全てを変える私の力!腐女子ですのでキラキラ男子にスキルを使いノンケじゃなくしてやります!
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ふんす——————─────ーーー!
テンション上がってきた!
大阪日本橋まで来てよかった!
なんとここに、ここに!私が探し求めていた『振りかぶらないで!』の同人誌があるなんて!
あぁ…… なんてこと!
サークル脱退した、私のお気に入りの作家さんの初期原稿…… 尊い。
ふれるのも、烏滸がましい……
カバンに突っ込んでいたペットボトルを取り出してゴクゴクゴクと飲み干す。
落ち着け…… 水滴が大切な御本様に悪さをしてしまうから…… これはゴミ箱にポイ。
タオルもある…… これで御本様を包めば折れず曲がらずの刀の精神でビジネスホテルまで戻れるはず。
そこで部屋に安置して…… 吸収剤とタオルを百均で買ってダンボールに詰めて精密機器指定で自宅の東京にまで送る…… ヨシ!
これだ!これしか勝てない。
新幹線や移動中にカバンの中で御本様の角が折れたりしたら大変。
よし、買おう…… !
私は大阪日本橋の同人誌販売店のショーケースに並ぶ御本様をずいと覗き込む。
『振りかぶらないで!』はもう10年以上前にテレビアニメ化もされた有名漫画だ。
この作家さんプラセンタ千太郎10さんは噂では振りかぶらないでの漫画家さんのアシスタントだと言われている。
「あぁ…… 尊い…… 線が、絵がリアル志向…… 」
本誌の漫画と同じに見える完成度でアーベンとミーハという美少年2人が愛を育むという…… ふぅ…… 思い出してしまう尊い。
「……っ!28,000円か!?」
高い!でも!でも!────────……
「…… ありがとうございましたー!」
「…… はい」
買ってしまった。
いや、しまったという言葉は御本様に失礼であろう。私ったら罪のないのに御本様のせいにするなんて……
でも、やっと手に入った。
大阪に出張に来て良かった……
私はルンルンで大阪の難波方面へ足を向ける。
「ちょい…… 表紙を愛でても良いでごさろう?」
日本橋にあるゲームメーカーさんのゲームセンター前でカバンからチラチラと同人誌を覗く。
ふむ、わかる…… 力が入っている。アーベンの目の濁り具合とかよい。これは…… よい!
「おい!危ない!」
「へ?」
同人誌から目を前に向けると、もう逃げられない距離にトラックが…… !
うへぇ…… 同人誌買うのに運を使い果たしたか……
お母さんに趣味バレするのは辛い…… 。
そんな事を考えながら意識は無くなった。
──────────────────────────────────────── という事を思い出した。
はい。
異世界転生ですありがとうございました。
導入部要る?ってなぐらいにベタな展開に苦笑。
私は、異世界はノートスター国の男爵の長女として転生した。
今、思い出した理由はお父様がお母様に対して男色であるとカミングアウトしたせいだ。
父のカミングアウトはなかなかの衝撃であり懐かしい記憶…… 前世の記憶が呼び覚まされた。
「エリーザ!お父様と一緒に来るのよ!」
「うぇ?はい、お父様?」
お母様と言うべきか?カミングアウトして一気に女性言葉になっちゃったお父様に腕を引かれる。
「待って!エリーザ!」
「お母様!」
お父様はお母様を捨てて家を出ていくつもりだ。
つまり、カレシと同棲するの?マジ?
「えっとお父様?」
「なにかしら?」
「うぇ、破壊力!…… いえ、あの、恋人と同棲されるなら女である私は邪魔なのでは?」
んー?と可愛くお父様は悩みながら話してくれた事を要約すると、私はもう15歳!
いえい!15の高校生の時期!
今年の夏から始まる王都の学園に通い、女主人として家を継いで欲しいとの事だ!そうね!子供は産めないもの!
「カレはホラ子供いないし、エリーザに全て任せちゃおっかなー?って」
「いや、ってってー軽いわー」
こうしてお母様はお父様とカレシの2人の貴族家から別れの慰謝料を払われ笑顔で過ごしているという。
うらやま!
私は…… 学園にきた!
えっとね!この世界の人って美形がやたらと多いのよ!魔法や特殊なスキルがあったりファンタジー世界なのよ!わははははは…… はぁ、金髪率が高い。
記憶が戻る前は普通にしていれたのに日本人の私の記憶が戻って合わさるとなんかねー?
