第9話 続く痛み。
今日も今日とて一投稿。
夜の10時ごろ。俺は布団に入ってそろそろ始まる雫ちゃんのライブ配信を待っていた。今日は事務所と一緒の子と雑談がてら軽くゲームをする予定だそうだ。
楽しみだなぁ。そう思いながら暇潰しに雫ちゃんが関連する切り抜き動画を漁っていく。
そんな時だった。またあの痛みが訪れた。
「痛い……」
全身がぐちゃぐちゃにされている感じがする。しかし今回はまだ耐えられる痛みだった。俺はスマホの電源を落とし、重い足取りで電気を消してまた布団に潜る。
痛みが少しでも和らぎますように。そう願いながら目を瞑る。しかし時間が経つにつれ痛みが徐々に大きくなっていく。
もうダメだ。
俺はあまりの痛みに意識を手放した。
☆
目を開けると既に日は明けていて小鳥が朝であることを告げていた。
「朝か……」
元の俺とは既にかけ離れた声ではあったものの、俺がそのこと気づく余裕はなかった。
夜と同じく身体全身が痛い。暫く経過して徐々に痛みが大きくなるということはなく、その代わりに熱がある。
時計を確認すると、あと少しで遊王子が来る時間だった。
流石にこの状態では学校にいけないので、遊王子には申し訳ないがおぼつかない手でチャットを打ちこのことを伝えた。
すると返事はすぐに返ってきて、「すぐ家にいくからまってて」とだけ書かれていた。その通り遊王子はすぐ家にきてくれた。
痛みで壊れてしまいそうな身体を鞭を打たれたかのように起き上がらせ、玄関までいき鍵を開ける。
「湊くん!?」
そこで限界が来たようだ。俺は全身を遊王子に預けるように倒れていった。
「ごめん、ちょっと痛みと熱が酷くて」
「ちょっとに見えないわ!肩貸してあげるから早くベッドに行きましょ!」
俺は遊王子に連れられ、何とかベッドに戻る。
「遊王子ありがとう」
「いいえ、お礼なんて要らないわ。それより本当に大丈夫なの?私には大丈夫そうには見えない。申し訳ないけど、貴方のスマホからお姉さんの方に連絡するわね」
「分かった」
そう言い返した俺は無理したせいか、限界がきてまた意識を手放した。最後に見えたのは、俺のスマホを取り出して姉に電話し用としている遊王子の姿だった。
☆
次に目を覚ますと外を見ると既に日は傾き始めていて、時間を見ると17時を回っていた。
まだ身体は痛むし、少し熱もある。ただ、歩くだけですぐ限界がくる。みたいなことがないくらいには回復した。
ガチャっ。俺の部屋の扉が開いた。
そこには制服姿の遊王子がいた。
「湊くん?起きたのね、良かったわ……」
遊王子は俺が目を覚ましたのを確認すると、安心したように胸を撫で下ろした。
「ごめんな、遊王子」
いつもの声とは全然違う。男とは絶対思われない。よくて声変わり前の男子といったところか。そんな声で弱々しく謝った。
「連絡終わった後戻ったら意識がなかったんだもの。人生で一番焦ったわ」
「ごめん、それで姉さんは?」
「明日帰って来るそうよ、流石に今の状況説明したけどね」
「そうか……」
帰ってきてきっと驚くだろう、弟がいつの間にか女の子になっているんだから。
「遊王子、今の俺の姿どうだ?」
「そうね……まだ貴方らしさは残ってる。けど、可愛らしい女の子にしか見えないわ」
可愛らしい……か。今までなにかと言われてきて平然としてたけど、今回はダメみたいだ。拳で顔を殴られたかのようだ。でも、それが現実だ。
「ごめんなさい、傷つけたわよね……」
「いや、いいんだ、気を遣われて自分を上げられるよりはマシだよ。それにそれが真実だから」
それが受け止めることができない自分に悔しくて悔しくて堪らない。自然と涙が溢れてくる。
その涙を隠すように腕で目を隠す。
しかし変わり果てたその小さな腕では全てを隠すことができなかった。
「湊くん……」
遊王子はそう言って泣いている俺を優しく抱きしめてくれた。何も言わずに。俺はそれだけで嬉しかった。




