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彼女が昔ニンゲンだった時  作者: 志摩
2-1  ドラゴンのいる生活
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2、昔話をしよう 壱




 日も暮れてみんなが食事を終えて、私たちもそろそろ戻ろうかという頃だった。

 パンの木は生やしたまま、いっぱいの実をつけた状態になっている。今後は必要な分だけ取って自然に実のなるのを待ってもらうことになった。この実は成長が早く、食料には適しているそうだ。

 私たち家族は学校ではなく自分の家に帰ると先生たちに伝えたところ、あまり良い反応が返ってこなかった。

  





「できればここに残っていてほしい。ドラゴンたちに守ってもらっていると心強いんだ」

「みんな不安だから、あなた達がいるだけで安心します」

「何かあっても大丈夫ですよね、是非残ってもらいたいな」

「こんなにたくさんのドラゴンがいるってことは、他の生き物だってたくさんいるんだろう? そいつらが絶対襲ってこないなんて言えないじゃないか」

「そうですよ、怖いですよね」

 そんな話が聞こえてくる。




『絶対に襲ってこないと思うけどね』

 小さくなって私のそばにいたディーネが答えた。

『彼らだって、きちんと考える頭がある。私たちとの信頼もある。君たちが手を出したりしなければ、仕返しに来ることはない』

 ディーネが安心させるために言った言葉に安心する人も、不安を残したままの人もいた。誰かが話している声がして、1人が少し大きなを出した。

「そんなこと言われても、私たちは信じることができないと思いませんか? だって見たことないし話したこともない謎の生き物のことを間接的に聞いてるだけなんですよ?」

 一瞬で空気が凍った気がした。

「だとするならこのドラゴンたちに助けを求めるは筋違いじゃないの?」

 私ははっきり言った。

 無責任な人がここにもいた。先生たちも一枚岩という訳ではないのだろう。私たちを前にここまで言ってくるとは、もう少し遠慮して欲しいものだ。

「そうよね、彼はちょっと間違ったことを言ったと思う。ごめんなさいね」

 私の様子を見て驚いたイモコ先生は、割って入るように私の前に来た。

「ちょっとあんたもその顔やめなさい、人でも殺しそうな顔してるわよ」

 先生が私に小さな声で耳打ちしてきた。

「まあまあ、今日はお家に帰ると言ってるんですから。帰ってもらって大丈夫ですよ」

 奥から常磐先生が出てきて、私に早く行きなさいと言ってくれた。この場をおさめてくれそうだった。

 私はエマとエルマに家族たちを連れて帰るように頼み、先に外に行ってもらって帰らせた。

 ヘイとディーネ、サカキおじいちゃんは私と一緒にまだ体育館の側に残っていた。このあと先生たちはどんな話をするのか、きになつたからだ。

 常盤先生が、何人か先生を連れて行った。あの人たちが私たちに残ってほしいと言っていた人たちなのだろう。

 先生たちは少しずつ解散していき、私の方へ視線を送る人は誰もいなくなった。

「ごめんなさいね」

 氷之沢先生が近寄ってきてそっと声をかけてきた。

「まだまだ頭と心の整理ができない人もいるのよ。時間が経てば落ち着くと思うんだけど。代わりに謝るわ」

「いえ、私も強く言ってしまったので、煽ってしまったのかも」

「あなたは悪くはないわ。こちらももう少しみんなと情報共有しないとダメね」

『私たちも少し話をした方がよさそうだと思う。世界が今はまだ変化の段階だ。これから先どんな様子になるのか未確定ではあるが、分かっていることを確認していく必要があるだろう』

 ディーネの言葉に、私と氷之沢先生は頷いた。

「話をする時間が少し足りない気はするね。私たちも自分たちのことはなんとかしてるけど、世界の様子なんてことまでは手が回らないよ」

「私たちがわかっていることなんてほとんどないわ。あなたたちとゆっくり話す場が必要でしょうね」

『わしがいるからの。少しは話が進むと思うぞ』

 サカキおじいちゃんがディーネからゆっくり降りてきた。

『情報は束ねてはじめて形となる、わしがその役割を果たそう』

「おじいちゃん、そんなことできるの?

『わしはこれでもかなり優秀だったんだ』

 ディーネの方を見ると、とても嫌そうな顔をしていた。

『じい様の話は長くなるぞ』

「この小さいおじいさん? 何者なの?」

 氷之沢先生には付き合ってもらうしかなさそうだ。

「えっと、時間かかりそうならとりあえずちゃんとしたところで話しましょうか」

 私は今にも語り出しそうなサカキおじいちゃんを黙らせて、場所を探した。氷之沢先生が校長室を使っていいと言ってくれたので、すぐそっちへ移動した。





 氷之沢先生が飯富先生も連れてきて、人間が3人とドラゴン2人とオマケの1人で情報を束ねて形にする作業をすることになってしまった。

「サカキおじいちゃんは、すごく長生きで博識なドラゴンのようです」

 軽く説明すると、サカキおじいちゃんはテーブルの上にちょこんと乗った。

『私がサカキおじいちゃんです』

「それはそれは、ご紹介ありがとうございます」

 飯富先生がユーモアのある方でよかった。

「おじいちゃんが少し話をしたいそうなので、お付き合いお願いします」

『この世界のことを聞く前に、まずはわしらがいた世界の話をしましょう。その方が整理がしやすいでしょう』

 かしこまっているが、自分が話したいだけじゃないだろうか。なんだかとても不安になってきた。

 先生たちは少し緊張した雰囲気で頷いた。




『どれどれ、それでは少し昔話をしようかの。

 まず初めに、世界の成り立ちの、なんというか、……神話というのか、それをお話ししよう。



 世界のはじまりは、一面の闇。無数の光が漂うよう混沌。大いなる力が降り注ぎ、まずひと握りの砂が降りそれは次第に膨らんでいき大地が生まれた。大地は次第に山と谷を作るほどおおきくなると、歪みが起きてひび割れた大地にはやがて泉が湧き出た。泉が広がり川となり、川は大きく流れていきいくつかが交わると海になった。海が大きくなりそこには雲が生まれてやがて雨が降った。雨は緑を育て、時には稲妻と氷を撒き散らして大地を削り、緑は炎に焼かれた。炎が嵐を起こし、毒を撒き散らし、それは雨にかき消された。大地には焼けた土と鋼が残り、嵐が大地を空に飛ばした。緑がゆっくりと毒を癒し、世界には少しずつ命が生まれた。

 闇、光、大地、雨、緑、雷、氷、炎、嵐、毒、鋼、空。

 わしらの仕えた王にはこの世界創設の神話から12の自然に因んだ名前をもらって、それぞれに騎士がいた。

 わしはその騎士ではないが、知識に対しての好奇心から、世界のあらゆることを調べてまとめる役割を任されていた。

 各地を巡っていろんなことを見聞きして、それを王に伝える。そんな生活をしていた。

 まだまだ若かった頃の話だ。

 その頃は君たち人間のような生き物がまだ生きていた頃で、彼らはーペソーと呼ばれていた。

 彼らはそれなりに数がいたんだが私の幼い頃にはその弱さゆえに数を減らし、もう残りわずかの集落しか残っていなかった。その時の王、そやつは人を保護するという意味で私たちの種族ーランーと過ごしていた。

 その頃にーバムイーがいた。ペソとランでの夫婦のような意味合いで使われておった。実際のところ、人間と夫婦だということではなくて家族や子どものような、守るべき親しいもののような感じだった。


 




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