第6話 原因
誤字報告ありがとうございました。
そういうことだったのか……。俺がなりたいくらい好きって答えたから、次の日から変化が始まったんだ。
「というか、こんなことどういう原理で起きてるんだ?だって可笑しいだろ?髪が変わって背もいきなり縮んで。魔法なんて現実にはないけど、魔法って言わないと説明がつかないくらいだ」
「確かにこれは魔法なのかも知れないわね……でもこうなった原因は分かった。けど……」
「けど?」
「私たちが協力できるのはその人を探してワンチャン元の姿に戻してもらうくらいだけど、その子が秋葉原に毎日通ってら訳ではあるまいし、この広い日本中を無闇に探すわけにも行かないから、今できることは貴方の変化に伴って助けてあげることくらいかしら」
遊王子は俺の髪を結びながら言った。そして背中をポンと叩いた。
「はい、これで終わり。後はウィッグをつけてと。……うん、大丈夫ね」
「どうも」
お礼をいい洗面所に行って姿を確認してみる。うん、どこからどう見ても黒髪だ。しかし、中性的な顔と言われていた俺の顔が少し女の子っぽくなった気がするぞ。
「湊くん、可愛くなったわね」
「う、うっせー」
「うふふっ、じゃあ学校行くわよ、外で待ってるから早く部屋から鞄取ってきてね」
「分かったから、早よでてけ!」
「しょうがないわね」
遊王子は少しにやけながら洗面所から出ていった。
「ふぅ……」
体温が高くなったのか、少し紅く火照った頬を冷ましながら部屋へ鞄を取りに行く。
玄関に行き、いつも履いているローファーを履く。
「うっ、ぶかぶかだ」
流石に歩きづらい。どうしよう。
代わりになる靴はないだろうか?玄関の靴入れを覗く。うーん、他の自分の靴もどうせぶかぶかだし、申し訳ないが姉さんのを借りるしかないか。そういえば高校の時に使ってたローファーが残ってたはず。
「あった」
試しに履いて歩いてみる。うん、一回一回脱げることもないし、ちょうど良いかも知れない。
「よし、行くか」
今一度玄関の鏡でウィッグを確認して問題ないことを確認して外に出た。
外に出ると遊王子が壁に寄りかかってスマホを弄りながら待っていた。
「今日は本じゃないのな」
玄関の鍵を閉めながら聞くと、遊王子が呆れたように話し始めた。
「私だってスマホくらい弄るわよ。といういか、別に初めて見たわけではないでしょ」
「ご、ごめん」
「別に謝る事じゃないけど。でも最近だとスマホでも無料で読める小説とかあるからそれとか読んだりするのが好きなのよ」
「ほー、そうなのか」
「もしかしたら貴方と同じ処遇の物語の主人公がいるかもしれないわね」
「そうかもしれないな」
俺たちは学校への道を歩き始めた。
学校まで半ばというところまで来ると、少しずつ自分と同じ制服を着た人の通りが多くなってきた。
「なあ遊王子、俺の姿変じゃないか?なんかちょくちょく視線を感じるんだが」
「そうかしら?視線なんていつものことよ」
「俺にとってはいつものことじゃないんだよ」
「そうね……」
遊王子は俺を上から下へひと通り見てから口を開いた。
「強いて言うなら服がぶかぶかなのと、少し男装してる女子っぽく見えなくもないかしら?」
「それは少しじゃなくて結構まずいやつ!」
「でも髪も長くて元から中性的な顔だった湊くんが、更に女の子っぽい顔になっちゃったらそれはもう言い逃れは出来ないわ」
「確かにそうかもしれん……しれないが!!」
「因み湊くん、大きな声出してたからもっと視線浴びてるわよ」
「ぐぬぬぬっ!!」
ちょっと恥ずかしい。あと俺の男としての尊厳がなくなっていく気がする。いや、なくなってるんだ。俺たちの考えが正しければいずれ俺のアレとかも無くなったりするのかもしれない。
そして女の子の身体に変化してしまうのだろう。この変化がどこまで続くのかは分からないけど、こればかりは神様、いや、神様にもわからないのかもしれない。
ならば変化の途中である今を俺なりに楽しもう。
「湊くん、早く行くわよ」
「おお、分かってる」
俺は少し先に歩いている遊王子を追いかけた。