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エルフの美少女との出会いの件

メインヒロインの少女との出会いです。

ドルフ達の案内で村に向かう。


 ドルフが合掌して、左右に腕を開く素振りをする。


 すると、進行方向の樹木の枝がザザザザっと音を立てて左右に開いて空間を作り、1本の道が出来ていく。


 「我が一族に伝わる精霊魔法です。ある程度なら木々に言う事を聞かせられるのです。」


 ドルフの説明によると、俺たちが中々森の中を進めなかったのも通行を阻害する魔法をかけていたそうだ。


 そんな中を構わず進んで来る俺達を見て慌てて止めに来たらしい。



 森の中を1時間ほど進んだろうか。急に開けた場所に出た。


 野球場位の広さの湖の中央に巨大な木が生えている。その幹からは滝のように水が湖に流れ込んでいる。


 その湖の周りを囲むようにして集落が出来ていた。


 ドルフが笑顔で俺たちに告げた。


 「ようこそ我が”生命の木の里”へ。」


 集落の入り口には白髪の老人が立っていた。


 「この里の長、族長のイワンです。」そう言えばドルフと顔立ちが似ている。


 「ようこそおいでくださった。ここは安全ですので先ず武装を解いては寛いでくだされ。」


 俺が許可するとジェームズがパワードスーツをパージする。


 パージされたスーツは自走して馬車後部の格納場所に格納された。


 「何と、あの鎧は魔道具でしたか!」イワンだけでなく、周りのエルフ達すべてが驚愕の表情をしている。


 そりゃああのいかつい大男の騎士が、なで肩のおっさんに変わったら驚くよね。


 いや、俺は逆にジェームズのバトルモードの時の態度がドン引きだったけどね。


 俺たちは族長の屋敷に案内された。今日はここに泊めてもらえるそうだ。


 夕食は豪華な料理でもてなされた。


ジェームズとキャサリンは完ぺきなテーブルマナーで食事をしながら談笑している。


とは言え、食べたものは体内にある収納スペースに溜まるので後で廃棄しなければならないのだが、そんな事をせっかく歓待してくれているエルフ達に説明する必要はない。


 俺は食事の必要がない旨伝えると、「霞を食べて生活されるとは、やはり、精霊様ではないか?」とエルフ達が騒ぎ始めたので否定するのに苦労した。

 

 食後にアルコールが振るまわれて更に宴も盛り上がりだした。そんな中で独り飲み食いしない奴がいても周囲は興醒めだろう。夜風に当たりたいと言い訳して庭に出た。


 夜空には青白い月が大小二つ並んでいる。やはり、ここは異世界なのだろうなとしみじみ思いながら、ぼんやり夜空を眺めていた俺の動体センサーに反応があった。


 右手にある植込みの影から誰かが覗いている。


 「誰だ?」誰何すると黒い影がビクっと反応し、震えながら月明かりの下に姿を現した。


 「君は・・・。」


 年齢は日本なら小学校高学年くらい。華奢な体つきだが透き通った肌の美少女だった。

特徴的なのは、耳の長いエルフの特徴を持ちながら、黒い髪だった事。


 これが後々、俺たちの旅路に大きな影響を及ぼす、エルフの少女との出会いだった。


 「ごめんなさい。覗き見するつもりはなかったんです。宴会しているので誰もお庭には来ないと思って・・・。」少女は蒼ざめて震えながら答えた。


 「ごめんごめん、気になっただけで起こった訳ではないんだ。君の名は?」


 「ティナと言います。」少女は俺の言葉にほっとしたようだ。


 「君は宴に参加しないのかい?」


 「私なんかがあの中に入るなんておこがましいのです。」えらく卑屈な答えだ。


 「ちょうど退屈していたんだ。ちょっと話の相手をしてくれないかい?」俺は庭に置いてあるベンチを指さした。


 少女は一瞬、迷いを見せたが、意を決してタタタッと小走りにベンチに走り寄ると、ちょこんとベンチに飛び乗った。


 か、かわいい。表情筋があれば思わずニッコリするところだが、サミーは常にポーカーフェイスだ。


 「精霊様のお名前は何というのですか?」


 「俺の名はレイ。精霊様ではないからね。」この集落に来てからこの言葉を何度伝えたことか。


 「俺の話は良いから君の話を聞きたいな。何でそんなに皆に遠慮してるんだい?」


 「・・・。私は役立たずなんです。皆さんは優しくしてくれのに、私は何も返せない。だから、皆さんと一緒に楽しむなんておこがましいのです。」少女はうつむきながら弱々しい声で答える。


 訳アリの様だ。さらに話しかけようとしたところで


「レイ様、こんなところにおられましたか。おや、そこにいるのはティナかい?」族長のイワンが背後から声をかけてきた。


 ティナはビクっと驚くと、ベンチを飛び降りてそのまま走り去ってしまった。


 「やれやれ、行ってしもうたか・・・。」


 イワンはティナの走り去った方向を首を振りながら心配そうに見つめた。


 「あの子は可愛そうな子なのです。」イワンはティナの生い立ちについて俺に語りだした。


 「10年前の嵐の晩でした。森の入り口で巡回をしていたドルフ達があの子達を見つけたのです。」


 「あの子の他に二人の大人のエルフがいましたが、何者かに背後から切られていて、既にこと切れていました。」


 「当時はあの子はまだ赤子で話す事も出来ずに泣いているだけでした。」


 「ティナと言う名前はあの子の小指に嵌められていた指輪に彫られていました。」


 「魔力が込められた指輪だったので何処か高貴な生まれかもしれないと思ったのですが、それ以上の情報はありませんでした。」


 「ドルフが連れて来たティナをこれも何かの縁だろうと私が引き取って育てることにしました。しかし、それがあの子にとって良かったのか・・・。」イワンはため息をついて話を続けた。


 「私たちエルフは3,4歳くらいになると自然に魔法を身につけます。その適性や能力に個人差はありますが。


 「しかし、あの子は物心ついても魔法が発現しなかった。最初はその内に覚えるさと笑っていたのですが6年経ち、7年経っても変化がなかった。」


 「私たちが皆、銀髪であの子だけ黒髪だったのも影響して、あの子は自分が人より劣る、劣等種だと思い込んでしまったのです。」


 俺の親は外資系の商社に勤めていて、幼少期は海外赴任で欧米を連れまわされていた。

 農産物を扱っていたことも影響して田舎町に赴任することも多く、白人が多く、アジア系の人間は少なかった。


 住民は素朴で優しい人が多かったが、自分と異なる言語、肌の色、大柄の体格の同級生に、慣れるまでは卑屈になっていた記憶がある。


 ティナの事を他人事と思えなかった。


 「明日はあの子とまた、話をしても良いですか?」


 「是非そうしてあげてください。私たちよりもあなた方と話すほうがあの子にも為になるでしょう。」

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