第4話 染めた結果……
いいね機能が出来たの知らんかった……
「あのー、一応聞いときますけど、黒に戻してくれたんですよね?」
俺は念の為に戸惑いながら梨沙さんに問いかけた。
「え、ええ、そのはずなんだけど……私がミスしたかなと思って色々確認したけど、特にミスなんてしてないし……」
梨沙さんも俺と同じくらい動揺しているみたいだった。黒に戻るはずだった髪色が全く戻っていないのだ。戸惑いは隠せまい。
二人であたふたしていると、その様子に気付いたのか、遊王子と瑛太が椅子から腰をあげて俺たちの様子を伺いにきた。椅子に座っていると丁度俺たちを挟む雑誌やらを置いている本棚が死角になるため、状況が理解できてなかったようだ。
つまり、語弊が生まれるということだ。
「湊くんが大きい声出したと思って見に来たらまだ駄々こねて黒髪に戻してなかったの?それなら私もう帰るわよ?」
「いや、違うって!黒に戻してもらったはずなんだけどダメだったんだって、そうですよね、梨沙さん?」
「ええ、湊くんの言う通り黒髪に戻したはずなんだけどダメだったのよ。私もわけわからないから目の前の現実を目にして戸惑いを隠せないわ」
「そう……なのね。でもどうするの湊くん。この髪のままだと先生達から大目玉間違いなしよ?」
「確かにな、このままだと呼びだしは免れないしどうするんだ湊?」
「うーん?取り敢えず学校休む?」
「無理ね、卒業出来なくなるわよ」
「じゃあ、強行突破?」
「それでも結局湊くんが停学とか食らうわよ」
「うーん、どうすればいいんだ?」
全く解決策が思いつかない。
「梨沙さんは何か案がありますか?」
「うーん、正直厳しいけど、一つだけ方法は無くはないかな?まあ、やらないよりはいいかな、ちょっと待っててね」
梨沙さんは店の奥に入って何かを取ってすぐに戻ってきた。
「これなんだけど……」
「これは…黒い髪ですか?」
「そう、ウィッグなんだけど、私たち美容師とかはこういったウィッグとか使って切るのを練習したりするから。それようのウィッグ
が一つあったんだけど、これがあったらなんとかはなりそうかも?」
「つまり?」
「つまり、湊くんがこのウィッグを被れば何も罰を受けずに回避出来るかもってことですよね?」
「そう、一応彩架にはこのこと伝えとくからフォローしてもらって、そうすれば滅多なことがない限りわからないと思う」
そう言って試しにウィッグを俺の頭にのせてくれた。
「確かに、毛先とかは見えちゃってるけど、髪さえ結んでれば大丈夫そう」
「うん、いい感じ」
俺も鏡で確認してみたが、結構いい感じだ。この夕方の時間帯であれば、完璧な黒髪に見えるかもしれない。
「そのウィッグはプレゼントするわね」
「えっ、いいんですか?」
「ええ、彩架にツケとくから」
「あはははは……」
後でなんか言われそう。俺だけ宿題難しくなるなんてことはないよな?
俺たちが美容室を出ようとした時には既に日が沈みかけていた。
梨沙さんとはお別れである。
「じゃあまた機会があればうちに来てね」
「はい、ありがとうございます」
「湊くん、今度会う時には髪が戻ってるといいわね」
「はい、ではこれで」
俺達は一礼して梨沙さんの美容室を後にした。
「いやー、この暗さだと本当に黒髪にしか見えないわー」
「確かにそうね。そういえば湊くん、明日朝起きて髪結んでウィッグつけられる?」
「うぐっ、無理です……」
「はぁ……仕方ないわね。別に貴方の家遠くないし、私が朝行ってやったあげるわ」
「感謝します」
「それよりも湊くん、忘れてないわよね?」
「えっ、何を?」
「私たちに奢るって約束したわよね?」
「は、はいっ!奢らせていただきます!!」
夕日で照らされている三人の影は、ファミレスへと向かったのだった。
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