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彼女が昔ニンゲンだった時  作者: 志摩
プロローグ
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1、厳しい現実



 今日は実家の片付けをしなければならない。祖母が亡くなって1ヶ月経っただろうか、ようやくは色々なことが落ち着いてきて、1人かけてしまった新しい生活に慣れてきたところだ。

 そろそろ祖母がいた部屋を片付け、使わないものは整理して、これからは完全に祖母がいない生活になるだろう。旦那は休めず、娘は幼稚園に行き、父と母は半休を取って午後から掃除の予定を立てていた。

 私は自分の家の家事をひと通り終えて家を出た。もう正午のチャイムが響いている。どこかで軽食を買って行こう。片手間に食べる時間しか取れないだろうから。

 車は太陽の熱で温められ軽く蒸していて、窓からの風を受けながら、今日のランチを考えていた。

 このところ景気はますます悪く、この前も大きな地震があったばかり。子供の頃のように大地震だのなんだのと騒ぎ立てることもなく、世間でも誰が心配するふうでもなく、気に留める基準が変わっていた。

 今度はいつまで水が出ないんだ、電気は消えるのか、食べ物の備蓄はどうだと、みんな他人任せに聞いて回る。自分たちだけではやっていけない。災害が起き、配給が回ってきて首がつながっている家庭もある。

 我が家だって私だって、働いて稼げるならもっといろんなものを買いたい、美味しものを食べたい。生活できるギリギリラインでしかない。贅沢を言ってはいけないのだろうが、上には上があるし、下にも下はある。

 今の生活に満足してないなら努力すればいいなんてのは今の事態では難しい。何をするにも申請だの許可だの、働きに行きたくても仕事があるわけでもなく、今日だって少しでもお金になるように、家にある使わないものを片付けに行く。

 祖母が死んでまだ、それとももう、1ヶ月経っている。寂しいなんて、悲しいなんて、言っている暇はない。私たちが生きるためには仕方がない、祖母はもういないのだから。

 ぬるい風に打たれながら、ほとんど車が走らない道路をのろのろと進む。

 もうこの地域には1箇所だけになったスーパーへ寄って、一番安い惣菜を買うしかないだろう。時間がないからと急いで出てこずに、家で何か口に入れてくれば良かった。所持金はもう残り少ない、また地震でも起これば少しばかりの配給が入るのに。大きな溜め息を吐いて、先の見えない暗い未来ばかりを想像していた。

 

 

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