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彼女が昔ニンゲンだった時  作者: 志摩
1-2  ドラゴンと魔法
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4、新しいドラゴン






「この子がマリイちゃん、すぐ隣にあやめちゃん。見えるかな?」 




「うん、見えるよ」

 ナナさんが連れてきた2人の女の子。青いワンピースと、緑のワンピース姿。私にはちゃんと見えていた。何が見えないのか分からないほど、普通の子どもに見える。

 妖精だというのはきっと紫の髪色をした、少し異世界の雰囲気が漂う女の子。2人とも背格好も顔立ちも似ているように見えるが、あやめちゃんは何というか気配が子どもらしくない。

『初めまして、魔法使いさん』

「え! この人魔法使いなの?」

「えっと、多分ね」

 どこから聞いてきたのか、まだ私にもよく分からない魔法使いだという話。

「その話ね、私も気になってるんだ」

 ナナさんまで食いついてきて、これはもう逃げられない雰囲気だった。そんなに見つめられても私は何も分からない、それよりもドラゴンに聞いた方がいい。

 すぐ近くにいたドラゴンたちの方を見ると、気がついたのか頭を下げてくれた。

『さくら、とナナも魔法使えるはずだよ』

『教えてあげるよ』

『頑張ってね』

「え? 私も?」

 ナナさんは自分も魔法が使えることに気がついてなかったようだ。私が見えている光の粒は見えていないようだし、ドラゴンの契約者? らしいから、私と同じ状況ではないのは確か。それでも今のところは私たちだけが魔法使いの素質あり。

『まあ、それはあとで』

「うん、とりあえず今は今日の夜をより人間らしく生きるために食べ物を探しに行きます」

 ナナさんは1人でガッツポーズをしていた。

 マリイちゃんが訳もわからず拍手している。

「ナナさんはこれから出かけるの?」

「そうだよ。このさくらお姉ちゃん、あやめちゃん見えるみたいだから少しお話ししてて欲しいんだ」

『私は大丈夫よ、マリイはみんなのところに戻ってもらう?』

「いや、氷之沢先生って女の先生くるから大丈夫。マリイちゃんにも少し話聞こうと思って」

『わかった』

「はーい」

 2人はそれぞれ返事をしていた。

 こうして見ていると、ナナさんも普通のお母さんなんだと感じる。ドラゴンに乗っていると、この世にはありえないもの感が強すぎて人間離れして見える。

『女の人出てきたよ』

「わかった、ありがと」

 ナナさんは小走りで先生を迎えに行って、話をしながらこちらへ歩いてくる。何を話しているのかまでは聞こえない。私は一体どうしたものかと途方に暮れていると、あやめちゃんが私の方へふわっと飛んできて、顔を覗き込んできた。

『私の話を聞いといてって言われたんでしょ?』

「そうなんだけど、どんな話をするのかは聞いてないんだよね」

『そうなの』

 呆れた顔をしてそのままふわふわ浮いていた。こうしてみると、本当に人間ではないのだとわかる。

 今まで幽霊なんて、そんなものを見たことはなかった。あやめちゃんの姿が見えるということは、やっぱり私はどこかが変わってしまったのだろう。これからは私の見える世界がみんなとは違うということを頭の片隅に置いておかないといけなくなりそうだ。

「氷之沢先生来たから、私1度家に戻りまーす。すぐ戻ってくるから」

 ナナさんは戻ってくるなりそう叫んで、ドラゴンたちと一緒に行ってしまった。





 私とあやめちゃん、氷之沢先生とマリイちゃんの4人はとりあえず向き合ってみた。

『なんの話をするの?』

 あやめちゃんが氷之沢先生に向かって言ったようだが、先生には聞こえないようだった。

「先生、あやめちゃんって見えてます?」

「ごめんなさい。見えてないです」

『あらそう、そうよね。この人はなんの力もなさそう』

 あやめちゃんはじーっと先生を見つめて、諦めたように言った。

 こうなると、私は通訳になれば問題ない。

「何の話をするのか聞いてますよね?」

 氷之沢先生に尋ねると、先生は困ったように笑っていた。

「まあ、色々好きに話してもらいましょう。私たちには今情報が足りないの。ナナさんからはドラゴンの情報を聞いて欲しいってこと、あとはあやめちゃんとマリイちゃんの力? 能力について何かわかると嬉しいなってことだったわ」

