第42話:サルでもわかる恋愛攻略本
お、思ったよりも乙女な考え方、というか……。
恋、かぁ……。
ぼんやりと思い返しても、高校の時の1回きりでまともな恋愛をしたことがない。
あとはアニメやゲームの中にいる二次元の男女を好きになったり、そういうのだけ。
目の前で頭から煙を出してショートしている鈴鹿さんほどのピュアな心を持ち合わせていない。
まぁ、男慣れしているようで実際攻められたら弱い人っていっぱいいるしね。創作の世界で学んだことです。
「心温まる話だったよー」
「嘘つけ、途中から美鈴に乗っかってオマエもアタシのこと弄りまくってたろ」
「あ、バレてたー?」
一瞬だけ黒いまゆさんが見え隠れした気がする。
でもそんな小悪魔なまゆさんも悪くない!
『美鈴さん、こんなの好きなんだー! ヘンタイさんだー』とかジト目で。
うわ、ちょっといいなぁ。と思ってしまった自分が申し訳なさすぎる。ごめんなさいまゆさん。まゆさんでイケない妄想しました、責任を取って腹を切らせていただく!
「でもそんなにかわいい反応する鈴鹿ちゃんも鈴鹿ちゃんだよ? 責任取って早く万葉くんとくっついちゃいなよ」
「尊花もずいぶんなことを言うなおい」
『美鈴ちゃん、こうなっちゃったセキニン。取って?』とか上目遣いで。
ぐおぉおおおおおおあぁあああああああああああああ!!!!!
罪悪感で胸が引き裂かれてしまいそうなほど卑猥で破廉恥極まりない妄想なんだ!?
うぅ、さっき2人に絡まれた腕にまだ柔らかい感触が残ってるから悪いんだ。わたしは悪くない。悪いのは2人……。
いや、悪いのはわたしだ!! そうやって逃げようとするの悪い子! ゲシゲシッ!
「美鈴ちゃん、1人で頭抱えて何してるの?」
「えっ……? 悪魔を祓ってるんです」
「え?」
あっ……。
「ち、違うんです! 響さんがこう、いい感じに恋愛攻略本を書けるようにと!!」
「きみたちが黙ってくれれば、もっと早く仕上がると思うけどなぁ?」
「す、すみません……」
しまった。いまは恋愛攻略本、もとい鈴鹿さんのための台本を響さんに書いてもらってるんだ。
大それたものではないとは言っても、持ってきたタイポを高速でタイピングしている姿を見ると実際に小説家なんだなと興奮する。
うわ、目の前に小説家がいる!!(大事なので2回目)
「まっ! 恋愛経験もない癖に告白の台本なんて書けるわけないだろうけどな!」
「書けたぞ」
「早くね?!」
驚きのスピード。書き始めてからだいたい十数分ぐらいだろうか。
まゆさんも尊花さんも同じく目をまんまるにして驚いている。小説家ってみんなこんなに抽出の速度早いのか。
「バカでも分かるようにした」
「バカって言うな!」
いつもの常套句を口にしながら、自分のそばへとぶんどってきたタイポの画面を見る。
えーっと、なになに……?
・お祭りを楽しむ
・堪能する
・偶然帰りが一緒になる
・2人っきりの路地で告白
おわり
「んだこのテキトーな台本?!!」
4行程度で終わる台本って聞いたことないんですけど。
これ9割アドリブでは? 肝心の告白文句とか何も書いてないし。
「だからバカにも分かるようにしたんだよ」
「バカをバカにしすぎだろ!!!!」
「キンキンうるさいなぁ。これぐらいのことも出来ないんじゃこの先が思いやられるってことさ」
口を鋭くしながら、それでも響さんの言っている通りだと思って引いている感じだ。
鈴鹿さんの心の中では、おそらく彼女への文句が50個100個あることだろう。
でも実際その通りなのかもしれない。
この程度のことが出来なければ、告白したところで恋人らしいことなんてできない。
キスすることはおろか、手をつなぐことでさえ。
いつも台本に頼るようならば、先はないと言っているのかもしれない。わたしが考えている予想は9割妄想ですが。
きっと面倒くさかったんだろうなぁ。
「どうせここにいる3人は実際に現地に行くのだから、問題ないだろうさ」
「えっと、響さんは?」
「ぼくは木陰で涼んでいるさ。人混みは大嫌いだからね」
うわ、人間嫌いそう。
わたしもそう。というか人混みは攻略できないわけじゃないけど、エネルギーをたくさん使うから苦手なだけ。
これでもだいぶ改善された方だから、今世の高校生活には感謝しかない。
「分かります。ヒトコワイ」
「そういう仲間だとは思ったよ」
いま、確実にシンパシーが起きている!
目と目が合ったときにデータリンクして、相互理解を果たしたんだ!
ありがとう、陰キャの神様。わたし、仲間ができましたよ!
「大丈夫だよ、美鈴ちゃん! 私がちゃんと守るから!」
「そうだよー。このまゆさんに任せておきなさーい!」
「2人はわたしのお母さんですか?!」
この過保護さ加減は相変わらずだった。
なんでこの2人、わたしにこんなに甘いの?!
そんなに頼りないですか!!
「美鈴さん、小さいからすぐどこかに連れ去られそうだから」
「おどおどしてるから、怪しいおじさんとかに連れ去られちゃうかも」
「わたしは子供か何かなんですか」
「だって元アイドルだし!」
ぐうの音も出ない。
そういう興味がある人が見たら、わたしと響さんの見た目って結構少女してるよ。
こういうとき前世の普通の体型が羨ましくなる。ボンキュッボンではなかったけれど、それなりに胸もあったし、お尻だってそれなりに出てたよ。お腹も出てたけど……。
お腹だけ引き継がれた今世の身体はすばしっこく身をかがめるけれど、運動しないと徐々に脂肪はたまっていくわけでして……。
ちびデブにはなりたくないなぁ……。
「分かりました! お祭りでいいとこ見せましょう!!!」
「大丈夫?」「できる?」
「で、できますよ!!!」
お母さん(同級生2人)に見守られながら、わたしは決意する。
過保護な2人を絶対に負かしてやる。あわよくば尊敬させて、さすが美鈴さん!!!! 何て言われてやるんだ!!!
決意を胸に、とりあえず人混みを克服することをまず最初に考えることにした。




