第11話 最後の日。2
いつも通り髪を結び、遊王子にウィッグをセットしてもらう。多少はズレても自分で治せるからある程度ははしゃいでも大丈夫だろう。といっても、この体調であまり激しく動くことはないだろうけど。
靴を履き、外に出て玄関の鍵を閉める。熱を冷ますように一つ大きな深呼吸を入れた。
「じゃあ、いこう?」
「うん」
そして俺は遊王子と歩き始めた。
学校に着くといつも通りに上履きに履き替え、教室に向かう。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと。
教室にはまだ人は少なかった。席に座ってから時間割を確認すると今日は午前授業で終わりらしく、五時限目にある体育は無いらしい。まあ、どうせ見学だから関係ないけど、気まずさは晴れた?のかもしれない。
本を読んでいる遊王子と軽く会話しながらホームルームの時間まで待っていると、あと五分というところで瑛太が登校してきた。
「おー、瑛太かー、体調はどうだ?治ったのか?」
「うーん、ぼちぼちかな?」
「そうか、それより聞いてくれよ、俺の母ちゃんがさーーーー」
瑛太の話を聞きながら残りの時間を過ごしていると、チャイムが鳴り、横山先生が出席簿を持って教室に入ってきた。
教室に広がっていた声はあっという間になくなり、先生の連絡事項を伝える声だけが教室に響き渡る。
その間一瞬心配そうな顔をして俺を見てきた気がしたが気のせいかもしれない。
ホームルームも終わり授業が始まった。英語、社会、数学、国語。
授業で当てられる可能性があり、注目がある中で変わってしまった声を出すのは躊躇いがあったりしたが、ゴールデンウィーク間近なこともあり、授業は半分、ゴールデンウィークの課題半分のようで、最終的には一度も当てられなかった。少し安心。だけど少し悲しくもあった。
帰りのホームルーム。長期休み恒例の注意事項の手紙を渡され、一通り横山先生が読んでいく。といってもほとんどが聞いていないが。小声で話したり、スマホをいじったり。放課後、あるいはゴールデンウィークの予定も話しているのだろうか?
「はい、ゴールデンウィーク怪我なく元気に過ごしてください!以上。号令お願い」
「起立!」
「さようならー」
そう言って何人か足早に教室を去っていく。俺もいつもはそっち派だが、今日はゆっくりと去りたかった。
椅子に座り直し、窓側から伝わる少し暖かな太陽の温度を感じる。
うん、十分だ。
俺は満足して立ち上がった。
「よしっ、二人ともどっか寄っていこうぜ」
☆
学校から10分程歩き、更に電車に揺られること約10分。
第二の秋葉原と言われても過言では無い立川にやって来た。えっ、知らないって?西東京では有名だからいいんだよ。
品揃えは秋葉原に劣るものの、ここでもイベントがあったりある程度のグッズは揃ったりする。また、色々なアニメの聖地があったりして、観光客を賑わす。つまり、サブカルチャーに重点を置いている市なのだ。
「で、湊くんは如何して立川へ?」
「うーん、観光?」
「いや、何回も来てるでしょ」
「確かに」
俺が笑っていると、「グー」と誰かのお腹の音がなった。
「あ、俺のお腹の音か、すまんすまん」
瑛太はガハハっと笑いながらお腹を撫でた。俺たちもつい笑ってしまった。
「取り敢えず、どっかのファミレスにでも入るか」
「よし、肉食うぞー!」
「俺もー!」
次回の話も本日の夜か、明日の、起きてたら早くてお昼、遅くて夜の8時くらいには出す予定です。




