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芸人ペルペ

「本当に申し訳ありません! こんな上出来のドレスを作るはずではなかったのです!」


 芸人が謝り倒す。メイメイは可笑しそうに見てパン菓子を食べている。趣味が悪いよ。


「いえ、実は謝るのはこちらの方です。あと敬語は結構です。巻物の二百三十行目を見てください」


「巻物? あれ、こんな聖句知らないのに……」


 芸人は巻物をめくり、目を留めて困惑した。おや。オリジナルなので知らないのは当然だが、それほどマイナーではない構文で、扱いも簡単なものなのだが。


「先ほどあなたが舞台にいたとき、僕が改竄しました」


「巻物を出して行使までのわずかな時間で、外から改竄したのか!? 僕はこの巻物のプロテクトを解除するのに二ヶ月かかったんだよ!?」


 いい流れだ。さすがに魔法の技を理解できるようで、このような人に会えて実力を披露できてよかった。うまくいけば野宿を免れそうだ。


「その種のプロテクトは慣れていれば単純なものですよ。それに二千、三千行となればまだしも、八百行程度の術式はすぐに掌握できます」


「掌握って、これテキストだよ? 普通、術式の掌握って魔法陣に変換しないと参照関係がぜんぜん分からなくなるものでしょ……」


 驚くところはそこなのだろうか。八百行を一瞬で掌握してすごい! とかは予想していたが、生のテキストを読むのは当然だと思う。テキストを暗記してすぐに望む箇所を引き出せるようでなければ、文字列置き換え術式のための下ごしらえができない。すると構文複雑化による神秘付与を手作業でやる羽目になる。それはさすがに人間業ではないし、僕でも五百行が限界だ。


「ものすごい魔法使いなんだね! お名前伺ってもいい? お師匠さんは? 僕はペルペ・ロール。地元の長老から習ったんだ」


「ボルフ・ベイルフです。魔法はクルグ・トランス博士に教わりました」


「ボ、ボルフ・ベイルフ!? それでクルグ学派!? あの闇に堕ちた天才の!?」


 そこそこ名が知れているのは認知していた。しかしどんな伝わり方をしているのだろう。


「え、えっと、本件に関しては組織には内密に、いえ、どこに目があるか知れたものではありませんが、ああ、終わった……」


 芸人はかわいそうなぐらい取り乱している。


「確かに僕が勤めていたのは悪い組織だったようです。しかし今は追い出されており無関係の身です」


「足抜けってできるんだ……」


「ちょっとその【アナスタシス】について世間で言われることを教えていただけますか?」


「え? 所属していたのに? まあ、構わないけど……」


 そしてペルペ氏は話してくれた。私兵を率いて地上げを行う、地税を横取りするなどは噂に聞いていたし、危険な生物実験も、見たことがありできる範囲で阻止してきた。そのほか回復薬などの薬の値段を吊り上げて独占販売する、危険薬物を広める、女衒を取り仕切る、山賊と取引しつつ行商の護衛を斡旋するなど多岐に及ぶ悪事を行なっているそうだった。

 僕が所属していたのは、疑いようのない、悪の組織だった。

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