5、 バーン
「まあドラゴンとはいえこんなにちっちゃいし、育てるのは難しくないと思うけど」
「そうだよ。俺たちが手伝えばいいじゃん? ドラゴンライダーになるってミナトちっちゃい頃から夢だったじゃん。まさか実際になれるとは思ってなかったけど」
「いいなー、オレもドラゴンほしい」
「オレも、どこかに卵落ちてないかな」
みんなうれしそう。にこにこしてる。もしかしたら、ママもいいって言ってくれるかな。
「よく分かってないけど、私とか、私のドラゴンたちも何かと物知りだから手助けできるよ。大丈夫、なんとかなるって」
「待って! なんでそんな簡単に決めるの! これからの世界がこのまま元に戻らないとすると、ドラゴンの力があるっていうことは大きな助けになると思う。でもまだ何が何だかわからない状況で、こんな子どものお子ちゃまのミナトが! ドラゴンの契約者とか、生まれたばかりのドラゴン育てるとか、できるわけないよ!」
やっぱりママはダメって言った。いつもぼくはダメだから。
「そんなふうに言わなくても、ミナトだってやればできるかもしれないじゃん」
「ダメなの! ミナトはできないばっかりで! こんなこといきなり言われたってやれるわけないよ。ダメよ!」
『お嬢さん』
おじいちゃんドラゴンが大きな声を出した。
『子どもの可能性を潰してはならん。その子はその卵を見つけ出し守った。無事孵ったその事実は変わらんし、資質はあるということだ』
「ミナトは赤ちゃんの頃から石を集めるクセがあるのよ。いくらやめてって言ってもやめられないの。それ以外にも心配なこと色々あるわ。よく知らないのに勝手なこと言わないで」
ぼくは耳をふさいだ。ママの声が怖い。いつもぼくをおこるこわい声。聞きたくない。目をつぶる、こわくないように。
「そんなふうに言うなよ、ミナトだって頑張ってるよ。石を集めるのは好きだからだよ。俺だってセミの抜け殻ずっと集めてたよ」
「それはあなたの話でしょ! ミナトは女の子よ! ドラゴンライダーだって男の子の話じゃない!」
「「リリーがいるよ」」
「え?」
「リリーは女の子のドラゴンライダーだよ」
「ガロンのいとこだよ、すごい強いよ」
「そんなの特別な女の子だからでしょ、みなとは普通の子じゃない」
「みなと、すごいんだよ。オレ本読むのだいっきらい。みなといつもよんでるよ」
「絵もうまいよ。ドラゴンの絵、すごいよ」
「みなとのこと少し心配しすぎなんじゃないの? この子たちもこう言ってるし」
「そんなの子どもの言うことじゃない」
「お前なんでそんなにみなとのこと否定してるんだよ。フォローしてやればいいだろ」
「私からしたらそっちの方がおかしいよ。今までとは違うのに、こんな訳のわからない世界でぶっちゃけおかしいでしょ? こんなドラゴンたちと一緒に生きていかなきゃならないなんて意味わからないじゃない」
『意味わからないじゃない』
「何よ!」
『あなたの言いたいのは、我々が気に食わないと言うこと? 私もあなたは気に食わない。ナナがいいやつだと言うことは知ってる。私は共に生きていくと決めた。でもあなたはそうではない』
「ディーネ、そんなこと言わないで。今ちょっとこの子はご機嫌が」
『これは侮辱だろう。気に食わん』
「こればかりは向こうのせいだと思う、でも手を出しちゃダメよ」
「ほらこんなこと言ってる! かまんしてたけど、やっぱりよく分かんない生き物なんてこんなものじゃない! みんな心のどこかではきっと思ってる!」
「おい! 言い過ぎだ!」
「あなたはこう言うの好きだから受け入れられるかもしれないけど、普通は無理よ。怖いし気持ち悪いじゃないの!」
『あなたのことは嫌いだ』
「あ、ディーネ……いっちゃった。エマ、エルマ一緒にいてあげて」
『分かった』
『行ってくるね』
『その人嫌』
『バイバイ』
「ごめん。ナナ、みなとも泣いてる。ごめんな。カイくんとソラくんもおばあちゃんのところに戻りなさい。悪かったね」
パパがぼくをだっこしてくれた。
カイくんとソラくんが手をツンツンしてる。ぼくはこわかったけど目を開けた。
「みなと、バイバイ」
「またね」
ぼくは声がでなかった。手も耳からはなせない。
『お嬢さん、きみは人間なら誰でもお友達になれるかい?』
「そんな訳ないでしょ、何いきなり話逸らして」
『ならどうして我々とは分かり合えないと決めつける』
「そんなのよくわかんない生き物だから……」
『言葉がかわせる人間通し、分かり合えるばかりではなかろう。我々だってお友達になれるなれないなんて、一緒に過ごしてみないと分からない。嫌なものは嫌、そんなもんじゃろ』
「そうよね、今のは言い過ぎだったって。あとでちゃんとディーネに謝ってよ、私の大切なお友達よ」
