第3話 美容室へ。
そして放課後。俺たち三人は揃って横山先生に紹介された美容室に向かっていた。しかしこの髪色は目立つのか、人と通りすがるたびに見られてしまう。
「はぁ……」
「やっぱり目立つなぁその髪型。俺も髪染めよっかな」
「やめとけ、お前が染めるともっとヤンキーぽくなるぞ」
「それもそうだな!」
瑛太は笑いながら俺の背中を叩いた。黒髪の今でさえヤンキーぽいのに瑛太が金髪にしたらそれはもうリアルヤンキーになってしまうだろうからな。でもそれくらい髪色や髪型はその人の印象に関わってくることがわかる。
ならこの髪型、髪色になった俺はどのように見えるのだろうか。
「なぁ、遊王子、この髪になってからの俺の印象は?」
「印象?貴方の印象なんてただのvtuberヲタクじゃない。でも……あえて変わったと言うのなら、ガチ恋系vtuberヲタクって感じかしらね」
「それはそうだ」
俺は笑って返事を返した。
信号を渡って左に曲がる。少し歩いて右手にあるちょっと細くなった道を真っ直ぐ歩いていく。
「ここを曲がったら直ぐだな」
その道を左に曲がり、少し進んだところにその美容室はあった。
早速入ってみると、中にはたぶん先生が言っていた友達?であろう二十代の女性が、床に落ちた髪を掃除しながら待っていてくれた。
「あ、いらっしゃいませー」
「あ、ども」
俺は小さく挨拶を返した。
「あのー、先生からの紹介できたんですけど……」
「先生?あー、彩架ね!聞いてるわよ、突然髪を染めたグレた子がいるって」
「いやー、別にグレてはないんですけどねー、あははー」
あのー、もう少し違う言い方で説明出来なかったですかね先生?
「後ろの二人はお連れさんかな?」
「そうです、この子が美容室初めてらしく、ついてきて欲しいと言われまして」
「そうなのねー、じゃあお連れさんはここに座っててもらってもいいかしら?」
「わかりましたー」
そう言って遊王子と瑛太は近くの椅子に腰を下ろした。そんな二人は既に俺への興味は無くなったのか、早速本を読み始めたり、スマホを弄り始める次第だ。まあ、待っている間は暇だから仕方ないか。
「それで、君の名前は?」
「湊です」
「湊くんかー、私は東雲 梨沙よ。梨沙って呼んでちょうだい。」
「梨沙さん?」
「うん、正解。じゃあ湊くん荷物は籠に入れてここに座ってもらえるかな?」
「あ、はい、分かりました」
俺は言われた通りに荷物を置いて鏡に映る自分を見ながらチェアに座った。
「一応聞いておくけど、今日は髪色戻すために色落としていくけど大丈夫?」
「はい、大丈夫ですけど……」
「それにしても綺麗な髪ね、染めてるのに全然傷んでないし、さらっさらだし。というか本当に染めた??」
髪を触られながら問われる。ちょっとくすぐったい。
「あの、実は染めてはいなくて」
「あ、やっぱり?」
「朝起きたらこうなっててまして」
「え、何それ、すごい不思議ね」
「そうなんですよ、自分でも分からなくて……確かなのはこれは地毛です」
「で、地毛ですって説明したけど、学校のルールとかなんとかで染めなきゃならないと」
「そういうことです」
「んー、最初は黒髪だったんだよね?」
「はい」
「うーん、やっぱり不思議だねー、まあ、取り敢えず黒に染めちゃうね」
「はい、お願いします」
そう言って作業を開始してくれた。そして時間が経って染め終わったはずなんだが、問題が発生した。
「俺の髪全く染まってないじゃん!?」
そう、俺の髪色は染める前と変わらずのままだったのだ。