第10話 最後の登校。
ピピピッ、ピピピッ。
スマホのアラームが鳴って目を覚ます。よく寝たからか、万全ではないが体調は多少戻っている。
身体の変化も感覚的に昨日と今日であまり変わっていなそうだ。
気怠い身体を起こし、洗面台で顔を洗う。タオルで顔を拭き、鏡を恐る恐る覗くと、そこには湊 裕樹はいなかった。
そこには、俺が推しているvtuber、雪白 雫にすごく似た可愛らしい少女映っていた。
昨日遊王子が俺の面影があると言っていたけど、どこにも見当たらない。昨日までは残っていて、寝ている間に変わってしまったのだろうか?あるいは気を遣ってくれたのだろうか?
白くて小さな手で、身体にそぐわない服をゆっくりと脱いでいく。昨日は風呂に入らなかったから、さっぱりとしたいのだ。
シャワーで髪を水に浸し、シャンプーをしていく。既にロングと言っていい水色の髪をワシャワシャと泡立てて洗っていく。
それを丁寧に洗い流すと、次に身体を洗っていく。お気に入りのスポンジにボディソープを染み込ませ、泡立たせる。
小さくなってしまった身体に少し落ち込みながらも隅々まで洗っていく。その中で救いなのは、まだ男であると証明できることだろうか。最後に泡を流す。そして軽く水気をタオルで吸い取り、タオルで髪をまとめ上げお風呂からでる。
下着を履き、自分の制服を見る。
今日が最後な気がするのだ。この制服を着るのが。そして湊 裕樹として通うのが。
見つめていた制服に袖を通していく。
やはりブカブカだ。
袖を折り、長さを調節する。調節したところを安全ピンで止めておけば、途中で元に戻ってしまう心配はないだろう。
ドライヤーを手に取り、髪を乾かしていく。長くなった髪は乾きづらく、そしてめんどくさかった。
それが弊害していつもより準備に時間がかってしまった。しかしご飯を抜くと体調的にも悪そうなので、軽くバナナとゼリーを食べておく。そんなところでチャイムが鳴った。
玄関のドアを開けると、遊王子が立っていた。
「おはよう」
「お、おはよう」
意外にも今日初めて発した声だった。そのためか、少し小さく掠れてしまって、自分でも聴き取りづらかった。
「もうほとんど雫ちゃんね……体調は大丈夫そう?」
「大丈夫か大丈夫じゃないかって言われたら、今のところ大丈夫だと思う。ただ、途中でダメになるかもしれない」
「だったら今日は休んだ方がいいんじゃない?」
「いや、今日休んだらもう、男として、湊 裕樹として行けなくなる気がして……」
遊王子は気が沈む俺を見て察したのか、間を開けてため息をついた。
「無茶だけはしちゃダメよ」
「分かった、ありがとう」
「それじゃあ、髪やってあげるからお邪魔するわよ」
「ああ、頼む」
俺は遊王子を中へと招き入れた。




