騎士達は試合というよりもぶつかり合いの訓練であり、木刀を勢いよく振り回しては全力でぶつかっていく姿が迫力があって、私は少しばかり怖気づいてしまう。


「シャルロッテ様、大丈夫ですよ。こちらに席を用意してあります。どうぞ」


 机と椅子が用意されており、私は腰を下ろしたのだけれど、ハッと顔をあげると騎士達がまじまじとした表情でこちらを見つめている。


 私は緊張してしまって、表情を強張らせた瞬間、強い風が吹き抜けていった。


 そしてそれと同時にアズール様の声が響いた。


「俺の婚約者殿が、可愛くて見つめていたい気持ちは分かる。さて、俺も婚約者殿にいいところを見せなくてはな。さぁ誰から相手をしてくれる?」


 アズール様がそう言った瞬間、皆が私から視線を外す。


 私はそのやり取りに少し肩から力が抜ける。


「シャルロッテ嬢!」


 アズール様は手をあげると私の方へと小走りでやってきてくれた。


 そして笑顔を向けてくれるから、私は優しいなと感じる。


「お疲れ様です。訓練のお邪魔ではないですか?」


 そう尋ねると、アズール様は首を何度か横に振る。


「婚約者殿が来てくれて、邪魔などと思うわけがない。張り切って訓練をするから、応援を頼む」


 少し浮足立っているかのような、その楽し気な声に、私はほっと胸を撫で下ろす。


 見学に来て嫌がられたらどうしようかと思ったのだ。


 太い木刀をアズール様は担ぐと言った。


「ではさっそく、手合わせをしてみせるからな」



手をブンブンと振ってアズール様は訓練へと戻ると、数名の騎士を呼び、木刀を身構えた。


 ローリーはそれを見て苦笑を浮かべた。


「陛下が張り切っていますねぇ。シャルロッテ様が来られて嬉しい気持ちは分かりますが」


「そうなの……かしら?」


「えぇ。張り切っていますね。シャルロッテ様はご存じないかと思いますが、実のところご婚約の話題が出てから毎日陛下はシャルロッテ様の釣書を見つめながら、自分には過分な婚約者が来てくれる。出来るだけ喜ばせたい。安心させたい。そんなことばかり仰っていましたから、シャルロッテ様にいいところを見せたいのでしょうね~」


「ローリーはアズール様のことをよく知っているのね?」


 私が何気なくそう言うと、ローリーは吹き出すように笑った。


「私もこの前まであそこでブンブン剣を振っていたのですが、さすがに結婚をしたし落ち着きたいなという思いもあって、シャルロッテ様の下で働かせてもらうことになったのです。ちなみに、私の主人は、ダリルです」


「え?」


「なので実はシャルロッテ様とは親戚になります」


「そうなの!?」


「ふふふ。そうなのです。ですから、安心してくださいね?」


「え?」


 私が首をかしげると、ローリーは笑みを深める。


「陛下とは男女の仲では決してありませんので」


「あ、あ、ち、違うわよ? 私、別にそんなことを疑っていないわ!」


 私の言葉に、ローリーは楽し気に笑みを浮かべたのであった。


 そしてそんな私達にアズール様が声をかけた。


「おーい! シャルロッテ嬢! 模擬試合をすることになった! 応援を頼む!」


「え? あ、はい! 応援しております!」


「ありがとう!」


 嬉しそうにぶんぶんと手を振ってくれるアズール様が可愛らしく見えて、私は胸が少しときめいた。


 こんな感情になるなんて思ってもいなくて、少し戸惑う。


 ただ、木刀を振るアズール様の瞳は一瞬で鋭いものに変わり、木刀を振るたびにすごい音がして、私はその勢いにまた驚かされたのであった。


この前桜を見に行ったのですが、春風が心地よくて幸せな気持ちになりました(*´ω`*)

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