【アナスタシス】解体
「【アナスタシス】に警吏たちの強制捜査が入った、か」
ここ数日で大きく武力を削いだ。そのことは権力者たちにも伝わるよう、セリナたちが動いてくれていた。
都市の外の荒野で見つかった死体が殺人請負人ヨモルと同定された。組織が匿っているとわかっていながら手を出せていなかった闇の武闘家ドブレの亡骸は僧院から引き渡された。同じく幻影刺客ネーイは生きた状態で確保された。【五振りの剣】の一角であるマラウは、放心状態で出歩いていたところをハルクが誘導して警吏に発見させた。レージャ婆とメラーの死亡は確認済みだ。
今回の強制捜査は【アナスタシス】の頭脳であった書記長ゾーラが自首し、保護されたのがきっかけとなった。なお、その後ゾーラは外傷のない謎の死を遂げている。
密かに包囲網を作って、不意をついての捜査だ。ハクス総統と呼ばれる者、事実上取り仕切っていたヨルダン監査役、無法者のマサーケを捕えたとの発表だ。それ以外の構成員も一覧に上がっている。知っている名前はだいたい入っていた。しかし、引っかかる点がある。
「どうしたんだ? 主要な名前が抜けてでもいたか」
珍しく家にいるハルクが話しかけてくる。
僕が組織に属していたのは、組織に家が壊されたとき昔馴染みのヤーノに誘われたからだ。
そのヤーノの名前がない。捜査記録では包囲網を張って八日の間、そこを通った構成員に全員標識をつけてあるという。立入に始まる捜査で、全員捕まっている。
その中に、ヤーノがいない。
「そいつはボルフを誘って、間接的に破滅の原因を作った。粛清されたかもしれない。別の支部なんかにいるかもしれない。不安ではあるが、脅威ではないだろう。おかしいとは言い切れないぜ」
「あいつは、僕から悪意を隠し通したんだ。油断ならない」
「まあ、組織は壊滅したと言っていい。総統や監査役とやらも即日処刑といったところだろうよ」
すでに行われ、埋葬もされたそうだ。
「気になるな。行くか」
「治安判事のもとへか」
「いや、墓荒らし」
そうして、外れの墓地のさらに外れ、刑死者区画にやってきた。いくつもの文化で神聖視される記号である十字形を模った墓標の前に立つ。
「おい、本当にやるのか。いくら悪いやつらだからと言って、墓荒らしなんて」
僕は術式を展開した。地中を探る魔法だ。ハルクにもわかりやすいよう空中に図として投影する。
「あーあーやったよこいつ。二人しかいないな。こっちがマサーケで、これが総統か監査役? 人相書きとだいぶ違わないか」
ある程度予想していたことだ。
マサーケの他のもう一人は、昔馴染みのヤーノだった。




