第88話:浮気の気配を感じた気がしただけ
「そろそろ帰るー?」
「流石に尊花さん待った方がいいかも」
時間はすぎて放課後。
比較的早い時間帯だし、今日これからどこかへ遊びに行くというのも悪くない。
3人の初デート。恋人としては初めてだから、なんか嬉しみ深い。
とは言え尊花さんは委員長としてのお仕事がまだ残っているみたいで、離席なう。
わたしたちは教室に残って、こうしてだべっているわけだ。
「これからどうしよっかー。秋服とか見に行くー?」
「……秋、服?!」
なにその女子高生みたいな取捨選択は!!
あ、そうだった。わたし女子高生だったわ。
「意外そうな顔してるー。美鈴さん、本当にファッションには無頓着だよねー」
「まー。着れればいいかなーとは思ってますね」
元アイドルとしてではない。これはもう転生前からの性格だからしょうがない。
「何だオマエら、どっか行くのか?」
「んー? おー、鈴鹿さーん!」
「おうおうおう! みんなの鈴鹿さんだぞー」
両手をパタパタさせて、久々に会う友だちと交流会。
なんというか、最近悪い子まゆさんしか見てこなかったから、こういうゆるゆる~な感じのまゆさんを見るのが逆に新鮮に見える。
「で、どっか行くのか?」
「その予定ですね。まだどこに行くとかは決めてないですけど」
「ほーん。まぁ今なら秋冬のコスメとか買いに行くのも……」
「こす、め……?」
それは小娘の略称だったりします?
「この様子。まゆは夏休みどっかに連れてったか?」
「ん? んー、花火大会ぐらいかなー」
「つまり、女としての感性を1学期に置いてきたな」
「美鈴さんは元からこんな感じだったけどー……」
まゆさんの目が光り始めた。
あー。またなんかされるんだなわたし。主にファッション系で。
「響ねーさんも連れて行くか。しゃーねーけど!」
「だねー。もちろん美鈴さんもだよ!」
「ですよねー」
分かってた。わたしが出先で何かされるんじゃないか、というのは。
興味が無いわけじゃないけど、面倒くさいから制服のままでいいか。で結構通してたし、持ってた服はほぼゴスロリ物。普通のコーデも普通にほしいよ……。
「早速行こーぜー!」
「待ってー。いま、尊花さん待ちなのー」
「なるほどなぁ。……ん?」
鈴鹿さんがこちらを見た。
あ、そういえばこの人に相談してましたね、告白のこと!
途端に気まずくなってきた。冷や汗がドバドバ。なんか、怖いんですけど。
「ふぅん……。ま、アタシも聞きたかった話が、ちょーーーーーーーーーど、出来たしな」
椅子を引いてそのまま座る。
完全にこれ、話すまで帰れませんってやつだ。
別に嫌ってわけじゃないし、鈴鹿さんはそっちの方面にも明るい方。
話しても問題はないと思う。両方選びました、っていうのは除いてね。
「で、美鈴は結局どっちを選んだんだよ」
「うわ、直球で来ますね……」
「んー、どっちって?」
「……これは、話していいやつか?」
できれば話さないでもらえると嬉しいなー、なんて思うんですけど。えへへ……。
だが察しのいいまゆさんのことである。
お互いの顔を見比べてから、探るように次の言葉を口にした。
「まゆさんがいると、そんなに気まずい話?」
「えっと、なんと言いますか……」
気まずいっていうか、あなた本人の話なんですけどぉ!!!
「夏休み前はそんな話してなかったし、夏休み中どこかで会ってた?」
「ま、まぁな! な、美鈴!!」
「う、うん! 喫茶店でちょっとお茶してたんだぁ!」
「ふぅーん……」
な、なんだろう。この浮気現場を探られている感じは。
わ、わたしには尊花さんとまゆさんがいるし、鈴鹿さんには万葉さんがいるし。そんなそんな。ねぇ?
別にやましいことはしていないけれど、まゆさんの視線が突き刺さって怖い……。
「そういえば、美鈴さん。1回友だちとお茶してくるーって、出かけた日があったよね」
「ぎ、ぎくーーーーーーーー!!!!」
なんでそれを覚えてるんですか?!
た、確かに。告白の翌日に出かけるって言って、しょんぼりとした顔を覚えているけど、それはそれだよ。うん。本当にやましいことなんてしてませんし。
「美鈴さんは基本的に引きこもりなんだー。夏休みもぐーたらしてたし」
「え、えぇ。まぁ……」
「そんななのに、肝心の日の次の日に出かけてるから、珍しいなーって思ってたの」
「は、はい……」
どうしよう。証言のすべてが1つに集約しているような感覚。
まゆさん、弁護士になれますよ。法律系の勉強をしましょう。
「はぁ……。アタシ逃げるわ」
「へ?」
そう言って「空気を読んだ」鈴鹿さんがすかさずこう話す。
「美鈴がアタシに尊花とまゆに告られたんだけど、って自慢されてな?」
「あぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!」
「むぅ。そうだと思ったよー」
責任の100割がわたしに言っているような言い方なんですけど!!
まぁ、鈴鹿さんにぶっちゃけたのは確かにそうです、はい……。
「今の、浮気調査ごっこみたいで、楽しかったよ!」
「アタシはめっちゃ心臓に悪かったけどな」
「わたしもです……」
そんな遊び、マジでも今後二度とやらないように気をつけなきゃ。
まゆさんが怒ったら怖いのは花火大会のときで実証済みだから。
「で、結局どっちと付き合うことにしたんだよ」
「えーっと……。どっちもです」
「……は?」
「どっちも……」
鈴鹿さんもその選択はないと笑っていたけれど、まさか本当にその通りになってしまったんですよね。
目が点になってる鈴鹿さんを見て、わたしは頭を抱えるのだった。
宇宙猫鈴鹿




