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レーナの視界


 それからの、日々は希望に満ちてると

 信じていたの。――信じていたい。


 (あに)はお(いえ)を追い出され、

 あてもないままさまよった。

 (わたし)が一緒に行かなくちゃ、

 (わたし)が守るの――兄さまを。


 いてもたってもいられない。

 (いそ)いで荷物を纏めたら、

 (よる)に抜け出し、後を追い、

 ()り添うように旅をした。


 不安に満ちた旅路さえ、

 ふたりでいれば怖くない。

 夜の野宿も、雑踏も、

 この世の全てが新しかった。


 呪いのようなスキルさえ、

 蓋を開ければ、兄さまの

 未来を祝うようなもの、

 強くて役立つものでした。


 兄が<弱化>と唱えれば、

 どんな強者も膝をつき

 ガクガク震えて、弱りはて、

 魔法みたいに勝てました。


 力に気付いた、兄さまは

 各地で魔物を倒しては、

 なんでもないよな顔をして、

 感謝も受けずに発っていく。


 そんな無償の善行が、

 誇らしかった。この人が

 私の兄だ、兄さまなんだ。

 そう思う度、頬が緩む。


 次第に名前も広まって、

 兄は人から慕われる、

 英雄として名を広め、

 ……それは実家へ知らされた。


「私のサハリ、愛しい子。

 こんなところにいたなんて、

 ――ああ、神よ。この幸運を、采配を。

 心の底から感謝します」


 母は憑いてた亡霊が、

 消えたみたいな顔をして、

 兄に抱き着き、泣きながら

 ひたすら聖句を唱えてた。


「もう遅いんだ。お母さま、

 僕らは親子じゃなくなった。

 あなたが僕らを捨てたんだ。

 スキル次第で、捨てる子が

 愛しい? そんなはずがない。

 あなたにとって僕たちは、

 どうせのところ都合いい

 道具か装飾 でしか ないんだ」


 母はくずおれ、また泣いて、

「我が子は、サハリは、いまどこに?

 あの子はそんなひどいこと、

 私に言ったりしないもの」


 母を見下ろす兄の目が、

 暗く澱んだように見え、

 私は怯えた、恐怖した。

 嫌な予感が胸をうつ。

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