俺に任せて先に行け
都市の真ん中に、火山が発生していた。
複合的な大魔法が行使されている。元どおりにはなるまい。
これほどの術師がいるのか。
「一体、誰がこんなことを」
「私だ」
後方に人影が現れる。話が早い。
「呼ばれて出てくるとは殊勝な心がけだ」
煽ってはみるが、ここで現れるのは実は理にかなっている。
全員集合して情報を集め万全の状態で挑まれるよりも、勝率が高い。
「なあ親友、こいつは俺に任せて先に行けよ」
ハルクが相手の前に出る。その足取りはすでにリズムを作り出しつつある。
秘伝の舞踊という神秘の言語で、精緻な術式を組み上げてゆく。
「心配でしょうがないんだろ」
実力は未知数だ。死霊術と火山が同じ術師によるものとも思えない。
この相手とハルクは一人で戦うというのだ。
尤もそうそう負けることはないだろう。
「助かる。任せた!」
躊躇は一瞬だけだ。
僕は駆け出す。回り込もうとする敵をハルクが食い止める。
セリナ宅は中央地区だ。山の高い部分にあることになる。
僕は休むことなく山を登る。山という一つの異界の神秘が妨げとなり、探知魔法が行き渡るのが遅い。
中腹で立ちふさがる者があった。
「お前の相手はこの私だ!」「邪魔だ!」
仮面の男を一蹴する。頭部と正中線上に数個の石を投げつける。どれも骨を砕き体を貫通する速さを持つ。頭蓋骨を割って行動不能とするつもりだった。
ところが男は割れた仮面を抑えつつ逃げ出す。
その魔法的な形態に覚えがあったが、今はセリナ宅を目指す。
「戻った!」
「先生!」
メイメイが抱きついてくる。
「無事か!」
セリナが抱きついてくる。
「夕飯何にする!」
ペルペが抱きついてくる。
「オチをつけなくていいんだよ。離れてくれ。とにかく無事でよかった」
「ハルク殿はどうした」
リズが尋ねる。
「こうしている」
走りながら書いた、遠隔地の様子を映し出す術式で図として表す。
「何!?」
ハルクが、倒れ伏していた。




