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彼女が昔ニンゲンだった時  作者: 志摩
1-2  ドラゴンと魔法
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5、魔法の可能性





『それにしてもあのドラゴンたちすごかったわね』

「2人が合体したね! ロボットみたいだったよねー」



 子ども2人が楽しそうに話している。

 こうしていると普通の子どもなんだけどな。

 髪の毛の色が普通じゃないけれど。

「そうなの、すごいわね」

 氷之沢先生がなんとなくで参加している。

『使える力も大きくなってたわ、元々はあの形だったのかもね』

「ホントは1人なの?」

「そんなことあるんだね」

 元々1人だったドラゴンが、2人になったり、また1人になったり。魔法があるならもうなんでもありという感じだ。

『私たちだって見てただけだから、本当のところは本人たちに聞いた方がいいわよ』

 確かに、ナナさんはディーネさん? と普通に会話しているようだ。私たちも話しかければ答えてくれそうだけど、なんとなく話しかけにくい。私なんかが話してもいいのかと思う。でもそんなことを言っていたら一生お近づきになれない。

「まあ、そうだよね。あのドラゴンたちは会話できるっぽいし」

「そうなのよね、言葉分かってるみたいだったわ。不思議よね」

 氷之沢先生、もう声聞こえてるんじゃないかばりに普通に会話に参加していてもうなんか、言葉が見つからないけどすごい。

 あやめちゃんも気にしてないのか普通に話している。

『あの黒いドラゴンが1番不思議よ、体が大きくなったり小さくなったり。自由自在なんでもなれそう。もしかしたら人にもなれそうよね』

「人の形になったら、ドラゴンだって言われないとわかんないんだから、もう何が何だか」

『……』

 突然あやめちゃんが黙り込んだ。

 マリイちゃんも何か変だと思ったのか、あやめちゃんの方をじっと見ている。

「大丈夫?」

 私が声をかけると、マリイちゃんに制された。静かにしてと、唇にバツをつけられた。

『家の修理したみたいだね、もう帰ってくるわ』

「よくわかるね」

『近くに知り合いがいるのよ、だから教えてくれる』

 なんとも便利な力である。

「あやめの花たちはみんな繋がってて、みんなのお話が聞けるって前に言ってたよ」

「素晴らしいわね、監視カメラみたいじゃない」

 あやめの花があるところでは悪さはできないなと思った。

「そういえば、この光の粒みたいなのって、あやめちゃんは見えるの?」

『光の粒なんて見えないけど、気の流れと同じだと思う』

 あやめちゃんは私の顔の前に、人差し指だけを立ててその両手を近づけてきた。

 指先に光の粒が集まっていって、りんごくらいのサイズになる。だんだん粒が馴染んでいき、大きな水滴のようなものが宙に漂うようになる。それは次第に圧縮され縮んでいき、消えた、と思った時にはあやめの花が1輪現れた。

「魔法だ!」

「あやめのお花だー」

『こんなのは難しくないわよ、私の一部のようなものだから』

 あやめちゃんは当然でしょと、当たり前のような顔をしている。マリイちゃんも特に驚く訳でもなく、普通に花を手に取っていた。

「どうしたの、お花が出てきたわね」

「あやめちゃんの魔法? ですかね」

「そうだよ、すごいでしょ。あやめはいつもお花出してくれるんだよ」

 氷之沢先生はかなり驚いていたが、マリイちゃんのフォローのおかげかそこまで騒ぎにはならなかった。

 そんなこんなで盛り上がっていると、あやめちゃんが空を見上げ一言。

『きたわ』

 遠くの空に小さくドラゴンの姿が見える。

 ナナさんたちだった。





「ただいまー」

 どすんと飛び降りてきて駆け寄ってきた。

「おかえりなさい」

 氷之沢先生がお出迎えした。

 私はマリイちゃんと手を繋ぎ、そのまま保育園の階段に座って待った。

 ドラゴンたちは2匹は大きいまま、黒い子は小さくなって離れたところで待っていた。

 保育園が近いと黒い子がまた遊んでしまうのを警戒しているようだった。




「いやー直ったよー! これで家に帰れるわー」

「みんなの家も直せるの?」

「直せなくはない、けど、壊れ過ぎてるのは無理。それに全員の家をやるのは現実的に厳しいと思う」

「そうよね」

「私の場合は、ドラゴンたちとここで暮らすのは無理だろうからって気持ちがあるのと、私やドラゴンたちに嫌な視線を送ってくる人たちから離れたいからって気持ちもあるから、何としても直したかったから」

