エルフに通せんぼされた件
ファンタジーの定番エルフです。
「くそ邪魔な木っ端度ども、どかんか!ガハハハッ!」
野太い咆哮のような声が周囲に響き渡る。叫んでいるのはジェームズだ。
馬車の進行方向に道を作るためにパワードスーツを着用して高周波ブレードで前方の木々を熱したナイフでバターを切るようにスパスパと叩き切っている。
パワードスーツ装着にあたって接客モードから戦闘モードに言語プログラムが切り替わるらしい。ドン引きである。
キャサリンは馬車の御者席に座ってニコニコとジェームズを見守っている。どんな絵だよ。
周囲にズーン、ズーンと次々に木々が倒れる音が響いて驚いた鳥たちが空に舞い上がっていく。
しかし、派手な割には中々前に進めない。なんかこの森って木々が密集しすぎていないか?
開け放っている馬車の窓から一羽の鳥が舞い込んで来た。全長50cm位。鷹の様な見た目だ。
「前方1kmほど先に、複数の生体反応。待ち伏せかと思われマス。」鳥からヘルガの声が聞こえる。
「へ?お前、ヘルガなの??」
「ヤー。これはステルスホーク。光学迷彩付きで探知されにくく、垂直上昇、空中停止、音速飛行も可能な高性能ドローンでス。」相変わらずドヤ声だ。
「いや、そこじゃなくて、何でヘルガがここにいるの?」
「いや、だって暇・・・ゲフンゲフン、マスターが頼りないので同行するのデス。
本体は基地にいますのでご心配なく。嫌なのですか?殴りますヨ?」
「ワカリマシタ。タスカリマス。ヨロシクオネガイウシマス。」もう、ね、普通に威嚇的になって来たので素直に従う。痛いのやだもん。痛覚は無いけどね。
キャサリンが杖を手に取り口角をあげてにやりと笑う。目は笑っていない。怖い。
「私たちを待ち伏せするとはなめ腐りやがった連中ですね。殲滅しましょう。」
口調も物騒だ。
キャサリンもバトルモードに切り替わったらしい。
待ち伏せした連中から300m程の距離に近づいた時、突然、木々の間を抜けてジェームズの足元に矢が突き刺さった。
ジェームズが無視して更に進もうとするともう1本矢が飛来してシェームズの足元に刺さった。どうやら警告らしい。
とりあえず、立ち止まって様子を見ることにした。
しばらくすると、一人の男性が姿を現した。白銀の鎧を身に着けた偉丈夫だ。両腰に長剣を差している。
銀髪の長髪で顔は凄いイケメン。耳が長い。エルフだ。男の後ろには同じような姿の男女10人が手に手に武器を持ってこちらに向けている。
「ヘルガ、あれって?」俺がステルスホークを見るとガタガタブルブルと震えている。
「何、そんなにやばい奴なの?」
「キ、キャラが被った!」
「え。そっち!?」
俺たちのボケ突っ込みを遮るように、イケメン君が話しかけてきた。
「ラジア大森林の守護者、グリーンエルフ族の族長イワンの息子、警備隊長のドルフである。 ここより先はわが一族の守護地。早々に引き返されよ。」
「我らはこの森の北の先にある街を目指している。う回路はあるのか?」ジェームズが尋ねる。
「東の山の麓から西の山の麓までが我らの守護地。山を越えて行くが良い」
尊大な物言いだな。と思っていたら、また、ジェームズが返答した。
「それでは時間がかかり過ぎる。押して通る!」
ジェームズの答えにエルフ達は弓をつがえ、剣を抜いて構える。
「チョーっと待ったぁー!」馬車から飛び降りた俺は思わず叫んだ。
ジェームズの奴、執事モードの時の柔らかい応対と戦闘モードの脳筋の応対でギャップあり過ぎだろう!
俺の声を聴いたジェームズとキャサリンは俺の傍に来て跪いた。
エルフ達はポカンとして立ち尽くしている。
そりゃそうだ。荷物にしか見えない俺が急に話し出してそれに人間が跪いているんだから違和感バリバリだろう。
「貴殿は何者だ?」ジェームズ達の態度から、只ならぬ雰囲気を感じ取ったのか、ドルフが丁寧な口調で尋ねてきた。
「私は故あってこのような姿をしているがこの者たちの主だ。貴殿の土地を汚すような行いはしないと誓うので、通してもらう訳にはいかないだろうか?」
「人でも魔族でもないのに話ができる。そのお姿、もしや精霊様か!?」エルフ達は勝手にざわめき始めた。精霊様ってなんだ??
「精霊様は我らの守り神。決まった肉体を持たず、お言葉を話される。貴方様は精霊様でいらっしゃいますか?」ドルフが落ち着かない仕草で尋ねてきた。
跪いたほうがいいのか迷っている様だ。
「残念ながら貴殿達の言う、精霊様ではない。しかし、危害を加えるつもりもないし、何とか通してもらえないだろうか?」
低姿勢で頼み込む。
「通してあげたいところではあるが、ここから先は我らにとっては聖地。何人も簡単に
通す事は出来ない。」
随分、態度は軟化してきたが、答えは同じの様だ。
自動投稿なぜか失敗します。マニュアルがいいみたいですね。