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第82話:あるべき家に帰ろう!

 立てない。


「立てない」


 立てねぇええええええええええええええええええ!!!!!

 あぁ、なんということか!

 あんなにかっこいいことを言ったはずなのに、まゆさんのお母様がいなくなってから腰が抜けてしまって、動けなくなるなんてぇえええええ!!!!


 あれ、でも気絶しないよりはマシかな?

 んなわけねぇ!!

 なまじ意識があるから、気まずいんだよちくしょう!!!


「あはは、なんというか……」

「美鈴ちゃんらしいね」

「どうしてわたしはシリアスでかっこいい大人になれないんだ……うぅ……」


 生前も、確かにそんなことを考えていた気がする。

 特に振られた後。もっと空気の読めるいい女になれたらなー、とか思ってたのに……。


 この有様である。


「仕方ないなー! この委員長に任せておきなさい!」

「まゆさんもいるんだから頼ってよー」

「むぅ……」


 ちょっとしたパチパチ感? というかいがみ合いがあった気がしたが、多分気のせいだと思う。

 だって次に行った行動が、わたしの両肩を2人で支えるというものだったから。

 ……え、宇宙人に連れて行かれる子供の図?


「わたし誘拐されてません?」

「立てない子がワガママ言うんじゃありません!」

「そうだよー、まゆのヒーローさん」


 尊花さん、割と厳し目に言ってくれるじゃないか!

 見てくださいよ、まゆさんがわたしのことヒーローって!

 あ、でも尊花さんの話には同意してたか。あはは。


「それにいつも慣れてるし」

「え?」

「途中で気絶した時に、誰が安全なところまで持っていってると思う?」

「…………尊花さん?」

「せいかいー」


 うわ、わたしいっつも推しに担がれながら保健室行ってたんだ。

 それはなんというか。恥ずかしすぎるだろ。さっきのかっこいいこととか、全部台無しって感じ。思わず泣きそうだ。うぅ……。


「まぁ、今日は意識があるからよかったけど」

「それだけわたしが成長したんでしょうか?」

「少なくとも、夏休みが明けたらジョギングしよう! かつてのアイドル体力を取り戻すために!」


 うへぇ……。

 ま、まぁ。それもまた一理あると言いますか。

 実際胴回りとか二の腕周りがやや、本当に少しだけ目をそらしたくなるレベルなんだけど。それもいずれは解消しなきゃ。


「ねぇ、尊花さん」

「なに?」

「尊花さんは。もしわたしが、尊花さんの知っている『相沢美鈴』じゃなかったら、どう思います?」

「なにそれ、トンチ?」

「そうです、トンチです!!」


 実際はもっと複雑な感情から来ているものなんですけどね。

 ふと思ったことがあった。お母さんが気づいているように、尊花さんもまた何かを感づいているのではないだろうか、って。

 いずれはまゆさんにも、尊花さんにだってこの秘密は言うつもりだ。

 その時が『相沢美鈴』の命日だとも思う。


 勝手に乗り移ったことに、謝罪をして。懺悔をして。そしたら晴れて墓参りなんてことをしたい。

 それがせめてもの死者に対する手向けでもあるはずだから。


 全部カミサマが悪いんですけどね、まぁ。


「んー……。タイミングによるかな?」

「へ?」

「あ、いや。うん。高校入った時だったらいいなー、って」

「そ、そうですか……」


 それって、わたしの時なんですけど。その時がいいって、なんかむず痒いな。


「いずれにしても、私の美鈴ちゃんは光だから!」

「尊花さんも、恥ずかしいこと言うねー」

「こんなときだからね。この際まゆちゃんも全部言っちゃいなよ」


 まぁ、まゆさんはとてつもなく言いたいことがたくさんあるだろう。

 まず最初に。まゆさんはそう前置きを置くと、静かに首を沈めた。


「ごめんなさい。変に動転して、絶縁寸前まで行こうとして」

「大丈夫ですよ。ちょっと奥の手を切っただけですし」

「それが手痛いんじゃないの?!」


 はっはっは。と笑ってみせる。

 正直、この2人とお母さんになら言ってもいいと思ってる。

 もし世界的に言っちゃいけない秘密なのだとしたら困るけど、あの適当なカミサマに限ってそんなことあるわけがない。

 だからさほど手痛くもなんともないのだ。


「それから、ありがとう。お母さんと、また話し合う機会ができそうだから」

「うん。その時は超悪い子のまゆさんじゃなくて、良いと悪いを混ぜたまゆさんでね!」

「あはは、難しいなー」


 結局、極端なのはよくないんだよ。

 悪い子になるのだって、午後に朝マック食べるぐらいでいい。

 そのくらいの日常の些細なワルぐらいで、いいのだ。


「でも、まゆさんは意外だったなー。美鈴さんがあんな風に言うなんて」

「私も意外だったよ! 割と感情で動くタイプだよね、美鈴ちゃん!」

「ま、まぁ……。なんと言いますか……」


 あの時、確かに激情のままに口にしたわたしの秘密。

 でも秘密なんかよりも尊花さんにもまゆさんにも絶対してほしくないことがあった。


「まゆさんが後悔して、永遠悩むのなんて似合わないし。まゆさんにはゆるゆると笑顔でいてほしいんです!」


 …………。あれ。わたし、またなんかやっちゃいました?


「「そういうところだよ!」」

「え?!」

「気づいてないのも含めて、美鈴さんらしくてまゆさんも嬉しいよー」

「うん。相変わらずって感じで好き!」

「え。何がですかぁ?!!!!」


 わたしの両脇でクスクス笑っている2人の友だち。

 まぁ笑ってほしいから今日はいっぱい頑張ったわけで。

 まぁいっか。雨が晴れたあとの晴れやかな太陽のような気持ちになりながら、わたしは家まで運ばれるのだった。

もうちょっとだけ続くんじゃよ

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 いつか話さなければいけないこと。いつか話そうと思っていること。秘密を打ち明けるのは相当な勇気がいると思いますが、せめて身近な人たちにはちゃんと話したいと思っているのは好感…
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