「それはそうかもだけど、そこは我慢できても、みなとはやっぱり……まだ8歳だし」
『その産まれたばかりの子はまだどうなるか分からん、これから一緒に育てていってくれたらよいと思うのじゃが』
「そうそう。仲良くなれるかどうかはこれからじゃん? 産まれたばかりの赤ちゃん拾ったら、育てなちゃって思うもんじゃないの?」
「そりゃ赤ちゃん捨てる親なんて意味分かんないけど」
『今その子の親はあんたの子ども、その子じゃ』
「なんで? このドラゴンの親は?」
『そばにいないということは、もう死んでいるかもしれん。この種は子育てをしっかりするからの。長い時間を生きるから卵も珍しいじゃ。そばを離れることはないはずじゃ』
「じゃあみなとが拾ったから、無事に産まれてきたけど見つけられなかったそのままだった可能性もあるのか」
「そうなるわね。この混乱のせいなのか、あっちの世界がおかしくなってるせいだったのか、どちらにせよ親がいない卵を見つけたってことか」
「…………」
「ほらほら、子育て中の親としてどうなのよ」
「…………」
「私だってこの混乱の中、必死で頑張ってたらみんなが力貸してくれたのよ。人間じゃないドラゴンだったけど」
「…………」
ママがこっちを見てだっこしていいかって口を動かしてる。
ぼくは耳におしつけてた手をはずした。
「ごめんなさい。ぼくもうこの子はナナちゃんにわたすから。もうおこらないで」
「ううん。ママの方こそごめんね、いっぱい大きな声出して。みなと怖かったよね」
「うん」
「今ね、みんなと話したの。そのドラゴンの赤ちゃん、パパとママいなくなっちゃって、みなとが見つけてくれたんだって。だからミナトかパパとママの代わりをしてあげるようなんだけど、ちゃんとできる?」
「ぼくこの子のおせわする」
「パパとママもお手伝いするから、一緒に頑張れるね?」
「大丈夫。がんばるよ」
「うん。何かあったらナナちゃんにも聞いて」
「うん」
『わしらもいるからの』
『おじいちゃんドラゴン』
「さかきおじいちゃんだよ。あとでみんな紹介するよ」
「サカキ、おじいちゃん』
『うむ。その子にも名前をつけておやり』
この子の名前、オレンジ色のトカゲみたいなドラゴン。卵がばくはつして産まれてきた。
いつの間にかとんでいたみたいで、ぼくの近くをふわふわしている。
「ねえ、バーンってお名前はどう?」
ドラゴンはよくわかってないみたいにまだふわふわとんでる。
「バーンだよ、バーン」
よばれてると思ってくれたみたいで、ぼくのほっぺにくっついてきた。
近くに手を出したら、手にのってきてくれた。気になるのか、ぐるぐると手のひらと手のこうを行ったり来たりしてる。
「お、燃えるか、火っぽいね」
「うん? 卵、ばくはつしたから。バーンなんだ」
「いいじゃない。センスあるよ」
『これからは一緒に大きくなるといい。良き友として』
「兄弟できたみたいじゃん、みなと頑張れよ」
手のひらであそんでいるみたい。
手をくるくる動かすと、よろこんでとびまわってる。
「みなと、手のひらよく見てごらん」
他になにかある? もようみたいななにか、書いてあるみたい。
「なあに?」
「私とおそろい。ドラゴンライダーの印みたいなやつ」
「すごいじゃん、みなとドラゴンライダーだって」
「リリーみたいになれるといいな」
大好きなリリー。何ができるかわからないけど、ぼくはドラゴンライダーになるかもしれない。
少しうれしくなった。
『その子力を食べるほど大きくなる。今ヘイくらいの大きさくらいかの。だがおそらくあちらの世界にあった卵がこちらの世界へ運ばれてきて、人の手の上で産まれておる。どうなるかは分からぬ』
「火を食べるって話だっけ?」
『そうじゃが、他の生き物も食べるはずじゃ。草木などを食べてるところは見たことはない気がするの』
「火と肉? あげればいいってことかしら」
「この卵、火の中にあったよ」
「うちの庭先で見つけたんだよな」
「うん」
『こちらの世界の火を浴びて力がついたのかもしれん。ますますどうなっても同じくなさそうじゃ。まだ幼子じゃ、力も弱く、ナナが補助して孵ったからナナの言うことも聞くじゃろ。手助けしてやれ』
「頑張ります」
「ぼくも」
ナナちゃんとバーンといっしょに、少しずつがんばってみようと思った。
3月11日 晴れ
赤いきれいな石は、ドラゴンの卵でした。
ぼくはドラゴンといっしょにいることになりました。名前はバーンです。オレンジ色のきれいなちっちゃい赤ちゃんドラゴンです。これから頑張って育てます。
ナナちゃんがいっしょにサカキおじいちゃんとお勉強しようと言ってます。楽しみです。




