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17話

 翌日朝目覚めた私は不意に暖かな日差しを感じた。


 太陽が昇り、ベッドの上でまどろむ時間。私は瞼を何度か瞬かせ、そしてゆっくりと体を起こした。


 そして、ふと気づく。


 部屋が明るく、カーテン越しに太陽の日差しを感じたのである。


「え?」


 私は慌てて立ち上がると、テラスへとつながる扉を開け外へと出た。


 優しい風が吹き抜けていく。そして微かに甘い香りがして私は顔をあげると、そこには青く晴れ渡る空があった。


 久しぶりに太陽の暖かな光を感じ、私は両手を伸ばしてその光を受ける。


「暖かい……あぁ、気持ちがいい」


 瞼を閉じて光を存分に満喫した後、私は目を開けると青空を真っすぐに見つめた。


「……背中を押してくださっているのかしら。ふふ。頑張ります」


 今まで、自分の感情を反映させてしまう天に対して、疑問と複雑な感情を抱いたことが何度もあった。


 けれど、シュルトンでの暮らしはそのようなことを気にすることもなく、そしてだからこそ心が自由になり余裕が生まれた。


 私は、ここに来るべきだったのだと、今ではそう思えるくらいである。


 そうしていると、何やら外が騒がしいことに私は気づき、部屋の中へと戻るとローリーを呼んだ。


 ローリーは慌てた様子で私の部屋に入ってくると、興奮した様子で窓の外を指さした。


「シャルロット様! 外をご覧になりましたか!? シュルトンに青空が!」


 いつもは冷静なローリーのその様子に私は少し笑うと、うなずいた。


「私も先ほどまで日光浴をついしてしまったわ。青空気持ちがいいわね」


 ローリーは何度もそれに同意するようにうなずくと、興奮した様子で話し続けた。


「シャルロッテ様が来てくださってから、この国は本当に変わってきています。なんていう偶然でしょう。いや偶然ではないのかもしれませんね。やはり最初から噂がたったとおり、シャルロッテ様が我が国に春を運んできてくれた女神様なのかもしれません」


 大げさだなと思いながら私はローリーに手伝ってもらい朝の支度を済ませ、食堂へと向かう。


 昨日の夜中にアズール様も帰って来たとのことであり、一緒に朝食を摂れるという知らせを受けたので、朝から楽しみである。


 出来れば今日時間を取っていただき、私のことを話そう。


 そう思いながら食堂の扉を開けてもらい中へと入ると、アズール様がすでに待っていた。


 ただその雰囲気はいつもとは少し違い、私はどうしたのだろうかと首を傾げた。


「アズール様。お帰りなさいませ。昨晩はお迎えが出来ず申し訳ありません」


「いや、以前にも話した通り、夜も遅くなるし何時に帰れるのかも分からない。なので眠ってくれていていいのだ」


 以前、アズール様を待っていようとしたのだけれど待たなくていいと言われ、アズール様が心配するからという理由で、私は待つことを控えていたのだ。


「ご無事で何よりです」


 そう伝えると、アズール様は優しく微笑み、食事は恙なく進んだ。


 私達はその後一緒に外を歩くことにすると、太陽の光の降り注ぐ庭を二人で歩いた。


 いつもは大抵曇っているのだが、青空の下で歩く庭は格別美しく感じられた。


 そして私は、話をするならば今ではないかと思う。


 ただ、どう切り出すべきか。そう悩みながら庭を進み、私達はガゼボにて座ると、ローリーがお茶の準備をしてくれる。


 空気が澄んでいるように感じられ、お茶を口に運びながら私は青空を見上げた。


「綺麗ですね」


「あぁ……シャルロッテ嬢」


「はい」


 なんだろうかと思いアズール様を見つめると、アズール様はゆっくりと深呼吸をしてから、言った。


「この地が……不毛の大地ではなくても、ここにいてくれるか?」


「え?」


 突然の言葉に私が驚くと、アズール様は少し顔を歪ませた。


 初めて見るその表情に内心で驚きながら私はハッとして尋ねた。


「あの、もしや父から何か聞いているのですか?」


 私の言葉にアズール様は小さくうなずくと、言いにくそうに呟く。


「マロー公爵に、何故我が国に嫁がせたいのかと尋ねた時、シャルロッテ嬢が我が国のような土地……つまり不毛の大地に嫁ぎたいと言っているとの話を聞いたのだ」


 あの時は傷心だからだったとはいえ、不毛の大地などと失礼な言葉を使ってしまっていたということに私は慌てて謝罪した。


「申し訳ございません。不毛の大地などと……不愉快でしたよね。申し訳ありません」


 頭を下げると、アズール様は慌てた様子で言葉を続けた。


「違うのだ。いや、その、我が国が不毛の大地だということは、その自覚をしている。問題点はそこではないのだ。君が……不毛の大地である我が国に嫁ぎたいと言ったことについてだ」


「え?」


 首をかしげると、アズール様は言いにくそうに言葉を続けた。


「我が国は、近い将来不毛の大地ではなくなるかもしれない……」


「え?」


「実は、魔物の住む森に通じる渓谷にて、美しく花が咲くようになったのだ。調べてみれば一輪だけでなく、多数確認された。そして今日の天気だ。もしかしたら我が国は、これから不毛の大地ではなくなるかもしれない」


 それは私のせいかもしれませんとは言えず、私が黙っていると、アズール様は私の両手を優しく握り、そして真っすぐにこちらを見つめて言った。


「俺は、君が私の婚約者となってくれると決まった時、誰よりも愛し大切にしようと誓った。それは、大国から来てくれる君に感謝をしたからというのもあるが……その……君を一目見た時に、心を奪われたからでも……ある」


 真っすぐに告げられる言葉を聞きながら、心臓が次第にうるさくなっていくのを感じる。


「だから、すぐにとはいかなくても、昔の恋心を君が忘れ、そして、この地で私のことを少しでも好きだと思ってくれたら、それだけで俺は幸せだ。だが……そもそも君は不毛の大地を求めて俺の所に来た。ここが不毛の大地でなければ……君は……お願いだシャルロッテ嬢。ここは君の望む土地ではなくなるかもしれないが、絶対に君を幸せにする。だから、ここにいてくれないか」


 焦ったように、アズール様はそう言葉にすると、早口で言い切ったからか、息が切れている様子である。


 私は早口で告げられたその言葉に、じわじわと熱を感じながら、はくはくと魚のように口を開けては閉じてを繰り返した後、やっと言葉を紡ぐことが出来た。


「私は……ここに、いたいです。アズール様がいていいというのであれば、いさせてください」


「シャルロッテ嬢!」


「でも」


「え?」


 瞳を輝かせたアズール様に、私は一度待ったをかける。


「私のことを聞いてから、決めてください。……この国にもかかわることです」


 ずっと秘密にし続けてきた私の秘密。


 セオドア様に対しては、話そうと思ったことがなぜかなかった。きっと、私は分かっていたのだ。


 セオドア様は私を守ってはくれないということを。私と共に苦難を乗り越えてはくれないだろうということを。


 でも、アズール様には正直に話したい。


 不安はあった。けれど、私はアズール様ならばきっと大丈夫だとそう思えた。


私は勇気を振り絞って、口を開いた。



お日様がぽっかぽかの日は、日向ぼっこしながらお菓子を食べて、そのままごろんとして、まどろんでいたいです。はい。理想ですね。現実は忙しすぎて……(*´ω`*)

まぁでも、たまにはいいんではないですかね。もう、なーんにもしないで、うふふって!

4月1日日間1位取ることが出来ました! 読んでくださりありがとうございます!

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