初戦闘で疵だらけになった件
初めての投稿で不安だったので2話まで連続投稿です。初の戦闘シーン。上手く描けていればよいのですが。
目標は監視モニターに映っていたサーバー室のような部屋。情報を入手するにはそこが良い気がしたのだ。
まずは今居る部屋から出ないといけない。扉に近づくと音もなく扉が開いた。自動ドアらしい。
外は通路の様だ。照明は点いておらず、真っ暗だ。
サミーのカメラは自動的に赤外線モードに切り替わった。賢い奴だ。犬だったらモフモフしてやりたいところだが手足が無いので我慢する。
通路はかなり長いようで、先のほうは見通せない。
俺は様子を確認しながらサミーを慎重に走らせた。
赤外線モードは色がない白黒画面になる。灰色の世界を時速20km位のスピードで走っている。
しばらく走った後、前方に何かの気配を感じた。
サミーのカメラを巡らすと、5mくらい先に赤外線の照射を受けて白く光る二つの眼を見つけた。
こいつは・・・。見た目は鼠だ。下水道で見かけそうなドブネズミに似ている。
違うのは全長1.2mはある巨大な体だ。黒い毛皮で油分を含んでいるのだろうか。
てかてかと光沢を放っている。牙と爪が鼠に比べると数倍でかい。前足の爪の先端が黒くてかっている。
お化け鼠と目が合った瞬間、奴は5mの距離を一瞬で詰めてサミーに飛び掛かってきた。
奴が前足の爪を一閃させると、甲高い金属音が鳴り響き、硬そうなサミーの金属製の外被に三本の溝が走った。
一部の配線は一緒に切断されたようでバチバチと火花が弾けている。
電気系統をやられたのかバッテリーの減りが急に早くなった。やばい、やばいやばいやばい。
俺は全速力でサミーを後退させながら蛇行して奴の前足の攻撃を避ける。
こんな挙動は想定されていないのだろう。サミータイヤの基部から悲鳴のような金属音が響いている。
こんなこと続けていたらそのうち、タイヤが外れて走行不能になる。
そうこうしているうちに奴が追い付いてきた。図体がでかいわりに素早い奴だ。
奴は追いつきざまにそのまま体当たりをかましてきた。
100kgはある奴の体重をかけたアタックに、サミーはバランスが崩れて横転してしまった。
くそ、奴はひっくり返って露わになったタイヤの1本に食らいついて引きちぎりやがった。
幸い、サミーのタイヤは独立懸架の4WDだ。タイヤが1本欠けても動き続けられる。とはいえ今は奴にとっ捕まった状態だ。
奴はガリガリと外被を食い破ってくる。焦る、焦る焦る、このままじゃやられる。考えろ。何か抵抗出来ることを考えろ。
俺は必死で入手したサミーのVRウインドウからマニュアルを検索する。目の前をマニュアルの映像が物凄い勢いでスクロールしていく。
これだ!マニュアルからある機能を発見した俺は、サミーのカメラを赤外線カメラからマニュアルで元の通常型カメラに切り替えた。
すると周囲の暗闇に反応して自動的にカメラに付属しているフラッシュライトが点灯した。
視界が一瞬、真っ白になった後に白黒の世界から一転してフルカラーの世界になった。
暗闇に目が慣れていたお化けネズミはフラッシュライトに目がくらんで一旦、サミーから距離を取った。
しかし、立ち去る気配はない。あきらめてくれるわけではないらしい。目が慣れれば再び襲い掛かってくるだろう。
足回りが損傷した現状、逃げるのは不可能だ。今のうちに反撃手段を考えなくては。
俺はサミーに収納された作業用アームを操作して転倒した姿勢を元に戻した。
そして作業アームに取り付けられた電動ドライバーを稼働させて奴を威嚇する。
目が慣れてきた奴は作業アームを武器と認識して排除すべく食らいついてきた。
しかしそれは下策だ。
奴が食らいついている間にサミーから別途収納されているプラズマトーチの作業アームが飛び出す。
起動させるとアームの先端に真っ白な高温の炎が灯って周囲を眩しく照らす。
俺は電動ドライバーのアームに食いついている奴の目めがけてプラズマトーチを突っ込んでやった。
奴の眼球は一瞬で沸騰、パーンと音を立てて破裂した。
お化け鼠は甲高い悲鳴をあげる。
俺はそれをを無視してそのまま目の奥までズブズブとトーチを突っ込んでいく。
奴の耳からは白煙が上がり始めた。奴はしばらく体全体をビクンビクンと痙攣させていたが、しばらくして急に脱力して止まった。
耳や鼻、口からは白い煙が漂っている。どうやら死んだようだ。
疵つきながらもモンスターを倒した主人公。次回は最初の〝仲間”と出会うことになります。