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第37話:決戦日(2日目)の朝

 決戦の日(2日目)


 いや、だってさぁ……。忙しそうなんだもんいつも。

 いっぱい構ってくれるって言われたとしても、頼られる回数が減るわけではない。

 そこには「ひょっとしたら」「もしかしたら」の迷惑があるのかなって考えたら、躊躇してしまうのだ。

 くっ、これが鈴鹿さんを煽った末路だとしたら、あまりにも残酷すぎる。

 マジすんませんしたー!


「ガチ凹み中だねー」

「あはは、自分が情けないです!」


 待ち合わせしていたまゆさんと、一緒に登校している時間は実に天国だ。

 だけどその先に待っているのは、尊花さんをお祭りに誘わなければいけないという地獄。

 天国と地獄。なんだっけ。そういう急げ! みたいな曲あったよね。


「美鈴さんは考えすぎなだけだと思うけどなー」

「で、でも……。もし万が一迷惑だとか思われたら……」


 分かっている。これは全部杞憂だということを。

 でも考えずにはいられない。人間の感情なんて他人の目からは100%伝わるわけじゃないから。

 わたしだってそう。いや、わたしだからなのかも。

 まゆさんにも、もちろん尊花さんにも。大切な2人にわたしは転生している、という隠し事をしている。それが考えを阻害する。


「美鈴さん、考えしぃさんだもんねー。まゆさんが誘っちゃおうか?」

「え?」


 そ、それは願ってもないこと。

 過程はどうであれ、結果が伴っているのであれば問題なく鈴鹿さんとの勝負にも勝てる。

 ……でも、それでいいのか?


 ――いいや、よくない。


 首を横に振って、強く紬いだ唇を開く。

 その声に決意を乗せて。


「わたしが言います。なんというか、こういうことは自分でしなきゃいけない気がして」


 大げさかもしれない。たかが人を誘うぐらいで、って。

 でもこれはわたしの物語だ。大げさでも、劇中の山が多ければ多いほどわたしが飽きない。


「……っ! ……美鈴さん、まゆさんはいま感動してるよー!」

「ほえ?」


 そんなまゆさんは、見た目のふわふわ具合から想像がつかないほどの力強さで、わたしの両肩をガシッと掴む。

 彼女の目にはうっすら涙が浮かび上がっていた。

 ……え?! わたしそんなに頼りなかった?!


「我が子の成長はいつだって感動物だよ……!」

「そんな大げさな」

「大げさなんかじゃないよー! 美鈴さんがちゃんと考えて出したことなら、まゆさんは嬉しいの!」


 そして逃げられない状況でのゆるふわで激カワの優しい笑み!

 ぐはっ! 至近距離、ゼロ距離笑顔ショットガンはマジダメだって! かわいすぎてお辛い……。


「なんで苦い顔してるの? そんなに嫌だった?」

「いえいえいえいえいえいえいえ!!!!! そんなんじゃなくてですね! なんと言いますか、その……」


 全力で首を横に振る。

 わたしごときがまゆさんに意見なんておこがましいのだから。

 もう逃れられない状況だし、ぶっちゃけるしかないか……。


「まゆさんの笑顔が、素敵だったあまりに……」


 うぅ、恥ずかしい。

 陰キャにこういう照れるようなことを言わせないでほしい。恥ずか死する。

 陽キャだったらこういうのうまくやってのけるんだろうか。


「……そ、そっかー。えへへ、嬉しいなー」


 あー! その照れ隠しみたいなはにかんだ笑顔。

 そういうのが素敵だって言ってるんだよ! 反省しろ!


 というか、登校中に何してるんだわたしたちは。

 こんな辱めを誰かに見られた日には、2度目の死を迎えることだろう。


「い、行きましょうか!」

「う、うん! そーだねー!」


 ありがとうまゆさん。あなたの陽キャ的空気読みで全てが救われる……!

 まぁ、気まずいことには変わりないので、その後はぎこちない会話ばかりを続けて学校に来ることとなった。

 もうちょっとわたしのコミュ力が高ければ、気まずくならずにスパッと思ったことを口にできたのだろうか。

 どうも、過去に縛られるタイプの女。相沢美鈴です。


「おはよー! 美鈴ちゃん、まゆちゃん!」

「おはようございます」

「おはよー、尊花さん!」


 さて、待ち構えていたように。というのは流石に自意識過剰かも。

 いつものように委員長の仕事を終えた尊花さんが、わたしたちに挨拶する。

 いやぁ、今日もかわいいなぁ。やっぱり最推しはちげーぜ。


「で?!」

「「ん?」」


 あれ、いま会話取りそこねた?

 何かを期待するような眼差しを向ける尊花さん。あれ、何かありました?

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