「それは私たちも感じてるわ。ナナさんたちのこと、すごいって思ってる人たちは確かにいる。けど、それをよく思わなかったり、なんでナナさんだけがって思っている人たちがいる」

「さくらちゃんも気をつけてね」




「私も?」


 いきなりこちらまで話を振られて驚いた。なんとなく関係のない話だろうと聞き流していた。

「そうよ、魔法使いさん」

「あぁ、私も特別な側の人間になるのか」

 魔法の素質があるのは、この辺りでは私とナナさんしかいないと言っていた。

「みんな、新しい世界の人達なのね」

 氷之沢先生が羨ましそうな、少し残念そうな顔をしている。

「妖精がお友達の女の子に、ドラゴンの女神と、魔法使いの見習いさん。今までの世界では信じられなかった言葉よ、今でこそありえるけど」

「確かに。ホント、つい先週は何も変わらない毎日だったのに。こんなことになるなんて思いもしなかった」

『まだ昨日のお昼なんで、2日目ですけどね』

「ですけどね」

 あやめちゃんとマリイちゃんの厳しいツッコミが入った。

「いやー、私忙しくてもう1週間くらいだったかと…」

「経ってないわね」

 氷之沢先生からも厳しいツッコミだった。

「……早く落ち着いて寝たいです」

 ナナさんは顔を伏せて逃げた。流れにのって、私もツッコミを入れてみる。

「私は早く魔法が使いたいです」

「マリイも魔法使いたい!」

『マリイはまず気の流れを掴むとこからね』

 あやめちゃんがマリイちゃんを宥めていた。いやそれよりも、

「練習すればマリイちゃんもできるの?」

「それそれ! どういうこと?」

『マリイは赤ちゃんの頃は私のこと見えてなかったと思う。一番最初に会った時はね。でもずっと一緒にいたから、いつの間にかお話もできたし、一緒に遊ぶようになった』

 マリイちゃんはあやめちゃんに頭を撫でられ、優しく見つめられて少し恥ずかしそう。

『私といる事で間接的だけど、力の影響を受けたんだと思う。私がすごいってこともあるし、住んでる場所もあるんだろうけど。これからもっと何かできるようになると思うよ』

「つまり一緒にいる時間の中で変化したと」

『そうね。まして世界は今こんな有様だし。今までのわずかな力を集める訳でもなく、世界中が力で溢れている。きっと人々も少しずつ変化していくわ』

「それは楽しみだ」

 ナナさんがうんうんと納得している傍らで、氷之沢先生が私に説明を求めてきた。

「ねえ、詳しく」

 なんだかこの説明の作業、だんだんとめんどくさくなってきてしまった。このまま話を続けたら日が暮れそうだ。


 氷之沢先生に簡単に説明していると、先生たちが何人か集まってきていた。




「揃いました! 物資確保行きましょう!」

 富岡先生が元気いっぱいにやってきた。

 あとは千波先生と、知らない若めの男の人が何人か。荷物運びのための人選のようだった。

「じゃあ私たちは中に入りましょうか」

 氷之沢先生はマリイちゃんの手を取って保育園のお部屋の中に向かった。

 私もついて行こうかと思うと、ナナさんに止められた。ガシッと首の後ろに腕が回されていた。

「さくらちゃんは、ちょっと現場行こうよ。せっかく良い目してるから」

「かしこまりました…」

 守られていたポジションだったのに、これからは最前線に立つようになるのかと思うと気が重い。まだまだよく分からない自分の力とその使い方、なんとか上手く使いこなさないと身を滅ぼしてしまいそう。


 こうして私たちは昨日運ばれてきたバスに乗ってドラゴンの足で運ばれて、物資確保に向かった。








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