気遅れしちゃう。
あれ?何の話?
そうそう、美形の話。
魔法がある世界だからエルフとかドワーフとかハーフリングとかいるのよね。
その血が混じり合い歴史を重ねている世界たがら美形が多いのよ。
地球でも民族の交流が多くて混血の系譜がズラーってなる地域では美形の人が多くなる。中東の地域とか、ロシアとか。
この世界は種族が違っても子供が出来る!
うはは、美形が凄い。
カーテンにぐるぐる巻きで遊ぶアホな男の子でも日本ならトップアイドルになれますよこれ。
「もふふへへ」
いかん、イケメンが多くて笑顔になる。
ほら…… 二次イケメン尊い、三次イケメンはリアルでダメ派の私でした!でしたね?
リアルでハイポリゴンで作ったようなイケメンが…… イケメンがぁぁ…… 抱きしめあって笑っているんですよぉ?
カーテンぐるぐる男子が「わっ!」って脅かすと、サッカーキラキラキャプテン見た目男子が笑ってギュッですよ?
うわー…… 私、ショタ入ってました?
あ、振りかぶらないで!は中学生男子がメインだわ!
そう!そうよ!カーテン君!そこでキスでも!!
ざわっ!
カーテン君…… キャプテン君にキスしちゃった…… あれ?今、なんか私の体から魔法が出た?
ざわざわと騒がしくなる教室。
唇を手でなぞるカーテン君とキャプテン君。
ノンケっぽい2人…… あれ?私の魔法の力とか?
「んなわけあるかいな」
ポソポソと呟く。
「おい!この教室がどんな場所か分かっているか!?」
「「!!すみませんイリジウム様!」」
おふぅ…… メガネ委員長タイプの公爵家次男のイリジウム様だわ……
そうこの教室には今年から第二王子が来られるのだ。同窓生とかヤバい話せる気がしない。
私の家は今二馬力の貴族パワーがある。
金があるからこの教室に入れたけど…… お父様何を狙っているの?この教室には王国の中心人物に関係するお子様がたくさんいらっしゃる。
こわい。視姦だけしとこう。
私があーだこーだと考えているとメガネ委員長イリジウム様の説教がヒートアップ。
目が悪いからカーテン君の両肩を掴みグッと寄って睨んでいる。
近いな…… そのままキスすればいいのに!
…… ざわっ!
「っ!イリジウム…… 様?」
「はっ!私のは!?なんて事を!」
イリジウム様は逃げられないようにカーテン君の両肩を掴み無理矢理キスをしたようなシチュエーションが今、この世界に!この現実に!
カァッ…… と赤くなるカーテン君。
イリジウム委員長も一歩引いて赤くなる。ってか委員長って勝手に決めちゃったよえへへ。
…… うはは、凄い!決定するには早いけどコレ転生チートか何かじゃないもしかしたら!?
望めば腐女子の世界になるチート…… !
アツい!甲子園よりアツい(私主観)
まだよ!幸せになるタイプのストーリーしか要らないの!
ちゃんと愛し合わないと!
こんなのレイプよノンケ×ノンケは好きじゃない!
愛しあってドロドロ、これ!分かる?
私!この世界をラブラブチュッチュ美男子の腐女子ユートピアにしてみせる!
────────────────────ゴウゥゥィィィィィン……
エリーザがアホな事を考えている時……
地下深くの魔界と呼ばれる場所に黒く蠢く邪神がいた。
彼がエリーザをこの異世界に呼び出した者だ。
「ゲッゲッゲッ…… 異世界地球の人間は欲が深く短慮だ、上手くいくだろう」
暗く低い声で邪神は唸るように独り言を言う。
エリーザが付与されたチート能力は『精神汚染』。
魔力を鍛えると、どんな上位者でも意のままに動かせてしまう程の能力。
邪神は地球人が戦争や略奪を好む事を精神世界に漂う魂から知り、地球で死んだばかりの欲深いバカの魂をエリーザとして転生させた。
邪神は知らない。
エリーザの欲は腐海の底である事を。
エリーザが世界征服を企むような器ではない事を……
ラブラブチュッチュの世界を邪神から付与されたチートで叶えようとしている事を……
おしまい。