「それ結構難しい内容じゃないの? 子どもにわかるわけ……」

 私は本音がついほろっと出てしまい、はっと口を塞いだ。

『ドラゴンの話は私からしましょう』

 あやめちゃんが私の方を指さして、少し怒ったように言っている。

『私はあなたより年上よ、それにあっちの先生よりも上よ』

「えー、そんなの詐欺じゃん!」

『私の姿はマリイに寄せてるからよ。私たちの姿なんて、あるようでないようなものだから。気にしたら負けよ』

 なんだか騙された気分、それにこの上からな感じは生意気な子どもを目にしているようでもやもやする。

「なんて言ってるの?」

 氷之沢先生が不安そうに私の方へ声をかけた。

「私や先生より年上なんだって言ってます」

「そうなのね。分かりました」

 先生は頭を下げて、簡単に自己紹介をした。

「この学校の氷之沢と言います。今子どもたちのケアや治療をしてます」

『あら、礼儀正しいわね。話が早いわ』

 あやめちゃんが満足そうに微笑んでいた。   

 マリイちゃんも合わせてお辞儀をした。

「あやめ、みんなとドラゴンの話するって」

「そうなの、助かるわ」

 氷之沢先生はマリイちゃんの手を引いていき、保育園のそばの階段のところに座った。

「みんなで座って話しましょ」

「はーい」

 先生、マリイちゃん、私、そして反対側にはあやめちゃんがふわふわ浮いている状態で話は始まった。







『私が話したドラゴンは、少し離れた地域の森の中にいたわ。泉があって、川になっている場所があるんだけど、そこにもあやめの花が咲いているから。そこに飛んでいるのを見たからなの。

 大きなドラゴンじゃなくて、小さなトカゲみたいなヘビみたいな。そんな感じなやつ。会話はうまくできなかったから、詳しく状況は分からなかった。

 ただ隠れたいとか、そんな感じだったと思う。少しの間でもいいから、ここにいてもいいだろうかって。

 同じような力を持っているから雰囲気で感じ取ったようなもので、ほとんど言葉は通じなかったの。

 ディーネは少し時間が経てば慣れて、話もできるようになると思うって言ってたよ。

 私が分かるのはそのくらいかしら。


 あ、あと、多分とても長く生きている生き物だと思う。とても重い気配というか、凄みというか、そんな雰囲気だった。だから会話ができれば色んな知識が得られるかもしれないわ。私たちの仲間もやっぱり、長く生きている人たちは知識をたくさん持ってるでしょ。その分力が強かったり、頭が固いかもしれないから、厄介な面もあるけど。


 今はあやめの花がそばにあるところには姿はないわね。でも私たち草木の持つ力とと同じような力を感じたから、なんとなく居場所はわかると思う』




「なるほどねえ。その森のドラゴンもナナさんは仲間にしたいんだ」

 私は聞いた話をそのまま氷之沢先生にも伝えた。

「そうでしょうね、敵にはしたくないでしょう」

「そりゃそうですよね」

 こんな訳のわからないもので溢れかえった状況で、力のあるものを味方につけたいのは当たり前だろう。

 この目の前でふわふわ浮いてる異世界チックなあやめちゃんも、実はものすごく強いのかもしれない。

「マリイちゃんはあやめちゃんと仲良しなんだよね?」

「そうだよー。赤ちゃんの頃からずっと一緒なの」

「そうなんだ」

『私の子守唄でよく寝たものよ。歩けるようになってからはずっと一緒に遊んでた。あやめの花が咲いている間は花たちと一緒にね』

「へー」

『今は私も力がもりもりで溢れてるから、こうやってずっと姿を見せていられる。今までと力の流れが変わってるわ。この世界も今はまだ変化の途中みたいだし。あなたも力があるなら、私が使い方を教えてあげてもいいんだけど。ドラゴンが教えてくれるなら、必要ないかしら』

「あやめちゃんも魔法使えるの?」

 氷之沢先生が何を言ってるのという顔で待っている。ちょっと待っててもらって、とりあえず話を続ける。

『魔法と呼ぶのか分からないけど、気の流れを操るのと同じだと思うのよね。根本的には』

「そうなんだ」

 魔法と気と、幽霊と精霊とか、ドラゴンとか、難しいことがいっぱいで、魔法使いになるとしたらやることはいっぱいありそうだ。

 そもそも教科書なんてないだろうから、ゼロからのスタートになるのは分かりきっている。

「先生、魔法使いになるのは大変そうです」

「そりゃ、何をやるにも一人前になるのは大変なんですよ。私もなれるものならなってみたいな、魔法使い」

 当たり前のことを言わないのと少し怒られてしまった。先生は魔法使いになれない。それは先生もきっとわかっているんだ。

 素質ありなのは私とナナさんだけらしい。

 これから頑張らないと。

『この世界が元に戻るか分からないし、ひとまずは魔法使いになってみたらいいのよ。まあ努力次第でしょうけど』

「はいはい」

 あやめちゃんは私に手厳しいようだけど、教えてあげるというくらいには優しい。ナナさんたちはまだまだ生活のためにやることが多そうだし、私だけでもこの力を使いこなせるようになれば役に立てるかもしれない。



「とりあえずは、なんでもやってみるべし。かなぁ」

 


 こうして私の魔法使いへの道はスタートすることになった。



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