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彼女が昔ニンゲンだった時  作者: 志摩
1-3  変わる世界
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2、私たちの変化


 




 夕べはナナの両親の家でみんなで食事をして、ナナとエマ、エルマ、ヘイと私だけはナナの家で眠った。

 ヘイは身体を小さくしてナナと一緒に眠り、私たち3人は駐車場という場所で丸まって眠った。

 この世界は人間のサイズで色んなものができているので、我々には少々窮屈だった。

 ヘイのように身体の大きさを変えることができれば、もう少しやりやすいのかもしれない。もしくは、人間の姿を真似るか。これ以上面倒な出来事が起きれば、それも考えないとならないだろう。




 おそらくもう夜が明けた頃合いだろうに、光は見えず、夜のような薄暗いままだった。昨日まで青い空だったのに、今日は黒い空になっていた。

『懐かしい夢を見た』

 身体を起こし、大きく息を吸った。

 すぐ近くで眠っていたエマとエルマも頭を上げている、起こしてしまったようだ。

『『おはよう』』

『おはよう』

 2人も周りを見渡し、空の様子に不安そうな顔をしている。

『嫌な雲だね』

『あの時の雲みたい』

 きっと、私と同じ時を思い浮かべているのだろう。

『ヘイの卵を見つけた時を思い出すよ』

『ヘイの力、まだ不安定だからね』

『引っ張られないといいけど』

 ナナの家の方を見た。

 まだ起きた気配がない、よっぽど疲れているのだろう。こんなに騒がしい空模様なのに、気がつかないとは。

『ナナがついているから、何も起こらないといいけれど』

『ナナ少し変わったよね』

『初めて会った時と違う』

『そうだね』

 初めて会った時のナナは、特別な力を持つわけでもなく、そこら辺の人間となんら変わりなかったと思う。

 私を見ても、泣き叫ぶことなく、逃げることもなく、状況を伺っていた。

 もしかするとその芯の強さが特別だったのかもしれない。

『エマとエルマ』

『ヘイも』

『私も』

『『混ざってる』』

 契約者となったナナは、その身体に私たちの名前が刻まれた。私にも初めての状況なので、これからどうなっていくのか、しっかり見定めないとならないだろう。

 そもそも契約できたことが不思議だ。ナナも言っていたが、この世界には人間しかいないはずなのに。 

『私たちは身体が戻ったけだ、縮んでる』

『ディーネも、小さくなったね』

『そうだ、不思議なことばかりだ』

 この世界にきて、少し時間が経ったから身体が馴染んできたのだろうか。

『ヘイも不思議』

『変わってるよね』

『まだ生まれたばかりだからね』

 今日の空模様はとても嫌な雰囲気だ。

 雲のせいだけではないかもしれない。なんというか嫌な力に満ちているような。

『さて、今日は何も起こらないといいが』

 ナナと出会ってから新しく知ることばかりで面白いのだが、ヘイのこともあって不安がないわけでない。

 そもそもこの世界に、世界ごと運んだ力の持ち主は一体誰なのか。そしてどうしてこうなったのか、話せる者なら聞かせてもらいたい。

 私もナナの意識や気持ちが伝わってくるようになって、少し変わった気がする。エマとエルマも、元々こんなに世話を焼く訳ではなく、ただじっと見守るようなやつだった。

 ナナとの契約によって生まれる変化はナナだけのものではない、私たちも同じだろう。










 私がこの世界に落ちてきた時、どこかの川の上空だった。私は卵を抱えていて、共に卵を守っていたエマとエルマもすぐそばにいた。

 私たちが転移した事は分かった、しかしそれが別の世界であると理解するのには少し時間がかかった。

 大地が力を受け入れきれず悲鳴を上げて震えていた。

 沢山の生き物の気配、声、そして力の衝突する音。大きな力の影響を受けて、私たちの身体にもなんらかの違和感が生じていた。

 私の身体は少しずつ力が抜けて縮んでいき、元の半分くらいでやっと落ち着いた。

 エマとエルマも身体が半分になった。双子だったのに、1人ずつに別れた。

 変化して上手く身動きの取れないエマとエルマに卵の側に残ってもらって散策に出た。どこか身を隠せる場所を探して隠れているようにと。私たちならきっとまた出会える、そんなに遠くまで行くつもりはない。私が何者かに捕まらない限りは大丈夫だろう。

 


 あたりを散策してわかった、この世界は私たちの世界と似ている部分が多い。水もある、緑もある、だかしかし空には雲しかない。そして見慣れない建造物があること、そして私たちの世界では滅びたはずの種族、人間が沢山いた。そして私と同じ姿の生き物の姿がないことも分かった。



 私の姿を見ると、人間は恐れ逃げていった。何をしたわけでもない、ただ空を飛んでいただけ。それだけで死んでしまうものもいた。

 沢山の生き残ったものたちも私同様この世界に移って混乱している様子がわかった。

 ところどころ聞こえてくる不快な音、皮膚に伝わる不快感、そして変化している身体、対応できないものはそのまま狂い死んでしまうかもしれない。

 なんとかしなければ。

 我々の一族では誰も解決できなかった世界の終わり。それをもっと上位のものが残った生き物たちだけでも転移という形で救った。

 なんとか生き残ったというのに、この変化に身体が壊れてしまうなんて。せっかく生きる機会を与えられたのに、また命を危険に晒されるなんて。

 世界はいつも理不尽で容赦がない。

 こんな時に王がいたなら、きっと助け舟を出すだろう。

 



 何かが争っている音がする。

 まだこの世界のことがよくわかっていないまま、人間たちと争うのは避けたい。

 色々なところを飛び回ってみるが、人間は私たちと戦う意思はなさそうだった。姿を見れば逃げていく、なんと心の弱い生き物だろう。

 人間を襲っている者たちも今の所はいない、お互いに姿を見れば様子を見ている感じだろうか。

 

『ーー』

 何かの叫び声が聞こえる。この声の主もまた、この世界の何かが身体に合わず不快でおかしくなっているのかもしれない。

『ーー』

 ひたすら叫び狂い、暴れ回っている様子だ。一体何が起きているのかと、見に行ってみると、そこには暴れる獣と人間がいた。

 

 私を見つめる目は少し恐怖を宿していたが、そらすことなくまっすぐ向けられていた。










 家の方を覗き込んでみるが、なんの気配も感じられなかった。

『なかなか起きてこないね』

『起こしてみる?』

 エマとエルマも少し心配なようだ。

 しかし身体の大きさ的にこの中に入ることは難しい、ヘイのように身体の大きさを変えることができればいいのだが。

『小さくなってみるか?』

 エマとエルマは顔を見合わせて少し嫌そうな顔をしていた。

『ヘイみたいに?』

『元に戻れないと困るけど』

『それはそうだな』

 そうは言いながらも2人して首を傾げながら、小声で相談し合って何か動いていた。

 私より先にできるようになろうとしているのかもしれない。全く負けず嫌いなのだから。

 かくいう私もそっと目を閉じてみる。

 きっと想像の問題だろう、今まで考えたことがなかったからできなかっただけだ。水を操る時と同じだろう。













 私たちはナナたちが起きた時にはヘイと同じくらいの大きさになっていた。










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