第15話 これから。
「ほら、あったかいココアでも飲んで」
受け取ったカップに口をつけ、ズズゥとゆっくりココアを口に入れていく。さっきまで泣いていたから目元が真っ赤なままだ。少し遅れて姉も別で作っていたコーヒーをカップに注ぎ、席についた。
「どう?もう落ち着いた?」
「うん、もう大丈夫になった」
「それにしても随分可愛らしくなったわね、雫ちゃんだっけ?話は聞いたけど、未だ信じられない」
俺の頭を撫でながら呟いた。
「裕樹の身分証とかはそのままだから最悪なことにはならなくて良かったわ。けど、そうね……暫く学校は無理かなぁ」
確かにこの姿で学校に行っても、事情を話している遊王子たち以外は分かってくれないだろう。姿が一変しているだけならクラスでも目立たないほうの位置にいる俺ならあまり問題無かっただろう。しかし現在の俺は女性らしい丸み帯びた身体に、隠しきれない大きな胸が備わっていて、声も明らかに男ではない。性別も姿も明らかに違う俺を湊 裕樹と認める人は誰一人としていないだろう。追い出される、恐らくその一点だ。
「ということは俺ニートになったってことか」
「まあ、表向きは在籍してるからニートじゃないけどね」
苦笑いしながら椅子に腰を下ろした。そしてコーヒーを口に入れ、今度は打って変わって真剣な顔で話し始めた。
「今言った通り、いずれにしろどんな選択肢であれ暫くは学校に行かすことはできない。プラス裕樹をいずれ病院に連れて行くのは確定ね。それからじゃないと色々手続きも出来ないしね。学校に行けるようになるのはそれから。今から頑張れば二学期にはすぐ戻れると思うよ。裕樹はどうしたい?」
その方法だと間接的に元に戻る事を諦めたことになる。それでもいいのだろうか?でも、あの女の人に会って元に戻れる保証もない。ならいっそすぐにでも病院に行くべきだろうか?
俺はどうしたいのだろう。
悩んでいる俺を見て姉は首を振って呟いた。
「悩んでるなら今じゃないのかもしれない。この状況じゃないとできない事がもしかしたらあるのかもしれないしね。だから解決した時私に教えて欲しいかな?」
「……分かったよ姉さん」
頷いた俺を見て、姉は満足そうにして残りのコーヒーを飲み干した。
「よしっ、辛気臭い話はこれまでにして買い物行くわよ裕樹」
「えっ、いきなり?」
「当たり前でしょ。部屋も服も可愛らしくなってたけど、女の子にしてはまだまだ足りないかなぁ。それに」
「それに?」
姉に問うと「まあ、いいじゃない」と軽くあしらわれた。
「でももろ雫ちゃんの格好はファンにも普通の人にも騒がれちゃうから着替えてからかな。ほら、裕樹、行くわよ」
「え、あ、うん」
俺は姉の後ろをゆっくり追いかけた。




