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感情が天候に反映される特殊能力持ち令嬢は婚約解消されたので不毛の大地へ嫁ぎたい ~魔物を薙ぎ倒す国王陛下に溺愛されて幸せです~  作者: かのん


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16話


 幼い頃の夢を見る。


 母と一緒に部屋でお気に入りの香水を振り、その後手を繋いで庭へと散歩に出かける。


 暖かな春の日差しと、花達の香りが庭には広がっていた。


「ねぇお母様。どうして私とお母様は、泣いたり怒ったりしてはいけないの?」


 昔からずっと、繰り返し母からは感情を制御する方法を教えられて育ってきていた。


 幼いながらにずっと疑問はありそう尋ねると母は困ったように微笑みを浮かべた。


「お母様は、シャルロッテのお父様という絶対に守ってくれる人がいるから大丈夫だけれどね、シャルロッテにはまだシャルロッテを絶対に守ってくれる人がいないでしょう?」


「え? お父様は?」


「うーん。お父様は守ってくれるけれど、ずっと守れるわけではないのよ」


「……うーん。結婚する未来の旦那様ってこと?」


「えっと、まぁ、そうね」


「それならいないなぁ」


 私がそう答えるとお母様はふんわりと微笑んで私の頭を撫でながら言った。


「貴方は私よりも遥かに能力が高いから、だからこそ、貴方をしっかりと守ってくれる人がいなければならないの。そういう人が現れない限りは、貴方の能力を知られないようにしなくては危ないのよ」


「危ない?」


 お母様は悲しそうに目を伏せた。


「えぇ。この能力は、欲しいという人間がいるのよ。そういう人達は、こちらの感情など無視してしまうから、だから、そういう悪い人達に気付かれないようにしなくてはね」


「もし気づかれちゃったら?」


「大丈夫。シャルロッテにはきっと素敵な王子様が現れて、ずっと守ってくれるわ。もしそういう人に出会えたら、素直に自分の能力のことを告げて、そして共に協力しながら困難を乗り越えていくのよ?」


「守ってもらうのではないの?」


「うふふ。だって最近のお姫様は守られるだけじゃつまらないでしょう?」


 いたずらげにお母様はウィンクをして笑う。なんだか言っていることが違うななんてことを子どもながらに思っていると、水が足りていないのか元気のない花を見て、空に向かってお母様が祈りを捧げた。


 すると、霧雨が一瞬だけ優しく振り、地上を潤す。


 花は一瞬で、生き生きとよみがえる。


「すごい!」


「私達の能力は天に愛されているの。だからね、こうして祈れば応えてくれるのよ。でも、これは内緒。とっておきの秘密よ」


 お母様の言葉に、私は首を傾げた。


「なら、どうして私達の感情で、天気が変わっちゃうの?」


 困ったようにお母様は眉を寄せる。


「どうしてかしらねぇ。それが分かったら、お母様も貴方の為に何かしてあげられるのにね」


「うーん……わからないことがいっぱいあるのね」


「えぇ。この世界にはたくさんわからないことがある。でも確かなことは、貴方を世界で一番大切にしてくれる人が絶対にいるってこと。もし見つけたら、その人を信じてね」


「現れると、いいなぁ」


 優しい風が吹き抜けていく。それからしばらくして母が突然病気で亡くなった。


 それがショックで、私は今までその記憶を全て忘れてしまっていたのだと思う。


 瞼を開けると、私の瞳から涙が一筋零れ落ちていく。


「お母様……」


 窓の外を見ると、雨がポツリポツリと降り始めていた。


 何故突然思い出したのだろうか。そう思い、胸に手を当てた私は、今まで自分の中にはなかった感情が芽生え始めたからなのかもしれないと思い至る。


「世界で一番大切にしてくれる……人」


 アズール様の笑った顔が脳裏に浮かび、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。


 アズール様は私に対していつも優しく親切であった。


 困ったことはないか。


 体調は崩していないか。


 食事は口に合うか。


 見た目は屈強で寡黙そうなのに、思いの外おしゃべりで明るくて、それでいて心配性な人。


 一つ一つの気遣いが私は心をくすぐられているようであった。


 そして、アズール様は私の何気ない仕草一つで、変化を感じ取ってくれる人だった。


 少し肌寒いなと思ったらひざ掛けを用意してきてくれたり、咳を少ししただけですごく心配されたりした。


 本当に優しい人なのだ。


 そして、私は婚約者となりいずれアズール様と結婚をする。


 セオドア様の時には毎日が不安で仕方がなかったけれど、アズール様との毎日はいつも幸せの連続で心が温かくなることばかりだ。


 だからこそ、アズール様に誠実でいたいと思うようになった。


「お母様、私、アズール様に自分の能力について話してみようと思います」


 胸に手を当てて私はそう呟き、そして顔をあげた。


「雨よ、もう少し、乾いた大地を潤してください」


 手を合わせて祈りを捧げると、雨は優しく降り続けた。


 自分の能力について、私は少しずつ理解し始めていた。今までは抑えつけるばかりであったからこそ理解できていなかったのだ。


 雨を見つめながら、私は決意した。


「アズール様に……話をしよう」


 昨日の夜あれほどに悩んでいたというのに、私は今とてもすっきりとしていた。


 ただ、アズール様の前で寝落ちしてしまっていたことについては恥ずかしくて、朝会ったらまず何の話をしようかと、頭を悩ませたのであった。


 ただ、その日は結局アズール様は魔物の警備から帰って来ることが出来ずに、私は一人で過ごすことになった。


 その為やる気は空回りしてしまい、明日こそはと意気込んだのであった。



曇りが続くと片頭痛が酷いです(/ω\)

誰か天候を操って、片頭痛を消してくれませんかね。

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