秘密基地攻め
「いえ、お嬢様は死んだのだった。その方は顔はそっくりだが、体型は違う。忘れてくれ」
ピンとくることがあった。
メラーは一から人を捏ね上げたわけではない。どこかの村を滅ぼし、大量の「素材」を組み合わせたのだ。
そして、メイメイに使われた「素材」は貴人が好むような見た目のものだった。
貴人が好むような見た目の人とは、どのような人か。
貴人である。
身分の高い者たちは見た目がいいことが多い。見た目がいい貴族などは、見た目がいい相手を見繕って子を作るからだ。
メイメイがどこかの貴種を元にしたかもしれないというのは、考えていたことだった。
関連した情報を圧縮して、一音としてリズに伝えた。
「うっ……いきなり圧縮呪文を投げつけないでくれ……! えっ、これは!?」
リズはしばし放心していたが、やがて我に帰ると、メイメイの手を取って口を近づける。
「危ない危ない危ない!! 毒があるぞ! 今はまずい!」
さっきも伝えたはずだ。リズは動きを止めた。
「そうだった!」
この人、大丈夫だろうか。
「ともかく、私も同行しよう。メラーは殺さねばならない。たとえこの手ででなくとも、貴君の手助けだけでもしたい」
身のこなしからすれば、優秀な偵察能力を持っているようだった。メイメイも同意したので、連れて行く。
しばらく行き、目標点で止まった。一見すれば普通の森の中の一角だ。
「なんだ? ここには何も……いや、違和感があるな。これは、下か?」
炸裂魔法を使い、地面をえぐる。下へと石造りの階段が続いていた。
「メラーが急造したにしては古いな。以前からあったところを利用したのだろう。十中八九罠がある。慎重に進もう」
「確かに。そこは飛び出す槍、そこの床は踏むと爆発する。十聖歩のうちに六つはある」
リズが頷く。
「いや、七つだよ。見落としたのは多分あの床だな」
「あの床は確かに仕掛けがある。しかし踏んでも、五聖歩手前の壁から槍が出るだけだ。多人数ならともかく、三人なら固まって歩けばなんということはない。それで罠には数えなかった」
「見ていてくれ」
その床の真上の天井を炸裂させる。落ちた破片が床につくと、五聖歩手前の壁が開き、槍が飛び出る。
それが反対側の壁に刺さると、天井が開き、球体の岩が落ちる。床に傾斜がついているのか、岩は向こうに転がっていった。
「転がる岩か。しかしそれなら通路を埋めるほど大きなものを用意するものだ。これでは簡単に避けられる」
しばらく転がって、岩が突き当たりにぶつかる音がする。直後、通路の向こうから十本の短い矢が横一列に飛んできた。
「なんと。ここまでは読みきれなかったぞ! なぜ分かったんだ!?」
「リズの言うように、最初のものは多人数相手に効く罠だ。だが、森の中にこの狭さなら少人数で立ち入ることを主に想定していると思った。槍が飛び出る他に仕掛けがないなら、槍が引き金となって何かを起こす。あの天井の上に岩があるのは気づいただろう。でも、どうやったら落ちるかは明らかじゃない。それが結びついた。落とすだけじゃない。この床の傾斜は何かを転がすためのものだ。敵は手前から入ってくるのに、わざわざ奥に転がすのか? だから、まだ続きがある。それが床への荷重で起こるか突き当たりで起こるかは分からなかったけどな」
もっともこれは後付けの理屈で、気づいたのはもっと霊感のようなものが理由だった。
「さすが先生です!」
「やってから気づいたが、罠の他にも仕掛けがある。今の矢は階段の下から四段目に刺さったな。低すぎないか?」
「奥に傾斜がかかっているのだろう。それに、頭を低くすることはできても、この狭い中で浮かぶのは難しいからじゃないのか」
「最初に天井の破片を落としたときの音もおかしい」
「そうか? 石造りならあんなものだろう」
「それがおかしい。ただの石造りじゃない、仕掛け床なのに同じ音が鳴ったんだ。偽装工作だ。床全体に音の迷彩がかかっている。普通の石造りと見せかけるため」
ここでリズが気づいた。
「床の下に、何かある……? 矢が低いという方はどうなんだ?」
「これには目的がもう一つある。下から三段目を踏ませないことだ」
「三段目というと、あの丸見えの爆発床か?」
僕は耳と目を守るように言い、爆発床に魔法で荷重をかけた。爆発が起こり、煙が晴れると、床が破れ、階段がさらに下まで続いていた。
「愚かにも引っかかるような相手はそもそもここを発見できない。看破して避ける相手から、本命の道を隠そうとしていたんだ」
階段を下りていく。たどり着いたのは広間だ。魔法の気配がある。
「こう来たか」
そこには夥しい転移魔法陣があった。




