第13話 最後の日4
お会計を済まし外に再び繰り出た俺たちは、立川の風景を見て楽しみながらゲームセンターに向かっていた。
人通りが多いからこの髪だと注目を浴びてしまうと懸念していたが、立川だからだろうか?たまに視線を感じるだけで、人混みに呑まれるとあまり気にならないらしい。
「というわけでやってきましたゲームセンター!」
申し訳程度の拍手が二人から湧きおこる。まあ、気にしないでおこう。
「それで、何からする?」
「先に湊くんのものでいいわよ、湊くんが誘ったんだから」
「いいのか?ではお言葉に甘えて」
瑛太も頷いてくれたので、早速雫ちゃんのぬいぐるみをゲットすることにしよう。
クレーンゲームの前に立ち、百円玉を投入する。
「おっ、結構いい位置にあるな」
「これならすぐ取れそうね」
「だな、任せてくれよ」
俺は自信満々にそう言い放つ。
そしてボタンを操作して狙いを定める。
「よし、上手く掴んだぞ」
「なかなかやるわね」
「当然よっ!」
アームに掴まれた雫ちゃんぬいぐるみは、そのまま落ちることなく無事に穴へと吸い込まれていく。
「本当にすぐに終わっちゃったわね、何回か失敗してからかうつもりだったのに」
「ひどいなっ、無事にすぐ取れたからいいけどさ……」
取り出し口から雫ちゃんのぬいぐるみを取り出し、景品用の袋を一枚もらってその中に入れていく。
「あれ、そういえばこの短い間に瑛太がいなくなってるぞ」
「本当ね、でもどうせ奥の方にいるわよ」
「違いない」
そしめ案の定瑛太は奥の方にあるゲームコーナーで品定めをしていた。
「何かいいゲームはあったか?」
「どれもいいゲームだけどやっぱりこのゾンビのやつだな。腕が鳴るぜ……!」
「あははっ。取り敢えずやってみるか?遊王子こういうのいけるか?」
「ええ、別に大丈夫だけど。湊くんはやらないの?俺はちょっと……あと後ろから声を出すのが好きなんだよ。な、だから頼む!」
「はぁ、しょうがないわね」
遊王子が渋々車に乗って銃を手に取る。中々様になっている。
「遊王子か、どうだ?キル数で負けた方がクレープ奢りで」
「魅力的な提案ね」
「決まりだな」
こうして二人のバトルが始まった。一応協力ゲーなんだけどね。
20分にも及ぶ長い死闘を繰り広げた二人は、ついにエンディングを迎えた。本来なら何回もコンテニューしなければ難しいと言われているものを、協力しながらなんとか乗り切っていた。極め付けは遊王子だ。
めちゃくちゃ美味かった。おそらくキル数で勝ったのも遊王子だろう。
瑛太もキル数では負けたものの、満足げに車から降りて背を伸ばしている。
「すごいな、ランキングにも載ったじゃん、というか、遊王子ゲーム上手かったんだな」
「まあね、姉がゲーム好きだから私もやらされてたから」
「分かる、上の人がいると一緒のやらされがちだよなぁ。俺も兄貴がサッカーやってたからやらされたし」
「確かに、瑛太めちゃくちゃ下手だったよなぁ」
「いや、あれは俺に余る競技だったわ」
「確かに」
瑛太の思い出し笑いに俺もつられて笑ってしまう。
「まあ、俺の奢りは後でとして、他にやりたいゲームあるか?俺はあのゲームやってみたいんだが」
「良さそう、俺もあっちのゲームを……」
こうして俺たちはそのまま1時間弱ゲームセンターに居座った。それくらいにはクレープが食べたいと思うくらいの小腹は空いていた。三人で食べたクレープの味はとても甘くていつもよりも美味しく感じた。
帰り道。「またな」いつもの挨拶をして瑛太と別れる。必然的に遊王子と二人きりになった。遊王子は俺を気遣ってくれたのか、家の近くまで着いてきてくれた。
「あの、ゆ、裕樹くん」
「なんだ急に名前呼びなんかして」
「な、なんでもないわよ」
「そうか、じゃあ遊王子、俺はこれで」
「え、うん」
俺は早足で家に駆け込んだ。
鍵をかけ、重い足取りで部屋へ戻る。その瞬間俺の涙は止まらなくなった。限界に近いのだ。立っているのも。泣いているのも辛い。これが最後の悪足掻き。
そう、これで湊 裕樹とはさよならだ。
俺は自分に別れを告げて眠りについた。




