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彼女が昔ニンゲンだった時  作者: 志摩
プロローグ
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4、作戦会議


 私とディーネは、まず作戦を立てていた。

 動き回る前に、自分たちのことをまず把握しておかないと不安だったからだ。





「えっと、ディーネって呼んでいいの?」

『いい。私もナナと』

「うん。とりあえず聞いてみるけど、ディーネはまず何をするべきだと思う?」

『まずはこの嫌な音が止まること。頭に響く音がまずい』

「音ね、私に聞こえるのはみんなが暴れているだろう音くらいだなぁ。どこから聞こえてくるか分かる?」

『人の住処の多いところが特に強いが、場所によって差が大きい』

「この辺はこれでもかってくらい田舎だから、建物なんて少ない方なんだけど」

『だとするのなら、この辺は暴れているもの達は少ないということになるだろう。建物が多い場所ほどこの音が強いなら、そういった場所の方が暴れるものも多くなる』

「都会は被害が大きいってことね」




『あとは臭いだろうか』

「臭い?」

『ナナからは嫌な臭いはしない』

「そりゃどうも」

『いろんな場所を飛んできたが、建物や人がいるところは音と臭いが酷い』

「逆に聞くけど、平気な場所はあったの?」

『あった。この辺りも特に嫌な感じはしない』

「まあこの辺は田んぼと畑、あと用水路。今はまだ三月になったばかりでほとんど土の状態。家っていうより作業小屋ばかりだから」

『人の気配もない、水もある、他のもの達でもダメージはなさそうだ』

「じゃあ暴れてる子達、集めちゃうか」

『そうだね。それから人間をまとめる方が小さい種族には害がないかもしれない。人と接触するとおかしくなる可能性もありそうだ』

「人の方に来ないような境界みたいな、柵みたいなものって作れるの?」

『私には難しいが、土の民や、森の民、それにまつわる力を扱うものならできる』

「なるほど。じゃあやっぱり君たちの仲間を集めて区画を分ける方が優先かな」




『ナナからは提案はあるか?』

「私から?」

『こちらの要求ばかりでは平等ではない』

「いや、なんというか。私も家族が心配だったり、家はどうだろうとか色々あるんだけど。そっちを見に行ったとして、家族が無事でも安全なところがないし、自分の家がなくなってればみんな帰るところはないし。とりあえず、ディーネの言うことか順番的に先で間違ってないと思う。だから、家族を探しに行くためにも、まずやれることをやろう。って言うのが正解かなと」

『ナナは思っていたより、私の契約者に向いていたな』

「何思ったよりって、私しかいないとか言ってたのに」

『そう、ナナが使えない頭しか持ってなかったなら、捨て置くのは簡単だからな』

「全力で努力させていただきます、ディーネ様」

『そう固くならなくても、今のところは大丈夫』

「今のところ……」

『他に会話できそうなやつはいないからね』

「かしこまりました」




『私には探さなければならないものがある』

「何? 生き物?」

『私の仲間と卵だ』

「え! 子どもいたの! 分かるよ、心配だよね」

『私の子どもではない。世界の子どもだ』

「ちょ、また難しい話。そういうの後にしよう。見つかったらまた教えて」

『そうだな、急いだ方が良さそうだ』



 さっきまでいたスーパー方とは反対側。まだ見に行っていない方角だが、そちらから何か崩れて壊れた音がした。何か暴れているのか、ただ倒壊しているのか。この辺りは住む人がいなくなって、荒れたまま手をつけられていない場所が多い。廃墟や整備されずに荒地になっているところもある。




「ここらへんの土地は、人間と距離を取るって意味では最適な場所だな」

『しばらくはここを拠点として、生き物たちを運ぶことにしよう』

「そうだね。さっきの子は起きたかな」

『見に行ってみよう』



 私たちは動き始める。

 お互いの生きる未来のために。




 作戦会議の結果としては、まずは異世界の生物達を安全な場所に集めて、区画整理ができるようにする。次に生きている人間の救助と安全確保。

 そして私はディーネに逆らわずに全力を尽くさないと捨てられてしまう。

 ということが決まった。

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